『アリータ:バトル・エンジェル』ローサ・サラザール インタビュー

パワーの源は完全菜食! 最強少女を演じた注目女優を直撃

#ローサ・サラザール

これは、アリータが本当の自分を知り居場所を見つけていく物語

日本の伝説的SFコミック「銃夢」(木城ゆきと原作)をハリウッド映画化した 『アリータ:バトル・エンジェル』。『アバター』『タイタニック』のヒットメーカー、ジェームズ・キャメロンが脚本・製作を手がけ、『シン・シティ』のロバート・ロドリゲスが監督したSFアクション大作だ。

瓦礫の中から拾われアリータと名付けられた少女が、最強兵士として創り出された自らの過去を知り、与えられた自分の命の意味を見つけようとする姿が描かれていく。

主人公アリータを演じたのはローサ・サラザール。『メイズ・ランナー:最期の迷宮』でブレイクした彼女に、映画について、そしてジェームズ・キャメロンやロバート・ロドリゲスとの仕事について聞いた。

──いつ、このプロジェクトのことを知りましたか?

サルザール:2年ほど前よ。エージェントから、「『アリータ:バトル・エンジェル』という映画がある。ロバート・ロドリゲスのオーディションを受けたいか?」と聞かれたの。このプロジェクトについてはちょっと知っていたわ。何年も前に、ジェームズ・キャメロンが映画化する話をしていたから。脚本を読んで、すばらしいと思った。それで、ぜひやってみたいと思ったの。

──オーディションを受けてから役が決まるまで、どれくらいの時間がかかりましたか?

ジェームズ・キャメロン(左)とローサ・サラザール(右)

サルザール:しばらく時間がかかったわ。私が『メイズ・ランナー: 最期の迷宮』の撮影に出かけて戻ってきても、まだ答えは出ていなかった。ロバートとは知り合いだったの。彼とは何度か会ったことがあった。本作のオーディションを受けることになるよりも前に、私が書いた短編で手を貸してもらっていたから。決まるまで時間がかかったわ……全部で、4ヵ月くらいだったわ。

──アリータのどこに魅力を感じましたか?

サルザール:そうね、いくつかあるわ。ロバート・ロドリゲスの作品だということ。私と同じラテンアメリカ系で、私が何年も前から一緒に組んでみたいと思っていた人だわ。彼はとても偶像化されたフィルムメイカーよ。何もないところから映画を作り出してしまうから。『エル・マリアッチ』のようにね。それとに、『デスペラード』が大好きなの。これは初めて見た彼の作品で、母と一緒に見たわ。私はまだ子どもだったけれど、あの映画に夢中になったわ。力強くて感動を呼ぶストーリーで、爆発や銃、酒場での撃ちあいシーンのあるラブ・ストーリーだった。私はロバートの映画の価値観が好きなの。もちろん、ジェームズ・キャメロンの存在も魅力だったわ。

──ジェームズ・キャメロンの魅力とは?

サルザール:ロバートと同じように、キャメロンも、強くて多彩な女性キャラクターが登場するストーリーを作るわ。2人とも、そういうものを何年も手がけている。どんな映画でも肝心なのは脚本ね。『アリータ』の脚本は読み手(役者)を考えて書かれているの。あれは、時間のある時に手にして読む本のようなもの。キャメロンは、(撮影には一見関係ないような)ちょっとしたことを“脚本”に書き入れる。そういうものは映画の撮影のためではなくて、読み手のためにだけ書かれているものよ。

──具体的に、どんなことが書き込まれているんですか?

サルザール:そうね、「アリータはダマスク刀(木目状の模様を特徴とする強靭なダマスク鋼で作った刀)を初めて手にしたが、大昔の侍のように、刀が彼女を選んだのだ」といったようなことよ。撮影する内容とか演出といったものとは何も関係がないけれど、こういう説明があるおかげでストーリーにのめり込むことができる。いろいろな事を想像するし、何か特別なものを手にしたと思える。それに、私にとって大きな意味を持ったことは、それまで大作に出演してきて、本作が最後の卒業作品のように思えたの。つまり、私はスタントをやったし、ワイヤーを使ったアクションもやった。転落もした。飛び降りるアクションもやった。それに大がかりなシークエンスも。『メイズ・ランナー』シリーズでは、第2弾と第3弾でクレージーなシークエンスがあった。サンルーフから大きな銃を突き出したまま、車を乗り回したりもした。そういったものがどれも、『アリータ』にとっての最高のトレーニングになったし、私はこの大作で自分のスキルを試したいと思ったの。

──本作では、人間の演技をそのままCGに反映させる技術、パフォーマンス・キャプチャーが駆使されています。『アバター』で有名になった技術ですが、パフォーマンス・キャプチャーによる役作りの感想は?

撮影中のローサ・サラザール(右)

サルザール:(前から)パフォーマンス・キャプチャーをやりたいと思っていたわ。演じることが大好きだから。それに、自分の技能を駆使する新しいやり方を見つけて目指すゴールに向けて使うことが好きだから。
 この映画は、CGの高度な技術力、素晴らしい脚本、勢いがあって幅のある、何かのために戦う女性を演出する方法を心得た2人(ロドリゲス監督と製作のキャメロン)、それらの組み合わせがあった。こういうもの全てが私には魅力だった。製作スタジオも魅力的だったわ。フォックスとはとても長く仕事をしていて、大好きなの。結局、何もかもすべてってことね。それに、大作のスタジオ・シリーズを率いるラテン系アメリカ人女性になりたいと思った。ラテン系アメリカ人女性として、スタジオの大作を率いることができると知ってもらうためにね。

──パフォーマンス・キャプチャーによる演技は、普通の演技とは違いますか?

サルザール:初めは大きく違うと思うでしょうね。でも実際に演じているうちに、何も違わないと思うようになる。ただし、普通の演技では使用しないものに対応しなければならないわ。たとえば、ウェットスーツやドットを着けること、毎日、システムに読み取られて、ヘルメットをつけ、頭にはブーム(マイクなど操作用のアーム)をつけることもそうね。重いものをつけて耐えているから、ヘルメットが外されると、頭が反対向きに傾いてしまうくらいなの。そういう肉体に関することに対処し、役者として取り入れなければならないわ。でも、演技という意味では、ほとんど変わりがないことが分かった。

──ロバート・ロドリゲス監督との仕事はいかがでしたか?

サルザール:視覚効果などものすごい数の人が関わっている映画だけれど、ロバートはいつも落ち着いていたわ。彼は自分が撮影しているものを正確に知っているから。
 彼は人の話をよく聞くの。これまで、そうではない監督の現場を数多く見てきたわ。でもロバートは話を聞いてくれて、理解してくれる。映画ビジネスに身を置くラテン系アメリカ人女性としては、そういう姿勢は唖然とするほど驚きなの。この映画では、「いろいろと質問しすぎかしら」とか、邪魔をしていると感じたことはなかったわ。
 私が、「ねぇ、ロバート、彼女がこういうセリフを言った方が、もっと意味が通るんじゃないかしら?」と提案したり、いつだって自分の意見を伝えることができたわ。これは素晴らしいことよ。それに、自分の意見を言うってことは、責任感を持つようにもなる。「そうか。私の意見には意味があるんだ。自分の言う言葉には重みがある。責任を負わせてもらおう」と思うの。
 彼からは多くを学んだわ。映画作りを大いに楽しんでいる人と一緒に映画を作るのは本当に素敵なことよ。彼は映画のファンでもある。最高だわ。

──あなたが演じたアリータについて教えてください。アリータはどんなキャラクターですか?

サルザール:アリータは……普通の女の子よ! 
 撮影しているとモーション・キャプチャーであること忘れてしまうのと同じように、アリータはごく普通の子がたまたまサイボーグの体を持ち、忘れられない過去を持っているというだけなの。アリータは私と同じだわ。彼女にはさまざまな感情があるし不安を感じている。勇敢な人で勇気がある。強いし、好奇心旺盛で反抗的。パワフルであると同時に弱さも持っている。彼女には本当の感情が流れ、それをいつもむき出しにしている状態だと思う。彼女は何も隠そうとしない。ばかげた行為を容認することはない。手加減もしない。でも、彼女は自分が誰なのかを分かっていない。何もかも初めてのこととして学んでいるところなの。

──彼女は自分が誰かを知らないだけでなく、どこにいるかも分かりません。

撮影中のローサ・サラザール(左)

サルザール:そうなの。彼女はとても率直で傷つきやすく、世界滅亡後のゴミ捨て場で拾われ、目覚めた。でも私たち自身だって、気を付けなければすぐにそういうゴミの山に住むことになるわ。彼女は目を覚ましたけれど、そこがどんな世界かわかっていない。後から、この世界に脅威となる力があることを知るの。邪悪な人々や残酷な人、自分が生き残るために他人の人生を破壊してもなんとも思わない人たちがいる、ってね。でもアリータはそういうのをぴしゃりとはねのける。そして、そういう人たちがいることに彼女はひどく傷つく。なぜなら、脅威となる力がきっかけとなって彼女の記憶を呼び戻すまでは、彼女は優しい人だから。初めは、彼女は自分がどんな存在だったかを知らない。でも世界に何かがあることは分かっている。そのため、攻められて戦いを挑まれると、彼女は反撃し始める。その時になって観客は、彼女が途方もない人であることに気づく。とてつもない能力を持っているんだと。戦士の精神と戦士としてのトレーニングを積んだ人。彼女が過去を思い出せば出すほど、自分がどんな人かに気づくようになる。これは共感できる話だと思うわ。人生の落とし穴や試練、大きな悲しみを経験し、自分を知ること、自分が信じるものを、正しいものと間違ったものを知ることで、それまでとは別の側につくようになる人を描いているから。

──つまり、本当の自分を知り、世界での自分の居場所を見つける女性の話ということですね。

サルザール:ええ、その通りよ。世界での彼女の居場所だけど、彼女は自分がどういう形で助けになれるかも見つけるわ。というのは、これ以降はネタバレの危険があるけれど、映画の中で彼女は、「そこにいるだけでかまわない」と思う瞬間があるから。彼女はこう考える。「ここで暮らせばいい。それで我慢できる」と。でも結局、彼女は落ち着くことはない。高潔でいることは、とてもつらいことだと思うわ。

ジェームズ・キャメロンにビーガンになるように説得された
『アリータ:バトル・エンジェル』
(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
──役作りのためにトレーニングなどはしましたか?

サルザール:死にそうなくらいのトレーニングだったわ。トレーニングを始めた時は、私はヘナヘナの身体だったの。短編を書いていて、不健康な食生活だったからよ。体は細かったけれど、持久力もないし体幹もなかった。何ヵ月もキース・ヒラバヤシについてトレーニングしたわ。野菜を中心にした食事に替えたけれど、あれはとても大変だった。食事法をそういう形で変えたことは一度もなかったから。

──どんな食事法ですか?

サルザール:ビーガン(完全菜食主義者)よ。ジェームズ・キャメロンにビーガンになるように説得されたからだけど、彼は正しいわ。野菜中心の食事ね。今でも続けているわ。だから、以前より力強く対応できるようになった気がするわ。

──クリストフ・ヴァルツと共演した感想もお聞かせください。彼は、瓦礫の山からアリータを拾い、本当の子のように慈しんで育てるサイバー医師・イドを演じました。

サルザール:彼はとても存在感が強い人だけど、怖じ気づくことはなかったわ。そして、彼を共演するワクワク感が最期まで消えることはなかった。初めて彼を見た日、彼はカメラ・テストをやっていたので、私はカーテンの陰から覗いて、普段の彼を見ようとしたの。彼はとても奥ゆかしくて、パワフルで存在感があった。自分本位ではないから、共演していて不安じゃないわ。それに、彼はとてもユーモアがあるの。そういう人と一緒にいることはとてもすてきだったわ。でも、彼はばかげたことは許さない。わかるかしら? 彼は何が問題かをはっきりと言う。彼と共演できてとても光栄だわ。死ぬ前にやっておきたいことリストの一つをやり遂げた気がしているわ。

ローサ・サラザール
ローサ・サラザール
Rosa Salazar

1985年7月16日生まれ、キューバ系でワシントンD.C.出身、メリーランド州グリーンベルトで育つ。15歳の頃に女優を目指してニューヨークへ移転。その後、24歳の時にロサンゼルスに写る。テレビシリーズ『LAW&ORDER:LA』(11年)や『アメリカン・ホラー・ストーリー』(11年)、『ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言』(13年)などに出演。『メイズ・ランナー』シリーズ(15年、18年)で注目を集め、本作の主人公の抜擢された。