子どもが本当に望んでいるのは愛されること。静かに響く家族の物語を見て思う

#鉄拳

『家族のはなし』
(C)『家族のはなし』製作委員会
『家族のはなし』
(C)『家族のはなし』製作委員会

…前編「人生で難しいのは成功のチャンスをつかみ取ることではなく〜」より続く

【ついついママ目線】『家族のはなし』後編
つまずく子どもには応援してるよと伝えるだけでいい

パラパラ漫画家としても活躍する芸人・鉄拳の原作をもとに実写映画化した、温かみのある感動ドラマ『家族のはなし』が公開される。

主人公はバンド活動で行き詰まっている青年・拓也。この手の物語では、主人公は売れないバンドマンであったり、血気盛んなアマチュアバンドであったりすることが多いが、本作ではすでにメジャーデビューも果たしたそこそこ名の知れたバンドだ。しかし、だからと言って順風満帆なわけじゃない。拓也は曲作りで壁にぶつかってしまい、前に進めずにいる。

『フォースの覚醒』を振り返る鉄拳のパラパラ漫画が心にしみる!

成功を夢見て無我夢中で突進している時の方がパワフルで、多少すっ転んだり傷を負ってもすぐに起き上がり、前に進んでいくことができるだろう。むしろ一度成功を収めてからまたその次もという方が、勢いは失速するものだし怖いもの知らずなパワーも衰え、前に進んでいくことはなかなかしんどいものだ。

苦しみながら足掻き、傍目から見ても何か助けてあげたくなる拓也なのだが、父親は直接的なことは言わずに見守っている。たとえ子どもは気づかなくとも愛情たっぷりの眼差しで。音楽のことはわからなくても子どもを思う気持ちに遜色はない。そう、親は子どもが想像しているよりも、もっとずっと子どもに目を向けていて、こっそりと隠れてでも応援していたりする。

そして、子どもは子どもで、親に言われたわけでなくても親の希望に沿いたい、沿わなきゃいけないとプレッシャーを感じているもの。反抗的な態度を取っていたとしても親の希望に沿わない自分はいけない子どもだとネガティヴに捉えていたりする。いや、いけない子どもだと思っているからこそ反抗的にもなるのだろう。そこはきっちりと親の方が言葉で伝えてあげた方がいいのかもしれない。自分の人生は自分の好きに生きたらいいんだよ、と。

ただ、もし言葉を伝えられたとしても子どもは親に愛されたいと本能的に思う生き物だろう。子どもがどんな道に進もうと、この父親のように穏やかに、君のことを応援しているよと伝えてあげればいいのかもしれない。つまずいて立ち止まっていたとしても、お父さんとお母さんは君の味方だよ、と。派手なサクセスストーリーよりも静かに心に響く家族の物語だった。(文:入江奈々/ライター)

『家族のはなし』は2018年11月23日より全国中。

入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。

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