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『リグレッション』アレハンドロ・アメナーバル監督インタビュー

エマ・ワトソンが悪魔崇拝の犠牲者に! 鬼才監督が語るその魅力とは?

『リグレッション』アレハンドロ・アメナーバル監督インタビュー
悪霊崇拝は、ほとんどがアメリカで起こっている

『リグレッション』
2018年9月15日より全国順次公開
(C)2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E
『アザーズ』や『海を飛ぶ夢』などで世界的に高い評価を得るスペインの鬼才、アレハンドロ・アメナーバル監督。彼の8年ぶりとなる長編作『リグレッション』が9月15日より公開される。

イーサン・ホークとエマ・ワトソンをキャストに迎えた傑作サスペンスについて、アメナーバル監督に聞いた。


──本作では、悪魔崇拝者による儀式が告白され、住民たちがパニックとなっていく様子をが描かれています。実話から着想を得たそうですが、本作を作ろうと思った経緯を教えてください。

『リグレッション』
(C)2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E
監督:以前からサスペンス映画に挑戦したいと思っていて、可能性のある題材について考えていました。サスペンスやホラーの場合、私は以前からサイコキラーやお化け、悪魔に興味がありました。それで、悪霊崇拝に関して調べていました。でも少し退屈になってきた頃、アメリカでの悪魔の儀礼虐待の話を読んだのです。イギリスでもそのような事件はありましたが、ほとんどがアメリカで起こっていました。そして、自分がほとんど知らなかったことに驚きました。さらに私は、抑制された記憶についてだとか、多重人格障害に関してのドキュメンタリーをいくつか見ていましたが、それについてもあまり知りませんでした。いろいろと調べるにつれて、その2つを合わせることが出来ると思いました。私がそもそも作りたかった悪霊崇拝についての物語で、同時にサイコスリラーでもある作品を。私にとってとても新鮮なアプローチでした。
 確か宇宙人の誘拐についての記事を読んでいた時、回復記憶セラピーに焦点を当てたものがあり、そこから悪魔崇拝虐待に繋がっていきました。この映画では、みんなが間違いを犯すということが見て取れますが、私は信仰や教会の世界が、科学の世界──ここでは精神医学ですね──に反しているというアイディアが好きで、またその2種類の違った力が協力して大きなパズルを解き明かそうとしているというアイディアも気に入っています。この映画で起こった出来事は小さな事件ですが、国のどこでも起こっていることを反映していますし、ある時点で全員が間違いを犯してきたことに気付きます。中盤で、刑事は、物語の真相にたどり着く唯一の方法は、これまでの過程=旅で自分がいくつか間違いを犯したことに気付くことだ、と気付くんです。

──『リグレッション』というタイトルの意味は?

監督:「リグレッション(REGRESSION)」という言葉は、退行を意味しています。60年代、70年代のスリラー映画、ホラー映画といった私が視聴者として楽しんでいた映画に戻ること、同時に、私が監督を始めた大学時代に制作していたような映画に戻ることを意味しています。また「リグレッション」は、心理学を用いて抑制された人の記憶を取り戻す一連の行為(「退行理論」)という意味も持ちます。この映画には、心理学的な側面がしっかりとあります。
 僕にとってこのプロジェクトはサスペンス、ミステリーへの再訪、僕がキャリア初期に貫いていたジャンルへの回帰という意味も含んでいます。デビュー作『テシス 次に私が殺される』では、時にホラーは我々に対して催眠術的とも言える影響を及ぼすことを打ち出し、続く『オープン・ユア・アイズ』では夢と現実は共存するという信じがたい可能性を熱く示唆し、『アザーズ』では古典サスペンスの風情を取り戻すという挑戦をしました。僕はいつも、自分を駆り立てるもの、自分を突き動かすもの、そして、全く別の方向性を探求しながら、さまざまなジャンルに挑戦しているんです。

──この映画は、実話に触発されて作られたそうですね。

『リグレッション』
(C)2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E
監督:この映画は事実に基づいています。80年から90年代にかけて、「悪魔崇拝儀礼虐待」と呼ばれた、アメリカ国内の数多くの町で起こった事件で、人々は非常に恐ろしい、時には意味不明な告発をし、警察・精神科医・神父がこの類のパズルを解こうとしていました。当時、特に悪魔に関する事については、陰謀説もささやかれていました。60年代から悪魔に対する妄想といったものがあり、メディアでも様々な書籍や映画の中で描かれています。その後、それは「この世の終わり」に対する妄想へとシフトしていきました。つまり、新しい世紀へと移る西暦2000年がやってくる時期に人々は世の終末に対して興味を抱き、妄想を抱くようになっていったのです。
 私が一番驚いたのは、私がこの事実について何も知らなかった事に加え、21世紀に生きる我々がこういった事象から遠く離れていた事、そして人々が、私も含め、このような事象に関する映画をまず滅多に見られないという事実でした。

──この映画には、『エクソシスト』へのオマージュも少し含まれていると思いました。トリビュートしたいと思う映画や、あなたに影響を与えた映画を見直しましたか?

監督:映画は常に見ています。それが一番好きなことですから。でももちろんこの作品には、好きだった『ローズマリーの赤ちゃん』『エクソシスト』『大統領の陰謀』『マラソンマン』など60年代後半から70年代の映画の要素を入れたいと思っていました。
 私がこれらの映画で好きな所は、時として電報文のように簡潔な描き方をする所でした。全てのキャラクターを描くことに時間を使いすぎず、実際何が起きていたのかを描いています。私は、ストーリーそのものがキャラクターについて語るような、そんなストーリーを描きたいと思いました。キャラクターたちの人生にどんな大きな出来事などがあったかは分からない、ということに挑戦したかったんです。スタイルの観点でいうと、いつも70年代の映画から何かを得たいと思っていましたから。あの控えめで緩慢なトーンを取り戻し、皮肉っぽくて客観的なものではなく、事件を真面目に捉えたサスペンス映画で、非常にシリアスで感情を抑えた映画にしたかったのです。

──作品の舞台をミネソタにした理由は?

監督:アメリカ中西部の特徴は、広大な大地の中でとても小さな世界を築いていることだと思います。本作では、家々が点々と建ち人々は誰もが顔見知りという、典型的な米国の町が描かれています。そのような閉ざされた場所では、間違いを犯したときの罪悪感はひときわです。罪の意識は主人公にとって最も比重が大きい要素なんです。
 実際のミネソタという場所は、『ファーゴ』で描かれている世界がリアルで、刑務所も警察署も通りも家々も、とても綺麗なんですが、この映画では、薄汚れた感じを出しています。

──なぜ私たちは映画で恐怖を味わうことが好きなのでしょう?
『リグレッション』撮影中のアレハンドロ・アメナーバル監督とエマ・ワトソン

監督:過去に何作品かのホラー映画を作ってきたイーサンが、「この作品はホラー映画だけど、同時に自分の恐怖を乗り越えるところがこの映画の好きな部分です」と言ってたんです。
 私は、とても怖がりな子どもでした、悪霊も怖かった、もちろん、お化けも暗闇も死も。でもそれと同時に、そのようなストーリーが語られる映画を見ることが好きだった。多分、そういった映画を作ることが、多くの恐怖を追い払う方法だったのだと思います。つまり、私にとってこの作品はただ視聴者の注目を集めることや楽しませる何かではありません。私たちは常に何かを“言う”必要があります、映画を通して筋の通ったメッセージを。
 メッセージとは、怖さで見えなくなり、ちゃんと考えられなくなった時、本当の問題を解決するためにはねのけるべきものです。

(2018/09/14)


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アレハンドロ・アメナーバル
Alejandro Amenabar

1972年3月31日にチリで生まれ、スペインで育つ。短編映画の製作を経て、『テシス 次に私が殺される』(96年)で長編映画デビュー。ゴヤ賞で新人監督賞と脚本賞を受賞。続く『オープン・ユア・アイズ』(97年)も高い評価を得る。『海を飛ぶ夢』(04年)ではアカデミー外国語映画賞を受賞。その他の監督作に、『アザーズ』(01年)、『アレクサンドリア』(09年)がある。

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