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『ゴールデン・リバー』ジャック・オーディアール監督インタビュー

超スリリングな西部劇を監督したフランスの名匠、そこに潜む意図とは?

『ゴールデン・リバー』ジャック・オーディアール監督インタビュー
西部の衰退期を描いた作品に魅力を感じていた

『ゴールデンリバー』
2019年7月5日より全国公開
(C)2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.
『ディーパンの闘い』(15年)でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した仏人監督、ジャック・オーディアールが、ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホールらハリウッドのくせ者演技派と手を組み作り上げた『ゴールデン・リバー』が7月5日より公開される。

舞台となるのは1851年、ゴールドラッシュに沸くアメリカ。殺し屋兄弟と偵察係、そして怪しげな科学者が、ひょんな偶然から手を組んだことから巻き起こるスリリングな人間ドラマの行方とは?

「ずっとアメリカの俳優と仕事をしてみたかった」と語るオーディアール監督に、この“西部劇”について語ってもらった。


──本作を手がけたのは、“純粋な西部劇”を作ろうという思いからですか?

『ゴールデンリバー』
(C)2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.
監督:そういうわけではなかった。今まで西部劇というジャンルを身近に感じたことはないんだ。だが“衰退期”に作られた西部劇には魅力を感じていた。ポストモダンと呼べそうな作品にね。アーサー・ペン監督の『小さな巨人』(79年)や『ミズーリ・ブレイク』(76年)などだ。
 古典的な西部劇に関しても、同じことが言える。西部の衰退期を描いた作品に魅力を感じていた、西部劇というジャンル自体を揶揄しているような作品にね。『リオ・ブラボー』(59年)や『リバティ・バランスを射った男』(62年)や『シャイアン』(64年)などだ。西部劇は単純明快なプロットで、サスペンスがない。だが、壮大だ。作品を作る上で、私はもっと複雑なストーリーに惹かれてきたと思う。

──複雑なストーリーとは、もっと個人的で奥の深いストーリーということですか? 本作は、イギリスの権威ある文学賞、ブッカー賞の最終候補に残ったパトリック・デウィットの「シスターズ・ブラザーズ」が原作ですね。

監督:この小説には兄弟愛という強いテーマがあって、そこに惹かれたんだと思う。おそらくはね。兄弟愛という要素は、西部劇によく使われるモチーフで、祖先の時代の暴力の遺産や、その遺産を処理していくプロセスを描くのに、うまく結びつくんだ。『リバティ・バランスを射った男』は民主主義への到達を描いているが、この作品も、暴力の遺産を描いている。散々繰り返されてきた暴力がさらに繰り返されるのをどうやって止めるんだっていうことをね。
 私が本作に大きな魅力を感じたのは、この小説では暴力の遺産という神話が、兄弟の言葉のやりとりという形で描かれているところだ。時代設定は、フロイト派精神分析が広まる以前だ。主役のシスターズ兄弟は非常によくしゃべる。2人で延々としゃべり、しまいにはこれまで話したことがないようなことまで話す。こういうことはたいてい、居間やソファの上で起こるものだが、この物語では馬に乗っている間に起こるんだ。

──多くの西部劇では道徳心が中心的なテーマで、少なくともキャラクターの1人の物の考え方を通して描かれています。本作では、殺し屋兄弟の兄の心の中に、道徳心の変化がはっきりと見てとれます。

『ゴールデンリバー』
(C)2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.
監督:その通りだ。兄のイーライ(ジョン・C・ライリー)の物の見方が変化していくんだ。この映画の目的は、(黄金を見分ける化学式をみつけた化学者)ウォーム(リズ・アーメッド)いうキャラクターを通して表現される。ウォームが次々に人々をそそのかしていく。脚色の段階で、最も手を加えた部分だ。実在の人々がインスピレーションになっている。19世紀にヨーロッパからアメリカに移住し、新しい社会を確立しようとしたサン=シモン主義者、社会主義者の前身と言える人々だ。

──ということは、本作は西部劇という枠にとどまらない作品になっているのですね。

監督:もちろんベースは西部劇だ。だが映画を作っているときにも、自分の現実の生活の中に生きていて、目に入って来るものや、自分が読む本や、自分が交わす会話や、日常でひらめいたことが頭にある。
 じゃあ、現代において、西部劇とは一体何だろうという疑問が生じてくる。西部劇は2つのグループに分かれると思う。1つは古典的な西部劇で、『アパルーサの決闘』(08年)や『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』(03年)のように、西部劇の典型や風景などを大切に受け継いだ作品だ。もう1つはクエンティン・タランティーノが取り組んだタイプの西部劇で、現代的で超暴力的で風刺の効いた作品だ。本作はそれらのグループではなく、3つめのグループを形成するような作品になっていると思う。“トーンダウンした西部劇”という感じなんだ。

──あなたの作品は、自己の再発見と、自分にも他人に対しても新しい人間になることの必要性を探求しています。

監督:私個人にとってもそう言えるんだよ。新しい映画を撮るときは、これまでとは違った方法で製作を進め、これまでとは違ったやり方をさせるような状況に自分自身を置く方法を見つけることが極めて重要なんだ。だが毎回そういう環境になるとは限らない。『ディーパンの闘い』のときは、タミール語を話すアマチュアの俳優を国外から集めて撮った。そして本作では、難しさは倍になったとも言える。イギリスとアメリカの俳優を集めて、言語が英語の映画をスペインとルーマニアで撮影したわけだからね。

(2019/07/05)


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ジャック・オーディアール
Jacques Audiard

1952年4月30日生まれ、フランスのパリ出身。『プロフェッショナル』(未/81年)で脚本家としてのキャリアをスタート。監督デビュー作『天使が隣で眠る夜』(94年)でセザール賞新人監督賞を受賞。『つつましき詐欺師』(未/96)はカンヌ国際映画祭脚本賞受賞、ヴァンサン・カッセル主演『リード・マイ・リップス 』(01年)はセザール賞脚本賞含む3冠に輝き、『真夜中のピアニスト』(05年)はセザール賞作品賞、監督賞含む8冠に、『預言者』(09年)では同賞で9冠となった。『預言者』はカンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネート。マリオン・コティアール主演『君と歩く世界』(12年)ではゴールデン・グローブ賞外国語映画賞と主演女優賞にノミネートされ、『ディーパンの闘い』(15年)ではカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた。

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