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『ダンスウィズミー』矢口史靖監督インタビュー

ようやく愛の告白が! 人気監督が長年の思いを告白

『ダンスウィズミー』矢口史靖監督インタビュー
ミュージカルの不思議! なぜ、みんな捕まらない!?

『ダンスウィズミー』
2019年8月16日より全国公開
(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会
『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』といったヒット作を数々と生み出し、旬の俳優たちを世に送り出すことでも定評のある矢口史靖監督。この夏はオリジナル作品で新たなジャンルへと挑戦した。その作品とは、三吉彩花をヒロインに迎えたコメディ・ミュージカル『ダンスウィズミー』。

「音楽を聞くと歌って踊り出してしまう」という催眠術をかけられた主人公が繰り広げる予想外の展開に、思わず誰もが笑ってしまう話題作だ。邦画では珍しいミュージカル作品の誕生となったが、斬新なアプローチ方法の裏側や長年抱いていた思いについて語ってもらった。


──まずは、作品が完成したいまの気持ちをお聞かせください。

監督:実は、以前『スウィングガールズ』のなかでミュージカルシーンを書いたことがありましたが、そのときは「片手間にやらないほうがいい」と止められてしまいました。それから16年。いつかミュージカルを撮りたいと思い続けてきました。そのなかで、「もし自分が日本でミュージカルを作るんだったらこんなことをしてみたい」と考えていたことが、今回それがほぼ実現したので、やり切った感じはあります。あとはそれがみなさんに伝わるかどうかですね。

──日本でミュージカル映画というのはリスクもあったとは思いますが、「ミュージカルを撮りたい」と言ったときの周りの反応はいかがでしたか?

矢口史靖監督
監督:今回は意外と止められませんでした。おそらくそれは、『ラ・ラ・ランド』あたりからミュージカル映画も大ヒットする可能性がある、と風向きが変わったからだと思います。なので、プロダクション側に不安はなかったかもしれないですが、僕だけはドキドキしていました(笑)。

──そのドキドキが自信に変わった瞬間はいつですか?

監督:それは完成してからです。ミュージカル映画についてノウハウを聞ける人がいなかったので、作るときは手探りでした。出来上がったときも自分たちがちゃんとおもしろがれるかどうかでしか、判断できませんでした。それもあって、本当の結果は公開日以降に出ると思っています。

──ミュージカル映画に対して苦手意識のある人からは、「急に歌って踊り出すことについていけない」という声をよく聞きます。そんななか、本作はその疑問を逆手に取った新しい発想だと思いますが、どのようにして思いつきましたか?

矢口史靖監督
監督:今回の設定がいつどうやって生まれたかは、自分でも覚えていないんですが、僕自身もミュージカル映画に対しては、そういった疑問をつねに抱いていました。小さい頃からミュージカル映画をずっと見てきましたが、そんな風に引っかかる瞬間もあるので、好きになったり、嫌いになったりを繰り返していたんです。

──とはいえ、通常のミュージカル映画ではそういう観客の疑問も置き去りにしたまま進んでいきますよね。

監督:確かに、いままではずっとそうでした。なので、「そこに引っかかっちゃう人は見ないで結構」で通してきましたし、好きで見続けてくれる人にとっては暗黙の了解でそのまま突っ走ってきちゃったんです。もちろん、そのヘンテコさがミュージカルの面白さだとは思いますが、日常生活で本当に歌い出したらおかしいですし、それはもう不審者ですよね。場合によってはお巡りさんに捕まりますから(笑)。でも、ミュージカルではそこを無視してきた歴史があったので、僕はいっそのこと鉄則を破ってみようと思うようになりました。

──そこで、作品自ら「変でしょ!?」と言ってしまう形にしたんですね。

『ダンスウィズミー』
(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会
監督:「踊っている人に突っ込みを入れたら、それはミュージカルじゃない」と言われるかもしれないですが、それこそ僕がやってみたかったこと。明日から(注:取材時)ニューヨークに行って上映するんですが、会場がブロードウェイの本場の近くなので、怒られないようには気を付けたいと思っています(笑)。
 でも、本心を言うと、僕はミュージカルが大好きなんです。文句を言いながらいつまでも付きまとう変なストーカーが愛の告白をしたのに、つい過激な手段を取ってしまった、そんな感じですね(笑)。だからこそ、この歪んだ愛をニューヨークでちゃんと受け止めてもらえるかはとても楽しみです。

──では、監督がミュージカルをそこまで好きな理由は何ですか?

監督:僕は、人が生活しているエリアや街中で急に歌い出すシーンが一番好きです。「本当はしてはいけないところでする」というのがいいんですよね。なので、この作品でも、会社のオフィスとか道路とか、絶対にしてはいけないところでやらかすようなシーンは多く入れました。それにしても、ミュージカルの人たちはどうしていままで誰も捕まらなかったのか不思議ですが、この映画ではちゃんと捕まります!

──(笑)。ちなみに、これまでに影響を受けたミュージカル映画はありますか?

監督:特にこのミュージカル映画が大好きというのはないですが、見え方の転機になったのは、『ウエスト・サイド物語』。それまでのミュージカルというのは、だいたいスタジオの中のきらびやかなセットを背景に、きれいな衣装を着た美男美女が踊ったり歌ったりしていたものでした。
 にもかかわらず、この作品では、汚い路地裏でジーンズとTシャツを着た労働者たちが踊っているんですよね。それがリアルな景色のなかにいる“匂い立つようなミュージカル”としてすごく印象に残りました。

(2019/08/12)


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矢口史靖
やぐち・しのぶ

1967年5月30日生まれ、神奈川県出身。東京造形大学に入学後、自主映画を撮り始め、1993年に『裸足のピクニック』で劇場監督デビューをはたす。その後、『ウォーターボーイズ』(01年)が大ヒットを記録し、第25回日本アカデミー賞では優秀脚本賞、優秀監督賞にノミネート。さらに、2004年には『スウィングガールズ』で第28回日本アカデミー賞の最優秀脚本賞・最優秀音楽賞・最優秀録音賞・最優秀編集賞・話題賞等の5部門を受賞する。そのほか、主な監督作は『ハッピーフライト』(08年)や『サバイバルファミリー』(17年)など。本作は長編10作目となる。

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