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『女王陛下のお気に入り』ヨルゴス・ランティモス監督インタビュー

オスカー最有力! 王室を舞台に人間の複雑さ描いた鬼才を直撃

『女王陛下のお気に入り』ヨルゴス・ランティモス監督インタビュー
観客がすぐに性格を見抜けるようなキャラクターにはしたくない

『女王陛下のお気に入り』
2019年2月15日より全国公開中
(C)2018 Twentieth Century Fox
18世紀のイギリス。17人の子どもに先立たれた病弱で容姿にも優れないアン王女は、強力な権力をもちながら、強いコンプレックスを抱き、孤独で気まぐれだった。そんな彼女を影で牛耳る幼なじみのレディ・サラ。ある日、2人の前に没落貴族のアビゲイルが現れたことで、密接だったアンとサラの関係は変化していく……。

アカデミー賞有力候補の『女王陛下のお気に入り』で、政治的駆け引きのなかで緊張度を高めていく3人の女の関係を描いたのはヨルゴス・ランティモス監督。『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』といった不条理劇で世界中を虜にした個性派監督に、自作を語ってもらった。


──本作を手がけたきっかけについて教えてください。

ヨルゴス・ランティモス監督
監督:僕が関わる何年も前から、オリジナルの脚本が作成されてたんだ。その脚本を読んで3人の女性の物語を知った。すぐに引き込まれていったよ。めったにない作品になると思った。3人の女性が主人公の物語は珍しいからね。複雑な人間関係を描くには、もってこいだった。

──アン王女、レディ・サラ、アビゲイル、3人の女性の描き方が絶妙ですね。

監督:最初から目指したのは、彼女たちをできる限り複雑に描くことだった。この話は誰もが簡単に読んだり調べたりできるし、彼女たちの一面だけを見て短絡的に、こういう人物だと決めつけがちだ。僕たちが作り上げたかった登場人物というのは、話が進むにつれて、本人が変遷を遂げ観客の見方も変わる人物だ。必ずしも善人と悪人を区別できず、強者と弱者も決めがたい。
 この物語ではアビゲイルが、宮廷にやって来る。彼女は比較的、世間知らずで不運な人生からはい上がろうとしている。しかし多くの困難に直面する。そこで生き抜くために、ある種の行動を余儀なくされ、いろんな経験をするんだ。観客から見て彼女が築く人間関係は、常に本物なのかどうか判断しがたい部分がある。だが考えさせるところがいい。

『女王陛下のお気に入り』撮影中の様子
 レイチェル演じるサラもそうだ。国家を動かす自信に満ちた強い女に見えるが、女王に特別な愛情を抱いてる。それも物語の途中で疑いたくなるから不変ではない。オリヴィア演じるアン女王も同様だ。彼女を無力な弱い女王ととらえるのは、極めて短絡的だね。この作品を通して見えてくるのは、彼女が悩める女性であることだ。強力な君主ではなかったかもしれないが、サラやアビゲイルと過ごすうちに、彼女に変化が起こり予期しないことを成し遂げる。本作の最大の狙いは3人の女性を一面的にとらえず、彼女たちのさまざまな側面を描くことだった。

──他作も含め、登場人物のキャラクター構成について気を付けていることはありますか?

監督:登場人物の性質や人格を描くことには、常に気を使ってる。観客がすぐに性格を見抜けるような人物にはしたくないんだ。登場する人物がしたいと思っていることや、悪人と善人が最初から分かってたらつまらない。すべての人物が実在するかのように描きたい。複雑で理解しづらい方がリアルだ。時として好きな人を嫌いになったり、理解できたりできなかったりするのが普通だ。現実世界で私たちに起こることを描きたいんだ。登場人物の人格をどうするか決める時の基準は常に同じだ。一目では分からない人物像を作ることだね。

──今回、王室を舞台にした物語を手がけようと思った理由は何ですか?

『女王陛下のお気に入り』撮影中の様子
監督:僕にとって興味があるのは権力者であって、王族であることは重要じゃない。当時のイギリスで権力を握っていたのが王族だったというだけだ。だから権力を持つ人々なら、同じような物語が政治家や独裁者やその他の権力者でも作れる。絶対的な権力によって生み出されるものが、不条理なんだ。そんな状況下では不条理がまかり通り、権力者たちが大多数の生活を左右する。

──本作を手がける上で一番気を付けた点は何ですか?

監督:この作品ではさまざまな要素を利用して、現代的な感覚を持たせた脚本作りの段階から、トニー・マクナマラとも相談し決めたんだ。現代的な言葉を用いて、当時の時代に合わせた話し方はさせないとね。衣装にも工夫を凝らした服装は当時を再現したが、現代的な生地も取り入れてる。本作に登場する人々の立ち居振る舞いは、ダンスや歩き方立ち姿までかなり現代的だ。音楽は当時のものもあれば、現代的なものも混ざっている。そんなふうに撮影した。だからこの作品はさまざまな要素が組み合わさり、現代的な作品でありながら、今に通じる部分やモダンなひねりがある。

──アン王女役のオリヴィア・コールマンとレディ・サラ役のレイチェル・ワイズは、『ロブスター』に続いての起用です。再起用の理由を教えてください。

監督:最高の経験を共にした俳優は、また起用したくなるし、より良い作品を作る近道にもなる。以前、一緒に仕事をしたことで信頼関係ができあがってるから、もう一歩踏み込んだ演技を引き出すことができる。

──コールマンとワイズの起用は、どんな効果をもたらしましたか?

『女王陛下のお気に入り』
(C)2018 Twentieth Century Fox
監督:配役を決める時にいつもやってるのは、演技の能力だけでなく存在感を重視することだ。脚本に描かれてはいなくとも、その俳優が演じることでにじみ出る何かがある。役柄とは正反対の特質をもたらすこともある。
 例えば、レイチェルには独特の温かみがあると思う。人としても俳優としてもね。サラの荒涼とした人格とは、正反対のものだ。でもそれが役に面白みと複雑な深みを与えた。アン女王にも同じことが言える。彼女には悩みが多い。苦労もしてきたしね。普通に考えたら彼女は弱くて、意気地なしに思える。でもオリヴィアが演じることで、いろいろな面を持つ。人物に見えてくる。彼女の演技力と存在感がそのように見せるんだ。

(2019/02/15)


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ヨルゴス・ランティモス
Yorgos Lanthimos

1973年5月27日生まれ、ギリシャ出身。コマーシャル製作を経て、『Kinetta』(05年)で長編映画デビュー。ベルリン国際映画祭などで上映され絶賛される。続く『籠の中の乙女』(09年)はカンヌ国際映画祭ある視点賞を受賞、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。『Alps』(11年)はヴェネチア国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。初の英語作『ロブスター』(15年)はカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、アカデミー賞脚本賞にもノミネートされる。ニコール・キッドマン主演の『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(17年)でもカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。

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