後編/我が子にもこんなパートナーが見つかりますように、と願わずにいられない!

『あなた、その川を渡らないで』
『あなた、その川を渡らないで』

(前編「リア充、爆発しろ!の“バカップル”ぶりに目尻下がる」より続く)

【ついついママ目線】『あなた、その川を渡らないで』後編

「世界で一番あなたが好きよ」のつぶやきに涙が…

98歳のおじいさんと89歳のおばあさんの老父婦の日常を描いた韓国のドキュメンタリー、『あなた、その川を渡らないで』。バカップルかというほど仲がいい2人の姿は見ているだけであったか〜いものがこみ上げてくる。

楽しいときだけじゃなく、おばあさんの膝が痛むとき、おじいさんの咳がひどくなったとき、相手をいたわって慈しむさまにも温かい夫婦愛が感じられる。手を繋いで歩いてる様子も愛らしく、2人がお揃いの民族衣装を日常的に着ている姿は反則技だろ!と言いたくなるぐらいかわいい。お人形として飾っていたいと思ってしまう。

ありきたりの感想だが、こんな夫婦になれればいいなぁと素直に思える。もちろん我が子にもこんな老後を送って欲しいと願う。温かい夫婦愛で結ばれるパートナーをどうやって見つけられるんだろう。

この老夫婦もこれまでの人生、決して楽しいことばかりじゃなかったはずだ。12人の子どもを授かったというこの夫婦はそのうち6人を幼くして亡くしたのだとか。もっと小さなことでも辛いことがなかったわけがない。この年になったからこそ悲喜こもごもを乗り越え、この境地に立てたのかもしれない。

でも、あの初々しさには驚かされる。あの年になっても、どうして付き合いたてのカップルのように仲睦まじくいられるのだろう。2人はおばあさんが14歳のときに結婚したという。交際はおろか恋愛の経験もおそらくなかっただろう。初めての恋愛だったからこそ、その相手とときめきを持続できるのかもしれない。

恋愛結婚は結婚した時点がピークでその後は減点してしまうが、見合い結婚は結婚した時点は0でその後は加点されていくとはよく言うし。もちろん、運良く相性が良かったからこれほど仲がいいのだろう。もっと低次元で相性が合わなかった夫婦もいるはずだ……いや、むしろそちらの方が多く、このような夫婦になれるほうが稀だから、観客はこの夫婦の姿に感動するんだと言える。奇跡といってもいいぐらいに、こんなに愛情がいっぱい持てるパートナー選びは難しいかもしれない。

「世界で一番あなたが好きよ」、おばあさんのつぶやきに感動と羨望の涙がこみ上げてくる。どうか、自分も我が子も晩年にそうつぶやくことができますように。(文:入江奈々/ライター)

『あなた、その川を渡らないで』は公開中

入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。

【関連記事】
なぜ子どもに弱さを見せられないのか?
理不尽に当たり散らす我が子への正しい対応とは?
衝撃的な母子の姿に普遍的な命題を見た
親に捨てられた自身の体験をもとに珠玉作監督

INTERVIEW