世界的写真家が綴る農民たちの営み。ドキュメンタリー『モダン・ライフ』

Raymond Depardon
1924年フランスのヴィルフランシュ=シュール=ソーヌ生まれ。映像作家、写真家・国際ジャーナリストの顔をもつ。60年代には兵役でアルジェリア、ベトナムなどの戦場へ赴く。また同時にフランソワ・トリュフォー監督の撮影現場でも働く。66年に数人の写真家と共にエージェンシー「Gamma」を設立。73年にロバート・キャパ賞を受賞。79年からマグナム・フォト会員。63年から映画製作にも乗り出し、 ドキュメンタリー作品で高い評価を得ている。代表作は、山形ドキュメンタリー映画祭で市長賞を受賞した『アフリカ、痛みはいかがですか?』(96)など。
Raymond Depardon
1924年フランスのヴィルフランシュ=シュール=ソーヌ生まれ。映像作家、写真家・国際ジャーナリストの顔をもつ。60年代には兵役でアルジェリア、ベトナムなどの戦場へ赴く。また同時にフランソワ・トリュフォー監督の撮影現場でも働く。66年に数人の写真家と共にエージェンシー「Gamma」を設立。73年にロバート・キャパ賞を受賞。79年からマグナム・フォト会員。63年から映画製作にも乗り出し、 ドキュメンタリー作品で高い評価を得ている。代表作は、山形ドキュメンタリー映画祭で市長賞を受賞した『アフリカ、痛みはいかがですか?』(96)など。
Raymond Depardon
1924年フランスのヴィルフランシュ=シュール=ソーヌ生まれ。映像作家、写真家・国際ジャーナリストの顔をもつ。60年代には兵役でアルジェリア、ベトナムなどの戦場へ赴く。また同時にフランソワ・トリュフォー監督の撮影現場でも働く。66年に数人の写真家と共にエージェンシー「Gamma」を設立。73年にロバート・キャパ賞を受賞。79年からマグナム・フォト会員。63年から映画製作にも乗り出し、 ドキュメンタリー作品で高い評価を得ている。代表作は、山形ドキュメンタリー映画祭で市長賞を受賞した『アフリカ、痛みはいかがですか?』(96)など。
『モダン・ライフ』
6月26日より渋谷シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開
(C) Raymond Depardon / Magnum Photos

レイモン・ドゥパルドン監督の映画が日本で初めてロードショー公開されると聞いて、胸を躍らせる人もいるのではないか。これまで山形ドキュメンタリー映画祭などで彼の作品は紹介されているが、一般規模で公開になるのは今回が初。すでに15本以上のドキュメンタリーを手掛け、パリのカルティエ現代美術財団で個展を開いたり写真家としてもロバート・キャパ賞を受賞するなど、世界的なキャリアを有するドゥパルドンの映画が、ようやく日本で日の目を見る。

その作品は、彼のライフワークとも言える「農民の横顔」シリーズの3作目『モダン・ライフ』。南フランスのセヴェンヌ地方の農民たちの姿を、10年以上にわたって撮り続けた努力の賜物だ。

[動画]『モダン・ライフ』予告編
『モダン・ライフ』作品紹介

もともと農家に育ちながら、稼業を継ぐのが嫌で実家を離れ写真家になったという彼は、農民たちへの愛情をこう語る。

「年を取って、かつて自分が馴染みのある環境に愛着を感じるようになったのかもしれません。当初は農村における過疎化の問題に焦点を当てるつもりでしたが、彼らを見つめているうちに、自分も農家をやっていたら彼らのようになっていたかもしれないと、他人事のような気がしなくなったのです。人間には、地平線を見る人と見ない人の2種類がいると思いますが、彼らはつねに地平線を眺めている。とても深遠な哲学者のような人たちです」
 
ドゥパルドンの映画術は独特だ。対象を密かに追いかけるのではなく、むしろ彼らの正面にどんとカメラを据え置き、彼らがカメラに語りかける様子を捕らえる。その構図は彼の写真のように完璧だが、農民たちのゆっくりと流れ行く時間を映し出すという点で異なっている。

「同じ対象を写すのでも、写真と映画では結果が異なります。わたしにとって写真は、よりノスタルジックなものですが、映画は現在にあるもの。それに時間を語るものでもあります。農民たちのゆったりと流れる時間は、映画でこそ表現できる。もし映像の審美的な面だけを考えるなら、わたしはスチールカメラを選ぶでしょう。でも映画はもっと作り手の視点を持たせることができる。わたしは30年ほど前に日本のオズ(※小津安二郎)の映画を“発見”したのですが、彼の手法にとても共鳴します。彼はたったひとつのカットで多くのことを説明してしまえる。審美的にとてもシンプルでありながら表現豊かで、荘厳さがあります。あのシンプルさを見て、わたしの道はこれだと思いました。プロットやナレーションや演技的な要素を排してまったくシンプルにすること。結果的にはそちらの方がモダンだと思います。たとえばこの映画に出て来るレイモン・プリヴァは、まるでオズの映画に出て来る人物のようではありませんか」

いまやハンディなビデオカメラやHDカメラが主流のドキュメンタリーの世界において、ドゥパルドン監督は本作を35ミリのシネマスコープで撮影している。その理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「その方がダイナミックだからです。わたしは西部劇が好きですが、自然のなかに居る農民は、まさにウェスタンに出て来る人物のようでしょう。それにセウ゛ェンヌ村の一帯はとても美しい。南仏的ななかに山があり、乾いた土地の中に素朴な美しさがある。そんな風景画のような美しさを出すためにも、ぜひ35ミリのカメラで撮影したいと思ったのです」

寡黙でいて豊かな詩情に満ちた彼の作品は、まさに農民たちの生活同様、凛々しい力強さに貫かれている。
(取材・文=佐藤久理子)

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