『恋のしずく』中村優一インタビュー

見た目はクールで中味はホットな男を好演!

#中村優一

今回の役を通して、日本酒の奥深さを知った

東京の農大でワインソムリエを目指す“リケジョ”・詩織(川栄李奈)。日本酒嫌いの彼女の実習先に決まったのは、東広島市西条にある日本酒の酒蔵・乃神酒造だった。蔵元のやり方に反発する酒蔵の息子・完爾や、あたたかい西条の人々とふれあい、詩織は日本酒の魅力に徐々に目覚めていく。

日本三大酒処の一つとして知られる西条の街を舞台に、日本酒造りとそこにかかわる人々の心模様を繊細に描いた『恋のしずく』。本作で酒造会の若きホープ・有重一紀役を演じた中村優一は、出演をきっかけに日本酒が好きになったと話す。共演者との思い出や、西条の街の魅力についても語ってくれた。

──最初に台本を読んだとき、どんな印象を受けましたか?

中村優一

中村:西条という土地の魅力をメインで伝えながら、日本酒を通してそれぞれの人物のストーリーや恋愛模様が描かれています。人の温かさが伝わる素晴らしい作品だと思いました。さらに大杉漣さん、小市慢太郎さん、津田寛治さんという名だたる俳優の皆さんが出演されているのも印象的ですし、台本を読んでるだけでも日本酒が飲みたい、西条に行ってみたいなという気持ちになりました。

──中村さんの今回の役どころを教えてください。

中村:僕が演じる有重一紀は、西条にある有重酒造という蔵の若き蔵元です。小野塚(勇人)くん演じる莞爾とは真逆で、表には感情を出さない内気な性格。でも心の中は熱くて真っすぐで、すごく素敵な役柄だと思います。

──演じてみて難しかった部分はありますか?

『恋のしずく』
(C)2018「恋のしずく」製作委員会

中村:出身が神奈川なので、広島の方言が出てくるのが少し難しかったです。でも僕の役は西条にいながら東京でも仕事をしているような都会的な役だし、敬語のセリフも多かったので、実際の現場では「ここは方言じゃなくていいよ」と言われることも多くて。話し方の指導をしてくれる方はずっと現場についててくれたんですけど、小野塚くんのようにずっと方言で喋っている役ではないので、そこまで苦労はなかったです。

──日本酒の蔵元役を演じましたが、普段からお酒は飲みますか?

中村:舞台の後に共演者の方と(飲みに)行く機会はありますが、そういうときはビールやサワーが多かったんです。主人公の詩織ちゃんと出会って彼女に日本酒の飲み方を教えるシーンがあるのですが、僕自身は日本酒にあまり馴染みがなくて。今回、西条にも撮影で初めて行って、撮影期間中に日本酒を学んでいったという感じですね。

──中村さんの撮影期間はどれぐらいあったんですか?

中村:3、4日くらいですね。普通なら、クランクインしてから撮影が早く終わった日にみんなで「ご飯行こうか」ってなるんですけど、西条に行くときに乗った飛行機がたまたま小野塚くんと同じ便で、小野塚(勇人)くんから「みんなでご飯食べに行くんですけど、行きます?」と誘われて。クランクインの前日の夜からみんなで日本酒を飲みに行っていました。それからは毎日夜中の2時ぐらいまで飲んで、早朝から撮影が始まるという日々。日本酒を通して、共演者の皆さんともすぐに打ち解けられました。

──小野塚さんといえば、莞爾と一紀の飲みくらべのシーンが印象的でした。

中村:あれはすごくキツかったです。撮影時は水を飲むことになっていて、最初は「水じゃなくてお酒でもいいですよ」と監督に言っていたのですが、結果的に2人とも3、4リットルも水を飲んでいたので、お酒じゃなくてよかったなと(笑)。
 あと、僕はそもそも特撮ヒーローが好きで、小野塚くんが『仮面ライダーエグゼイド』に出演しているのも見ていたので、まず「会えた!」と感激しました。彼とバイクに2人乗りするシーンがあったんですけど、仮面ライダー俳優同士でバイクに乗れて、個人的にはすごく燃えましたね。僕が仮面ライダーを演じていたときは、自分が運転して後ろに女性を乗せるシーンはありましたけど、男の2人乗り、しかも後ろに乗るのは初めて。嬉しくて、小野塚くんと一緒に写真も撮ってもらいました。

──瀬木直貴監督の印象を教えてください。

本作が遺作となった大杉漣は乃神酒造の蔵元を演じた/『恋のしずく』
(C)2018「恋のしずく」製作委員会

中村:最初に撮ったのが、僕がマスコミの取材を受けるシーンでした。そこで監督から一紀の役柄について説明を受けたんですが、僕がイメージしている役柄とマッチしていたので、やりやすかったことを覚えています。その後の撮影もスムーズにできました。
 瀬木監督は、企画が決まった段階で撮影の舞台になる地域に住んで、その土地のことをちゃんと知った上で撮られる方。だから嘘がないというか、その土地の本当の姿を見せるという作品作りができるのは素晴らしいことだと思います。

──今回の出演をきっかけに、日本酒がお好きになったんですね。

中村:そうですね、一紀の役を通して「日本酒って温度や飲み方でこんなに味が変わるんだ」と知りました。最近はお店で食事をするとき、一緒にいる誰かが日本酒を頼んだら「僕も飲みます」と言うようになって、日本酒を飲む機会が増えました。『恋のしずく』に登場する日本酒を実際に造って販売もされているのですが、有重酒造で作った「安芸乃露」というお酒もあるんです。それが嬉しくて。
 この映画を通して西条の日本酒を知ってほしいですし、ぜひ西条にも行ってみてほしい。東広島市で作品のロケ地マップも作ってもらったので、それを見ながら日本酒を飲んでご飯を食べて、西条の街を楽しんでもらえたら一番嬉しいです。

中村優一
中村優一
なかむら・ゆういち

1987年10月8日生まれ、神奈川県出身。『仮面ライダー響鬼』(05年)、『仮面ライダー電王』(07年)などに出演し人気を博す。主な出演は、映画『薄桜鬼SSL 〜sweet school life〜』(16年)、『スレイブメン』(17年)、ドラマ『もひかん家の家族会ぎ』(17年)、『最後の晩ごはん』(18年)、『居酒屋ぼったくり』(18年)など。