ひたすら愛を求め…およそ事実とは思えないほど数奇な人生を歩んだ歌姫の赤裸々な真実

#ダリダ あまい囁き#映画を聴く

『ダリダ あまい囁き』
(C)2017 BETHSABEE MUCHO-PATHE PRODUCTION-TF1 FILMS PRODUCTION-JOUROR CINEMA 
『ダリダ あまい囁き』
(C)2017 BETHSABEE MUCHO-PATHE PRODUCTION-TF1 FILMS PRODUCTION-JOUROR CINEMA 

【映画を聴く】『ダリダ あまい囁き』前編
波乱の末に自殺した仏の国民的歌姫

フランスの国民的歌姫、ダリダの生涯を描いた『ダリダ あまい囁き』が公開される。およそ事実とは思えないほど数奇な人生を歩んだ人だから、この映画もまたショッキングなエピソードの連続で、何とも言えない後味を残すものになっている。副題の「あまい囁き」は、1973年にリリースされて日本でも大ヒットしたアラン・ドロンとのデュエット曲のタイトルから取られたものだ。

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キャリアを通して2,000曲をレコーディングし、うち70枚がゴールド・レコードに認定。世界で通算1億7,000万枚ものレコードを売っている人なので、彼女が歴史に残る大スターであることは否定しようがない。しかし、いまの日本で彼女がフレンチ・ポップ的な文脈で語られることはほとんどないし、「あまい囁き」にしても中村晃子&細川俊之らによるカバー曲の方がよく知られていたりするので、「あの伝説の……」という紹介をしてもピンとこない人が多いのは仕方ないだろう。

本作は、華やかなスポットを浴びる歌手=ダリダではなく、ひたすら愛を求めて彷徨うひとりの女性=ヨランダ・クリスティーナ・ジリオッティの姿を赤裸々に描くことに主軸を置いている。一緒に暮らした3人の男性すべてが次々と自殺し、自身も1987年に「人生に耐えられない。許して」という遺書を残して57歳で自殺。その波乱に満ちた生涯を巻き戻す形で物語は進んでゆく。

映画化にあたっては、ダリダの実弟で彼女のマネージャー/プロデューサーだったブルーノ・ジリオッティが深く関わっている。死後30年が経過した姉のダリダを人々の“記憶”に残すだけでなく、“未来”に連れて行くことを自分の使命としてリサ・アズエロス監督に協力。ダリダを演じるスヴェヴァ・アルヴィティと自身を演じるリッカルド・スカマルチョのキャスティング、そして創作シーンを含む脚本には、いずれも彼の意向が反映されているという。ダリダのスター性、神話性を守るとともに更新にも余念がないという意味で、彼はいまでもダリダのプロデューサーであり続けているわけだ(後編へ続く…)。

後編「生涯“消費”され続けた世界的歌姫、その切ない物語に重なる光景とは?」

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