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『凪待ち』白石和彌監督×香取慎吾インタビュー

堕ちゆく男の喪失と再生。香取慎吾の新境地引き出した白石和彌監督、2人に聞く

『凪待ち』白石和彌監督×香取慎吾インタビュー
やっぱり僕の中にも逃げる部分とか苦悩だとか、つらい部分がある/香取

『凪待ち』
2019年6月28日より全国公開
(C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS
人生につまずき、堕ちていった男の喪失と再生を描く『凪待ち』。ギャンブルに依存し、周囲も自分も傷つけ、現実から逃げようとする男を演じるのは、笑顔と元気がトレードマークのような香取慎吾だ。お茶の間が慣れ親しんだアイドルの今まで見せたことのない表情を引き出したのは、『麻雀放浪記2020』など話題作、問題作を次々発表している白石和彌監督。会心の作を生み出した2つの才能に話を聞いた。


──お2人は今回の作品以前に面識は?

香取:ないです。僕は監督のことを知らないまま、『日本で一番悪い奴ら』は見ていました。綾野剛さんが番組にゲストで来てくれた時に見たんです。でも当時は監督の作品という認識はなく。白石監督とご一緒できると聞いて『凶悪』を見て、ヤバい監督だなと(笑)。「今日会える」という日に映画館で『孤狼の血』を見て、もうどんな怖い監督かと思ったら、会った瞬間に「いつの日か、香取さんとやりたかった」と、まず最初に言ってくれたので、気持ちもほぐれました。僕が見させていただいた作品は、自分にはない部分の映画だったんです。これを作った方が、僕と仕事をしたいと言ってくれている。この始まり方って、何かいい化学反応が起きるんじゃないか、とその瞬間に思えました。

──白石監督は、香取さんが今まで組んだ方と比べると、圧倒的に年が近いですが、そういう意味でいつもと違うものを感じたことは?

香取慎吾
香取:いや、ないですね、それは。(白石監督に)いくつなんですか、監督は?

白石:74年生まれです。

香取:稲垣と同じ年かな。

白石:草さんと一緒ですね。

香取:ええ!? ……僕はあんまり年齢を気にしないのかな。三谷(幸喜)さんとか阪本(順治)監督と同じように「監督」としか思っていなかったから。年齢が近いから、というところは今まで考えたことなかったです。

──監督はいかがでしたか?

白石:もちろんスーパーアイドルという認識がまずあって。世代で言うとやっぱり、ずっと僕たちは香取さんたちを通していろんなことを見させてもらったり、経験させてもらったという感じなので。ただ、アーティストとしての側面も香取さんの場合はあったので、エンターティナーと同時に作り手にちょっと近い方だろうなという印象は、ずっとありました。ただ、実際仕事してみて衝撃的でした。カメラと被写体である自分の関係性とかいろんなことが、今まで仕事をしたどの方よりもわかってるので、僕自身もある意味ラクでした。いろいろインスパイアを与えてくださる方です。トップアイドルであると同時に、日本のトップの俳優であったということです。

──俳優が演じる時、役とどこか通じる要素を持っているからオファーされることが多いと聞きます。香取さんは、今回演じた「郁男」というキャラクターと共通点はどこかあると思いますか。

白石和彌監督
香取:あまり今までは見せることができなかったけど、やっぱり僕の中にも「逃げる」部分とか「苦悩」だとか「つらい」部分があります。生きていると誰にでもあると思うんですけど。そこが人一倍多い役で、そこでつながっているなという感じはありました。

──脚本家の加藤正人さんとのやりとりで、香取さんをどこかイメージしながら脚本を進めていったんでしょうか?

白石:イメージしている部分と、していない部分はあります。そういう意味で言うと、今まで見てきた「陰と陽」でいうところの「陽」じゃない部分の香取さんをメインにしていきたいという思いがありました。ただ、ギャンブルの話は、脚本の加藤さんがどうしても入れたいという点で。それは全然、当て書きなわけがないんで(笑)。ただ、この「郁男」という、堕ちていく男を香取さんがやったら絶対面白くなると、化学反応は絶対起こるとは思っていました。

──郁男は何度も他人の期待を裏切って堕ちていく男です。こういう人物を演じるための、いわゆる役作りはどうされましたか?

香取慎吾
香取:役作りっていうのは、あんまり僕はよくわからなくて。その場その場で監督に言われたこと、その日撮るシーンを理解して演じていました。「逃げる」という部分では、役作りとまた逆で、自分で演じながらも「駄目な奴だな」という気持ちをグッと抑える作業のほうが大きかったかもしれない。そっちの感情がシーンに映ったら駄目じゃないですか。そっちを押し殺して、本番で監督のOKが出た瞬間に、「本当にひどい、こいつ」とやっと言えるっていう感じでした。

──監督はカメラを回し始めて、香取さんに対して「そこまでできるなら、もっとこうしてみよう、ああしてみよう」みたいな要求は……。

香取慎吾
白石:むしろその連続です。脚本では1行ぐらいしか書いてないんだけど「これ、いっぱい撮ったほうが絶対面白いな」って思い始めちゃったりとか。でも「それはできません」「なんでそうなるんですか」とか絶対ないんです。「わかりました」と必ず言って、超面白くして返してくれる。瞬時にやってくれることがだんだん気持ちよくなってきちゃって。

──香取さんとしては、監督のリクエストで「そこまでするの?」と驚いたシーンはありますか?

香取:いやあ、別にないですね。根本的に「監督」ですから。監督が言ったことは全部やりますよね。自分がそういうタイプじゃないからだけど、「これ、できない」というのは、僕は今までも一切ないですね。「できない」とか言う人のほうが、僕は大変だろうなと思う。

──たまにそういう方もいらっしゃるんですか?

白石:もう、いっぱいいます(笑)。

香取:いやあ、いっぱいいます。けど、僕は時間も全く気にならないです。いくら文句を言おうと、撮り終わらなければ終わらないじゃないですか(笑)。

(2019/06/27)


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白石和彌
しらいし・かずや

1974年12月17日生まれ、北海道出身。1995年、中村幻児監督主催の映像塾に参加。以降、若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として活動。若松監督の『明日なき街角』(97年)や『完全なる飼育 赤い殺意』(04年)などで助監督を務めたほか、犬童一心監督、行定勲監督の作品にも参加。2010年、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編映画監督デビュー。同作で共同脚本を務めた盒鏡瑤蛤討啻箸鵑澄惷О』(13年)は新藤兼人賞2013金賞、第37回日本アカデミー賞で優秀作品賞、同優秀監督賞など映画賞を多数受賞。その他、『日本で一番悪い奴ら』(16年)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)『孤狼の血』(18年)、『麻雀放浪記2020』(19年)など多数手がける。『ひとよ』(19年)が秋に公開予定。

香取慎吾
かとり・しんご

1977年1月31日生まれ、神奈川県出身。91年にCDデビュー。主なドラマ出演に、NHK大河ドラマ『新選組!』(04年)、『西遊記』(06年)などがある。主な映画出演に三谷幸喜監督の『THE 有頂天ホテル』(06年)、阪本順治監督の『座頭市 THE LAST』(10年)をはじめ、『西遊記』(07年)、『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE〜勝鬨橋を封鎖せよ!〜』(11年)、『人類資金』(13年)、『ギャラクシー街道』(15年)、3週間限定公開で話題となった『クソ野郎と美しき世界』(18年)などがある。2017年に稲垣吾郎、草なぎ剛らと共に出演したAbemaTVの『72時間ホンネテレビ』で次々と記録を樹立。日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーター、および国際パラリンピック委員会特別親善大使に任命。2018年8月に祐真朋樹とディレクターを務めるブランド「JANTJE_ONTEMBAR」がスタート。9月にパリ、ルーヴル美術館で初個展を開催、2019年3月から6月まで「サントリーオールフリー presents BOUM! BOUM! BOUM! 香取慎吾 NIPPON 初個展」を開催。150万を超えるフォロワーを持つオフィシャルインスタグラム、オフィシャルブログ「空想ファンテジー」も更新中。

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