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『クワイエット・プレイス』ジョン・クラシンスキー監督インタビュー

200億円超の大ヒットホラーの監督、実はホラー映画嫌いだった!?

『クワイエット・プレイス』ジョン・クラシンスキー監督インタビュー
家族のあり方を描いた映画。感情を揺さぶる作品になると嬉しい

『クワイエット・プレイス』
2018年9月28日より全国公開
(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
興収1億8800万ドル(約210億円)を記録した大ヒットホラー『クワイエット・プレイス』が、ついに日本でも公開された。『トランスフォーマー』シリーズなどで知られるメガヒットメーカーのマイケル・ベイがプロデューサーをつとめ、アマゾンPrime Video『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』のジョン・クラシンスキーが監督をつとめる(脚本・出演も兼務)。

「音を立てたら、即死」という世界で暮らす家族の姿を描いた作品で、クラシンスキー監督の妻でもある演技派エミリー・ブラントが母親役を演じている

想像を絶する恐怖と苦痛に肌が粟立つ本作について、クラシンスキー監督が語った。


──これまで、『Brief Interviews with Hideous Men(原題)』(09年)、『最高の家族の見つけかた』(16年)の2作で監督をつとめていますね。今回はホラー映画ということで今までの作品とは異なりますが、もともとホラー映画に興味はあったのですか?

『クワイエット・プレイス』
(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
クラシンスキー::興味をもっていたかって? むしろ全く逆で、ホラー映画を怖がっていたくらいだ(笑)。怖いから、ホラー映画を鑑賞するのも稀だった。だが、TVシリーズ『ザ・オフィス』(05年〜13年)に出演していた時に、同シリーズのクリエイター、グレッグ・ダニエルズが僕にアドバイスをくれた。「君の仕事は、台詞を(コメディ番組として)面白く発するだけじゃなく、単に台詞を発するだけでもあるんだ」とね。よく意味がわからなかった僕は「一体、どういう意味だい?」と聞き返したんだ。すると彼は「その台詞を視聴者が可笑しいと感じても良いし、感情的だと感じても良いということなんだ」とね。つまり彼は、発した台詞は全て、その視聴者の解釈によるものだということを言いたかったんだ。
 これはほんの些細なアドバイスだが、僕にとっては大きなアドバイスになった。おそらく、あのアドバイスを受けていなかったら、僕は今作のようなホラー映画を決して手がけてはいなかったと思う。僕は家族と繋がっている感覚はあるが、ホラー映画をどう手がけて良いかわからなかった。でも、親が子どもを守ろうとするストーリーならば執筆できると思ったんだ。なぜなら、僕とエミリー(・ブラント)の間には子どもがいたからだ。だからグレッグのアドバイスを受けて、僕自身が気になっている最愛の家族のことを描き、それを見た観客はキャラクターを通して悲しく感じたり、強く感じたりし、そんな感情を僕は観客の解釈に委ねることができたんだ。
 ホラー映画を手がけるとなったら、できる限りのホラー映画を鑑賞した。すると、いかにホラー映画に対して無知だったかに気付かされた。怖いから鑑賞しなかったことが、むしろ馬鹿らしく思えた。過去のホラー作品にはB級映画がかなりあるが、今では『ぼくのエリ 200歳の少女』(08年)、『ウィッチ』(15年)など、ストーリー構成も素晴らしいホラー映画が存在する。今では、なぜそれらのホラー映画がベストであるか理解できるようになった。

──それらの映画が、ホラー映画に対して鈍感だった貴方を目覚めさせ、ストーリーの構成に影響を与えたのでしょうか?

クラシンスキー:そうなんだ。ぼくがホラー映画を見るときは、なぜ怖いのかという理由が必要だった。でも僕が育った頃の映画は『13日の金曜日』(80年)のジェイソンや『エルム街の悪夢』(84年)のフレディ・クルーガーのように、(理由もなしに)単に怖がらせる映画が多かった。
 ただ現代のホラー映画では、いろいろなことが起きている。ちょっと古いが、『ジョーズ』(75年)なんかも、単にシャークが襲ってきて怖いだけでなく、何か観客をスクリーンに結びつける要素がある。あのような映画には怖いだけでなく、観客を惹きつけさせる様々な要素があって、そういうところをストーリーに反映させたいと思った。

──では、本作はホラーファンではない人々にとっても“良い映画”だと思いますか?

『クワイエット・プレイス』ニューヨークプレミアでの様子。左からエミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー監督、ノア・ジュプ、ミリセント・シモンズ
クラシンスキー:そうだね。僕は自分の作品を母親のバロメーターで評価してもらうことは稀だが、彼女は今作を気に入ってくれると思っている。なぜなら、本作を通して、親になることの怖さを感じさせる大きなアイデアもあったからだ。今、ホラー映画が怖くて見られない人がいたら、彼らに何を言うかというと「怖くない、と決して否定しなくて良い。実際に怖いから」というね。でも、見れば怖いだけでなく、別の方法(家族の要素など)で満足してもらえると思っている。勿論、ホラー映画の恐怖は取り除けないかもしれないけれど、鑑賞して良かったと思ってもらえるはずだ。

──「音を出してはいけない」という斬新な設定です。このユニークなアイデアは脚本に書かれてあったそうですが、長年温めていた企画だったのですか?

クラシンスキー:この企画が舞い込んできたのは、2016年の9月だった。オリジナルの脚本を読み、そのときは役者として出演するつもりはなかった。でも脚本を読み終わって、この着想が僕のもとで、どう展開していくかを考えたとき、僕は監督し、自分が演じたいと思った。なぜなら当時、2人目の子が生まれたばかりで、親としての新たな自覚を感じていたから。
 監督については、実はエミリーのアイデアなんだ。彼女は、「これほどあなたが何かにワクワク興奮して感動して夢中になっているのを見たことがない。だから、あなたが監督すべきよ」と言ったんだ。

──奥様のエミリー・ブラントとは、どのような準備をしたのですか?

クラシンスキー:彼女が出演の契約を結んでから、すぐに、いかに静かな状態で撮影することが困難になるかを話し始めた。最初は「もし母親が子ども達のために夕食を作っているときに誤ってスプーンを落としたり、コーヒーカップを強めに置いただけでも、家族は死んでしまうわね(笑)」とジョークを言っていた。ただ、そんなジョークがどれほど音を立てずに暮らすのが難しいか把握するバロメーターになった。
 そして、脚本で音を立てずに描くことがリアルに感じられるかを、確かめていく作業も行った。エミリーは「もし、その脚本でリアルに感じない部分があったり、わたしのキャラクターがそういう言い方はしないと思ったりしたら、今、話し合わない? 撮影現場でカメラを回している時や録音の人がマイクを握っている時に、そのようなことをまとめて現場で言いたくないから。だって、トラブルのもとになるもの」と言ってくれたんだ。さらに彼女は、監督が素晴らしいと言ってばかりいるとあまり納得できないとも話してくれた。だから、事前に彼女と会話するたびに、本音を言い合うことができたんだ。

──女優エミリー・ブラントについて教えてください。

クラシンスキー:撮影1週間前、編集できる場所を探している時に(エミリーの主演作)『メリー・ポピンズ リターンズ』の編集をしていたロブ・マーシャル監督に会った。彼は信じられないほど才能のある人物で、個人的に大好きな人だ。そんな彼が僕に「いつから撮影するんだい?」と聞いてきて、僕が「来週からです」と答えると、彼は「いずれわかるよ」と笑顔で語ってきた。僕はその含んだ彼の笑みを見て察して「僕はエミリーのことをすごく愛しているから大丈夫です」と答えたんだ。すると彼は「彼女と同じ部屋(現場)で、彼女の演技を見ない限り、彼女が、なぜこれほどまでに素晴らしい女優かわからないよ」と言ってくれたんだ。これまで全てのエミリーの出演作を見てきて全ての作品を気に入ってきたけど、彼が「同じ部屋で演技を見なければわからない」と言ってくれことが、興味深かった。

──子どもの撮影は大変だと聞きますが、今回はいかがでしたか?

クラシンスキー:誰もが僕に「子どもとは一緒には働くな! 撮影は遅れるし、彼らの働く時間は限られている。それに学校にも行かなければならない」と言ったんだ。ところが、子役たちの方がプロフェッショナルで、むしろ僕の方が彼らの仕事を邪魔してしまったかもしれない。さらに、彼らはリハーサルの過程でも、かなり思慮深く(演技の)アイデアについて話し合っていた。おそらく脚本を読んで、そこに記されていた内容から、それぞれが自分の演技を引き出していたと思う。
(聴覚障害の娘リーガンを演じた)ミリー(ミリセント・シモンズ)を見つけたことは、この映画にとって指折りの、素晴らしい出来事だった。彼女自身、聴覚障害を持っているが、驚くほど優れた女優であるだけでなく、賢く、本当に天使のようだった。彼女は決して臆せず、レーガンならきっとこうするとか、こうコミュニケーションをとるはずだと、とても率直に語ってくれたんだ。ミリーの力は天性のものだった。撮影に入った初めの頃、彼女が歩いて橋を渡るとき、ぼくは彼女に言ったんだ。「不安、怒り、罪悪感、この家族のなかでのけ者だという感覚を、歩きながら全部表現して」そして彼女は見事にやり切った。ミリーと話したとき、自分は彼女のように全身全霊で相手に目を向けてこなかったのだと知った。
(弟のマーカスを演じた)ノア・ジュプについては、『ザバービコン 仮面を被った街』(17年)で彼と仕事をしたジョージ・クルーニーにメールで聞いたんだ。するとジョージは、「ノアは、僕が今まで仕事をした中で最も優れた子役の一人だ」と言っていた。ジョージは、TVシリーズ『ER 緊急救命室』(94年〜09年)でダグラス・ロス役を演じ、多くの子役達と接してきている。そんな彼が言うんだから、きっと素晴らしい子役だと思った。そして、ジョージはメールの最後に、「撮影は(ノアのおかげで)毎日、一時間短縮できるよ」と教えてくれた。でも、せっかくの一時間の短縮も、僕の監督演出や撮影の下準備で台無しにしてしまったんだ(笑)。

──これから見る人たちに注目して欲しいところはどこですか?

クラシンスキー:家族のあり方かな。大切な人を守るということ、過酷な世界で家族と協力するということ、ホラー映画で泣くと思っていなかったと言ってくれた人もいたけど、感情を揺さぶる作品になると嬉しいよ。

(2018/09/28)


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ジョン・クラシンスキー
John Krasinski

1979年10月20日生まれ、アメリカのマサチューセッツ州出身。ブラウン大学で劇作を専攻し、イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーや国立劇場研究所で演技を学ぶ。テレビシリーズ『The Office』(05年〜13年)で人気を博し、『Brief Interviews with Hideous Men』(09年)で監督デビュー。アマゾンPrime Video『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』に主演している。主な出演作は『かけひきは、恋のはじまり』(08年)、『恋するベーカリー』『お家をさがそう』(共に09年)、『プロミスト・ランド』(12年)など。その他、監督作には『最高の家族の見つけかた』(16年)がある。

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