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『火口のふたり』柄本佑×瀧内公美インタビュー

身体の言い分に身を委ねる男女を熱演

『火口のふたり』柄本佑×瀧内公美インタビュー
勝手に火つけといてあとは1人で消せって、そんなの無理だよ(柄本佑)

『火口のふたり』
2019年8月23日より全国公開
(C)2019「火口のふたり」製作委員会
10日後に結婚式を控えた直子は、帰省した昔の恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす。「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という彼女の言葉から始まった、婚約者が戻るまでの5日間を描く『火口のふたり』。

直木賞作家・白石一文の原作を、『赫い髪の女』『共喰い』などの脚本を手がけた荒井晴彦が『身も心も』『この国の空』に続いて脚本・監督を務めた本作で、「身体の言い分に身を委ねる」主人公たちを演じた柄本佑と瀧内公美に話を聞いた。


──ポスタービジュアルの印象と違って、青春映画っぽく軽やかな感じを受けました。おふたりは、賢治と直子の関係性を率直にどう感じられましたか?

柄本:台詞の中でもありますけど、やっちゃいけないことなんじゃないか、と思っていた。けど、こうなっちゃったもんはしょうがないだろって思いますよね(笑)。だからもう、しょうがいないよ、社会とかそういうのは関係ねえよ、だって個人の問題なんだから、と思います。単純に。肌が合うということを、明らかに実感してますから。それは誰も否定できない。他人にはわからないことだと思いますね。

──瀧内さんはどうですか。

柄本佑(左)と瀧内公美(右)
瀧内:私も佑さんのいうとおり、そうなっちゃったから、しょうがないって思います。2人とも社会に馴染めない人間っぽい感じがする。直子も馴染んでるふりをしてるだけであって、本質的な部分では馴染めない人なんじゃないかな、と思います。似たような2人、というか、私(直子)が賢ちゃんに似せてた可能性もあるんですけど。賢ちゃんを自分の居場所にしてるというか、賢ちゃんへの想いに固執している。だから、2人の関係性は、直子が巻き起こしたものでもあるんじゃないかなと思ってます。

柄本:そうだよ。だって勝手に火つけといて、あとは1人で消せっていわれたら、そんなの無理だよ。

──柄本さんは、荒井晴彦さんの脚本作品に出るのが夢だったそうですね。

柄本:はい、憧れでした。

──監督でもある荒井さんと実際にお仕事してみて、いかがでしたか。

瀧内公美(左)と柄本佑(右)
柄本:僕のことを5歳からご存じなんです。で、ずっと荒井さんの本が好きで、荒井さんの映画も好きで見たり読んでたりするんですけど、いざ荒井さんの前で芝居をするとなると、すごく緊張しましたね。知られてるからこその緊張と、知られてるからこその安心とがないまぜになる、ちょっと不思議な気持ちでしたね。待ち時間はすごく安心してたんですけど、撮影になると、見られてるって思ったとたん、やっぱりすごい緊張しました。だけど、荒井さんの本は面白いですし、僕はすごく好きなんです。荒井さんの本で、しかも荒井さんの監督でこんな話をいただけたのはものすごくありがたい、光栄ですね。
 荒井さんの本ってほんとにチャーミングだといつも思っていて、この本を読んだときもそう思っていたんですけど。いざしゃべってみたとき「あ、そうか大人が出すチャーミングさなんだな」と思って。ガチのチャーミングだと、全然台詞についていけないと思って。その難しさが……。すごい大人な台詞でした。固くて。固い台詞でしたね、語尾とか。それは監督の「これをしゃべってくれ」という意志の固さもありますけど。語尾の固さ。

──そこをお聞きしたいです。

柄本:語尾が難しかったです。だけど、そこで「すいません、ちょっとここを言い換えていいですか?」というのは、絶対にないなと思ってました。こうやって書いてあるんだったら、それを言ってやると思っていましたね。撮影自体は大体朝8時ぐらいに始まって16、17時ぐらいにはもう終わるみたいな感じだったんです。撮る分量は、そんな時間で終わるようなはずじゃないんですけど、そのぐらいの時間帯でなぜか終わって。別に急いだわけでもないのに、濃縮型なんですかね。でも、終わると疲れました。しゃべり疲れというか(笑)。

──長回しのシーンもありますよね。

柄本佑
柄本:それもありますね。長回しは、やり手にとっては助かるっていう言い方が合ってるか分かんないけど……(瀧内に)長回しっていいよね。

瀧内:私は好きですね。ずっと2人でしゃべってますしね。

柄本:しゃべり通しだからね。

瀧内:流れがしっかりある本ですしね。

柄本:長回しじゃなくてやってたら、それこそ撮り切れてない可能性ありますよね。10日間、71シーンなんで。場所によっては2〜3ページあるみたいな。

瀧内:そうですね。

柄本:一個一個が一話ずつみたいな感じだな。内容的には。ドラマでいうところの一話分をワンシーンでやってるぐらい濃密にしゃべりたおしてるんで。

──ここを見てもらいたい、というのは?

柄本:2人しか出てなくて、2人でこの作品の見どころを語る(笑)。なかなか難しい。

瀧内公美
瀧本:音楽が素敵ですよね。下田逸郎さんの音楽。私の母が予告を見て「なんか懐かしいにおいがするね」と言って。あの世代にすごく響くんじゃないかな。それから秋田の盆踊り。

柄本:盆踊りはすごく見どころだと思います。西馬音内盆踊り。ここは荒井監督がこだわったシーンです。数年前に撮った実景の映像も使われていて、このシーンはなんかしっとりとしてるし、迫力もあるし、すごい素敵なシーンですね。かっこいい。

──2人が通りを横切るシーンがすごく印象的でした。どうやって撮ったんですか?

柄本:あれ一発だよね。

瀧本:そうですね。

柄本:撮影初日だったんです。2人が手をつないで横切るのを、監督もやりたかったらしくて。俯瞰で。近所のお店屋さんの2階を借りて撮ったんじゃないかな。一応自分たちの周りの人たちはエキストラさんで固めてるんですけど、他はリアル観客だったもんね。

瀧本:お子さんとかもいらっしゃいましたよね。

柄本:リアルにお祭りに来てる人たちがいたりするんで。この直線でまっすぐ抜けられるか? 何回かやったりするかなと思ってたんですけど、一発できれいにすーっと行けてね。

瀧本:すーっとね。

柄本:あれはとってもいい感じでしたね。

──劇中には15年前に撮った賢治と直子の写真が出てきます。

柄本:撮影が始まる前に、2日間かけて先に撮りました。

瀧内:写真だけで一作品終わったと感じるくらいでした。

柄本:そうね。ほんと、そうだった。

──瀧内さんが以前のインタビューで、「脱ぐのは嫌です」と発言したのを読んだことがあります。女性としてその気持ちはわかるし、だからこそ本作の演技にすごく心を揺さぶられました。やっぱりこの作品をやりたい、と思った理由を聞かせてください。

瀧内:2人芝居だということと、お相手が柄本佑さんだということ、荒井さんの脚本を口にしたかったということですね。これだけずっと台詞をしゃべり続けるという役をやったことがなくて。30歳になる前に会話劇に挑戦したいと思っていました。

──自分の望んだ挑戦を体験して、今どう思われますか?

瀧内:あ、無事終わったなって(笑)。映画の作り方としてはいつもと変わらないので。むしろ撮影前の方が達成感ありました、正直。「これだけたくさん全部覚えきれた!」って(笑)。準備しなきゃいけないことがたくさんあったんですけど。台詞や事細かな動作や仕草を覚えるのは、すごく大事にしていたことでした。完璧に覚えた上で、現場に入ると自由に動けますから。そして2人だけに集中するといいますか。基本的なことはちゃんとできたんじゃないかなと思っています。

(2019/08/22)


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柄本佑
えもと・たすく

1986年生まれ、東京都出身。黒木和雄監督の『美しい夏キリシマ』(03年)に主演。主な映画出演は『十七歳の風景 少年は何を見たのか』(05年)、『空気人形』(09年)、『まほろ駅前多田便利軒』(11年)、『フィギュアなあなた』(13年)、『今日子と修一の場合』(13年)、『追憶』(17年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18年)、『きみの鳥はうたえる』(18)、『ポルトの恋人たち 時の記憶』(18年)、『居眠り磐音』(19年)、『アルキメデスの大戦』(19年)など。昨年度のキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞や毎日映画コンクール男優主演賞などを受賞。

瀧内公美
たきうち・くみ

1989年生まれ、富山県出身。2012年から本格的に女優として活動開始し、2014年に『グレイトフルデッド』に主演。2017年の主演作『彼女の人生は間違いじゃない』で第27回日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞、全国映連賞女優賞を受賞。主な映画出演は『さよなら渓谷』(13年)、『日本で一番悪い奴ら』(15年)、『闇金ウシジマくん Part3』(16年)、『ここは退屈迎えに来て』(18年)、オムニバス映画『21世紀の女の子』の『Mirror』(19年)など。現在、テレビドラマ『凪のお暇』に出演中。10月3日〜20日まで新国立劇場「どん底」に出演予定。

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