子どもたちを本気で怒った──妻夫木聡が『ブタがいた教室』撮影秘話を語った

クラスでブタを飼って、卒業の時にみんなで食べよう──新学期に担任教師から出た提案に、軽い気持ちで応じた6年2組の生徒たち。けれど育てる間に愛情が芽生え、卒業を前に、ブタを食べることに戸惑い、悩み、喧々諤々(けんけんがくがく)の話し合いを繰り返すことに。食べる・食べないでクラスが二分する中で、26人の子どもたちが選んだ結論とは?

命の価値について問いかける秀作『ブタがいた教室』(2008年11月1日よりシネ・リーブル池袋ほかにて全国公開)。25日、東京国際映画祭コンペティション部門に出品されたこの作品の記者会見が渋谷で行われ、主演の妻夫木聡と前田哲監督が映画について語った。

ドキュメンタリーを思わせる作りの本作で、初の教師役に挑戦した妻夫木。

「教師は大変な仕事だと思いました! 子どもは純粋なので、思ったことをそのままぶつけてくるし、一人ひとりと向き合うのは本当に大変です。子どもを育てるのは、甘い考えではできないと実感しました。撮影で苦労したのは、子どもたちとの距離感。彼らにとっては僕は(俳優の)“妻夫木聡”でしかありません。芸能人を見る目で見られてしまうので、それをなくすにはどうすればいいかを考えました。まず、初日までに26人全員の名前を覚え、僕のことを星先生と(役名で)呼んでもらいました。先生として接するようにして、教育論などをノートに書いてみたりもしました。実際やってみて、心でぶつかった分だけ、生徒たちも心で返してくれたので、うまくいったと思います。撮影中、食べ物の大切さを描いている作品を撮っているのに、子どもたちが食べ物で遊んでいたことがあったんです。どんどんそれがエスカレートしていったので、本気で怒ってしまいました。でも、“食べ物で遊んで怒られる”というシーン──本編ではカットされてしまったのですが──の撮影をした後で、主犯格だった子が来て、『先生、さっきは本当にすみませんでした。以後、気をつけます』と言ってくれたのが本当に嬉しかったですね」と満面の笑みを浮かべた。

コンペティション部門は、作品賞など賞レースに関わる重要な部門。香港のメディアから受賞への意欲を聞かれた妻夫木は、「(最優秀男優賞は)100%とれないと思っています(笑)。とにかく、映画祭のコンペで選ばれたことで世界の人々の目にとまったことが嬉しい。ぜひ香港でも宣伝してもらって、(香港でも)配給してもらえると嬉しいです」。前田監督は「とれる・とれないは、食べる・食べないのと同じくらい難しい問題です(笑)」と、まずは映画のテーマにかけて回答。だが受賞への意欲は抑えがたいようで、しばらくしてから、「ぜひ賞はいただきたい。相米慎二監督作品の3冠(85年)、根岸吉太郎監督作品の4冠(05年)を越えたいと思っています。これがラストチャンスだと思っています!」と熱い思いを伝えた後、「特にジョンにそう言っておいてください」と、審査委員長ジョン・ヴォイトへのアピールを茶目っ気たっぷりの表情で語り、記者たちを笑わせた。

妻夫木にとって、本作への出演は非常に勉強になった部分が大きいようで、「“いただきます”という言葉は、命をいただいていること。命をいただくありがたさを勉強させてもらいました」と話していた。“肉食”をやめたりはしなかったようだが、映画制作を通じて「食べることは、こんなにありがたいことなんだと思うようになりました。一つのものを残さず食べる、ありがたみを感じながら食べるようになりました」と妻夫木。前田監督は、「肉だけではなく植物も生き物。生き物や自然を畏怖する気持ちが強まったと思います」と話していた。

(写真上:妻夫木聡/下:前田哲監督〈右〉)

・関連ページ
『ブタがいた教室』(2008年11月1日よりシネ・リーブル池袋ほかにて全国公開)
『ブタがいた教室』予告編動画
東京国際映画祭/叶恭子とマドンナは似ている!? マドンナの初監督映画を叶姉妹が紹介!
東京国際映画祭/高橋克典が人気ドラマの映画版で舞台挨拶
東京国際映画祭/『ホームレス中学生』で小池徹平が舞台挨拶!
東京国際映画祭/林遣都と北乃きいが、ファンキーモンキーベイビーズの演奏に感激!
東京国際映画祭/『櫻の園 ─さくらのその─』キャストが舞台挨拶。高校生制服が着たかった──と無念の菊川怜
東京国際映画祭/ジュリアン・ムーアが、共演者の伊勢谷友介と木村佳乃を絶賛!
東京国際映画祭/尾上菊之助、稲森いずみ、貫地谷しほりらが東京国際映画祭で舞台挨拶!
東京国際映画祭/東京国際映画祭が開幕! 審査委員長はアンジェリーナ・ジョリーのパパ!!