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『テルマ』ヨアキム・トリアー監督インタビュー

戦慄のホラーを放った北欧の鬼才

『テルマ』ヨアキム・トリアー監督インタビュー
僕は想像力というパワーを信じている

『テルマ』
2018年10月20日より全国順次公開中
(C)PaalAudestad/Motlys
恐ろしい力を秘めた少女。厳格な両親の下で育った彼女が、封印されていた“力”に目覚めるとき、衝撃と戦慄が訪れる……。

アカデミー賞とゴールデングローブ賞外国語映画賞のノルウェー代表作品に選ばれた『テルマ』を監督したのはヨアキム・トリアー。監督作はまだ4作ながら、デビュー作『リプライズ』(未)でノルウェーのアカデミー賞、アマンダ賞で作品賞、監督賞、脚本賞を受賞、『オスロ、8月31日』(未)がセザール賞外国語映画賞にノミネートされ、2013年にはニューヨーク・タイムズが選ぶ「注目の監督20人」に選ばれるなど、北欧を代表する監督といえる。

鬼才、ラース・フォン・トリアー監督の親族でもある彼に、美しく恐ろしい本作について聞いた。


──本作の独創的なアイディアはどのように生まれたのでしょう?

撮影中のヨアキム・トリアー監督(左)
監督:2つのものを融合することに興味があったんだ。1つは「テルマ」というキャラクターの物語。実存主義的な問題を抱えた若い女性が自分が何者なのか、ということを受け入れる。真の恐怖だ。もう1つは、異なるイメージを組み合 わせ創造してみたかった。子どもの頃にたくさん見たスーパーナチュラル・ムー ビー。同じようにたくさん見たイングマール・ベルイマンの映画。彼の映画の根底にあるのは人間の物語だよね。他にもブライアン・デ・パルマ監督作品とか、大友克洋監督の『AKIRA』。こういった作品はSFやスーパーナチュラルのストーリーを通して実存主義や人生における大きな疑問を描いている。日本映画ではよく人間の感情が描かれていると思うんだけど、昨今のアメリカのメインス トリームな映画はアクションだけで人間の心が描かれていない。だから、この2つを組み合わせてみたかったんだよ。

──この映画は、色々な要素がバランス良く融合され、カテゴライズ不可能な点が素晴らしいですね。監督としては、この映画を“どんな作品”だと表現しますか?

監督:そうだね。一つのジャンルになんてカテゴライズしてほしくないね。
 若い女性が、1人の人間になるまでの過程を描いたヒューマン・ストーリー。自分らしい自分でいることの恐怖。でも映画の枠組みとしてはファンタスティック映画だから、ロマンティック・スーパーナチュラル・スリラーと呼ぶね。それがなにかはわからないけど(笑)。僕は、コラボレーター(共同脚本のエスキル・フォクト)と僕が生み出したストーリーを語っているだけだから。映画を客観的に外側から見ることはできないんだ。

──先ほど、ブライアン・デ・パルマ監督の名前が挙がりましたが、他にもホラー映画やジャンル映画から影響を受けていますか?

撮影中のヨアキム・トリアー監督(左)
監督:デ・パルマからは多くのインスピレーションをもらったね。あとは僕が生まれ育ったノルウェーの昔の寓話(フェアリーテイル)。森に秘められた神秘とか自然、動物。そういったものも『テルマ』の一部になっている。だからこの映画はアメリカのポップアート、デ・パルマとかトニー・スコット監督の『ハンガー』、デヴィッド・クローネンバーグの『デッドゾーン』を組み合わせているんだよ。あとはノルウェーの魔女についての伝承とかも。魔女は必ずしも邪悪である必要はない。善き魔女もいるからね。抑圧された女性の物語は描きたくなかったんだ。それよりももっとパワーに満ちたストーリーを描きたかった。この映画は色んなものからインスピレーションを得たよ。

──テルマの能力についてはどうやってリサーチしたのですか?

監督:オカルトに関連する本をたくさん読んだよ。家族と子どもの関係や、僕たち人間がどうやって振る舞うべきか。痙攣なんて普通起こるものではないから問題だ、と勝手に決めつける社会、そこから生まれる状況や感情、結果について語ることに興味があった。あとは「自分の内側から生まれた本物のパッションが一体どうなるのか?」というテーマのホラー映画を作りたかったんだ。

──監督はこのような特殊能力を信じますか?

監督:信じてないかな。僕は想像力というパワーを信じている。想像力のおかげで世界はより興味深い世界になる。世界のミステリーは信じているよ。『テルマ』がフィクションであることは、僕にとって問題ではないから。現実のことではない。それが面白い。だから僕は映画館に足を運ぶんだ。僕の人生とはまったく異なる物語が僕に影響を与えてくれるから。僕は言葉で描写できるものよりも、人間 同士のコミュニケーションのほうを信じているんだ。もちろん、この世にある言葉では説明できないけど、感じることができるものを僕は 信じている。それは真実だ。そういう観点から言うと、オカルトやスーパーナチュラルなものを信じてるよ。

──エンディングは見る人によって様々な解釈ができます。

撮影中のヨアキム・トリアー監督(右)
監督:そうだね。本国のノルウェーでも、「なんて美しいハッピーエンドなの」という人もいれば、「なんてダークなエンディングなんだ」という人もいて、反応が様々なんだ。この事実を気に入っているよ。だから自分の考えは言いたくないかな。未た人に自分で感じてほしいからね。願わくば、その解釈が観客それぞれを反映する鏡になればと思う。

──映像の美しさが印象的でした。

監督:撮影監督はスウェーデン人のヤコブ・イーレ。彼は僕の全作品の撮影監督なんだ。彼は素晴らしいよ。今回は、今までと違うレンズを使ってみたんだ。初めてシネマスコープレンズを使ったんだよ。この映画では閉所恐怖症的でありつつ、同時に壮大な映像を撮りたかった。漫画ではよく使われる手法だよね。例えば、大友克洋の漫画「童夢」。子どもや人間など小さなキャラクターと巨大なビルがシンメトリックに描かれている。あの手法にはインスパイアされたね。大友克洋も今敏もこういう技法に長けている。君が日本人だから言ってるわけじゃないよ。本当にそうなんだから!

(2018/10/26)


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ヨアキム・トリアー
Joachim Trier

1974年生まれ、デンマーク出身。『リプライズ』(未/06年)で長編監督デビュー。トロント、ロッテルダム、サンダンスなどの国際映画祭に正式出品され、ノルウェーの権威ある映画賞、アマンダ賞で作品賞、監督賞、脚本賞を受賞。また、同作は 全米でも公開され、06年のアカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表作品に選出される。2作目の『オスロ、8月31日』(未/11年)でもアマンダ賞監督賞を受賞。13年には「ニューヨーク・タイムズが選ぶ注目の監督20人」に選ばれる。初の英語作品『母の残像』(15年)にはガブリエル・バーン、ジェシー・アイゼンバーグ、 イザベル・ユペールらが出演。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品さ れ、アマンダ賞監督賞、脚本賞を獲得。

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