芸術かワイセツか! 現代に復活したロマンポルノ5作品の絶妙なバランスとは?

#映画レビュー

『風に濡れた女』
2016年12月17日より全国順次公開
(C)2016 日活
『風に濡れた女』
2016年12月17日より全国順次公開
(C)2016 日活

【映画を聴く】ロマンポルノを聴き比べ!/前編
現代に復活したリブート5作品を音楽面からチェック

2016年に45周年を迎えた「日活ロマンポルノ」。それを記念した「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」がスタートしている。これは「ロマンポルノ」という“規定演技”の中で現代の監督が作品づくりにチャレンジしたもので、メガホンをとったのは行定勲、塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫の5人の人気監督。以下のようなスケジュールで、順次公開が始まっている。

撮影中は裸で待機!?/『風に濡れた女』間宮夕貴インタビュー

(1)『ジムノペディに乱れる』行定勲監督 11月26日〜
(2)『風に濡れた女』塩田明彦監督 12月17日〜
(3)『牝猫たち』白石和彌監督 2017年1月14日〜
(4)『アンチポルノ』園子温監督 2017年1月28日〜
(5)『ホワイトリリー』中田秀夫監督  2017年2月11日〜

「日活ロマンポルノ」は1971年にスタートした成人映画のレーベルで、制作が終了した1988年までの17年間に約1,100本物作品が公開されている。2012年に創立100周年を迎えた日活がロマンポルノ特集上映を行なったことで再評価の機運が高まり、45周年となる2016年にリブート・プロジェクトが発動した形だ。

今回のリブートにあたっては“新・ロマンポルノ・マニフェスト”として、総尺が80分前後であること、10分に1回は濡れ場があること、製作費は全作一律であること、撮影期間は1週間であること、完全オリジナル作品であること、ロマンポルノ初監督であることの6つの条件が設定されている。逆に言えば、これらの条件さえクリアしていればどんな作品でもいいということであり、結果として各監督の作家性が浮き彫りとなったバラエティ豊かな作品群に仕上がっている。そのいっぽうで、続けて見ると連作のオムニバス映画を見ているような統一性もあり、改めてロマンポルノというレーベルカラーの強さ、明確さに気づかされる。

あくまでも劇場公開を前提としたフィクション映画であり、直接的な性描写をメインにした海外ポルノや日本のアダルトビデオとは一線を画する「日活ロマンポルノ」。当時から“芸術か、ワイセツか”という論争が絶えなかったというが、今回の5作品もその論争を再び呼び起こすような、芸術ともワイセツの間で絶妙にバランスを保ったものばかりだ。

後編「官能を耳からもサポート!」に続く