寺島しのぶが体当たり熱演でベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞作。戦争の愚かさを訴える渾身作
2010年8月14日より公開
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』から2年ぶりとなる若松孝二監督が、戦争の愚かさを訴えた渾身作。太平洋戦争に出征し、四肢を失って故郷へ戻った帰還兵とその妻に待ち受けていた壮絶な日々を通して、戦争とは何なのか、「正義のための戦争が、どこにあるのか」という問いを投げかけてくる。四肢を失い、顔に大やけどを負って戦場から戻る久蔵に大西信満、村中から「軍神」と讚えられる久蔵を看病する妻・シゲ子に寺島しのぶが扮する。体の自由もなく、意志の疎通さえままならない夫のあらゆる欲望に応えるだけの日々を送るシゲ子を体当たりで熱演し、寺島しのぶは第60回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。
1943年、かつて勇ましく出征していった久蔵(大西信満)が戦地で負傷し、四肢を失い、顔面が焼けただれた無残な姿で帰還する。首に勲章を下げられ、「軍神」と村中から祭り上げられる久蔵の耳は何も訊かず、口は言葉を失い、ただひたすら、シゲ子が口に運んでやる粥を旺盛な食欲で食べる毎日。シゲ子は夫の排せつの世話をし、盛んな性欲をも満たしてやるのだった。出征前、子どもを産まない自分を罵った夫の記憶を胸に抱きながらも、シゲ子は軍神の妻として、久蔵に尽し続けていたが、やがて敗戦の日が訪れ……。