ムビコレFacebookムビコレtwitterムビコレYoutubeムビコレニコニコ動画

映画・DVDの最新ニュース・予告編・動画は[ムビコレ]

『菊とギロチン』瀬々敬久監督インタビュー

どんどん締め付けがきつくなる世の中への危機感を骨太監督が吐露

『菊とギロチン』瀬々敬久監督インタビュー
人が良くて騙されやすい駄目な男たちへのシンパシー

『菊とギロチン』
2018年7月7日より全国順次公開
(C)2018『菊とギロチン』合同製作舎
大正末期、関東大震災直後の混沌の中、東京近郊にやって来た女相撲一座が、「格差のない平等な社会」を標榜するアナキスト・グループ「ギロチン社」と出会う。興味本位で見物に来た「ギロチン社」中心メンバー、中濱鐡と古田大次郎が女力士たちに共感、共に激動の時代を駆けていく情熱を描いた『菊とギロチン』。『64 –ロクヨン− 前編/後編』や『友罪』などを手がけた瀬々敬久監督が、20代の頃から構想を温め、ついに完成させた作品について語った。


──瀬々さんがギロチン社に興味を持たれたのは80年代半ばと聞きました。ちょうど日本がバブル景気に沸いていた頃で、なぜその時に?と思ったのですが。

監督:いや、バブルを味わってないんで。僕はピンク映画の助監督でしたから、逆に悪くなっていく一方。当時はアダルトビデオが台頭してきて、いわゆる成人映画は凋落の一途をたどる感じだったんです。状況はどんどん悪くなる、でも何かしたいという思いはあるわけです。その辺りでシンパシーがあったってとこだと思うんですけど。

──当時はちょうど、ギロチン社の中濱や古田と同じ年頃でしたね。

『菊とギロチン』撮影中の瀬々敬久監督
監督:そうです。まさにそうですね。(出身校である)京都大学に西部講堂という自主管理の空間があって、僕はそこで自主上映とかやっていたんです。上下関係なく、先輩も「さん」付けせずに全員呼び捨て。そういう雰囲気もギロチン社のアナーキズム的なところとよく似てましたね。

──『菊とギロチン』は1995年、ロッテルダム映画祭に企画を出したそうですが、当時の内容と実際今完成した映画との最大の違いは何でしょうか。

監督:95年当時のはもう少し牧歌的な青春映画っぽい話でした。ギロチン社の男性たちと女相撲の女性たちが出会って、最終的には権力と闘うという骨子は同じです。でも、3.11の震災以降にもう一回調べ直したんです。共謀罪とか特定秘密保護法とかができて、どんどん締め付けがきつくなる世の中になっていったので、戦前の流れとすごく似てると思うところもあった。そこで、大正から昭和の自警団について調べると、在郷軍人会が構成員をしていたというので、その組織についてさらに調べて。映画の舞台になる関東大震災後、東京には住む場所がなくて、中濱たちは千葉県の船橋に仮住まいするんですが、近くには習志野の陸軍駐屯地があった。そこで起きていたことについては証言が結構残っていて、映画の中で描きましたが、そこが震災以後に加えた部分です。
 今しかできない、今やるしかないという思いと、一番最初に映画を作りたいと思った時の気持ちですね。自主映画という形で、誰に頼まれるわけでなく、自分たちで作っていく。もう一回そこに立ち返って、そういう初期衝動で映画を作りたいと思ったんです。一方、そんなに小難しいこと考えて作るのではなく、エンターテインメントとしての青春映画という面を押し出しつつも、今の状況で必要とする内容であると思ったので、そこは無理してでも作ったところはあります。

──アナキストたちと女相撲の力士たちが出会って、互いに触発される物語ですが、女性映画でもあるという気がしました。強くなりたい、と行動する女性の強さに感銘を受けると同時に、この強さを描けるのはピンク映画の現場での経験があったからではないかと思いました。女性が体を張って戦っているという意味では、非常に近い世界だと感じます。

監督:それは大きいですね、やっぱり。主人公の花菊は、「女相撲なんかエロだろ」と言われると、「よしんばエロだって何が悪い」って答えるんですね。一般的に「それ、エロじゃないの?」というフィルターが掛かるわけですよ。ピンク映画には当然そういう目的もあるけど、そこに参加してる女優さんたちは、そこで自分たちの自己実現を果たしてるわけです。撮影の現場として、ものを作ることは楽しいし、すごく貧しくて予算がないとしても、同志的な雰囲気の中で自己実現ができる。エロスが売りだとしても、自分たちが得るものがある。その感じは女相撲の世界観とよく似てると思いますね。

──花菊役の木竜麻生さんと古田大次郎役の寛一郎さんは、誤解を恐れずに言わせてもらうと、俳優としてちょっと頼りなさがあって、巧すぎない。そこが役ととても合っていたと思います。この2人を選んだ理由は?

インタビュー中の瀬々敬久監督
監督:不器用そうだけど、自分を何とかしたいという思いが伝わったってことですかね。2人ともオーディションで選びましたが、そこが強いなと。木竜さんに関しては、ちょっと懐かしい昭和顔で、不器用さの中に強さを感じました。寛一郎に関しては、これが初めての出演で、芝居もできなかったけど、存在感とオーラはやっぱりあったんですよ。そこに賭けようと思いました。
 今回は一般の方から出資を募ったりカンパで資金集めをして作って、そういう思いの集結で作る映画だから、キャストに関しても経験とか有名とか関係ない部分から始めてみようという気持ちがありました。映画の作り方自体、方法自体が、もう既に表現である、そういう発想でした。

──この2人に対して、中濱を演じる東出昌大さんと十勝川役の韓英恵さんは、やっぱりすごくうまい。対比が効いています。

監督:生きることに慣れてるっていうか。韓さんは資金集めと出演者募集のホームページを見て、「この映画に出たいです」と自ら志願してきたんです。中濱役はオーディションしてもなかなかいい人がいない。そんな時に、韓さんと同様に自ら志願して出演が決まったのが山田真歩さん(小桜役)で、東出さんは山田さんと同じ事務所だったんです。台本を目にした事務所の方から、東出さんのスケジュールが空いている、と。彼自身がすごく歴史好きで、興味を持ってくれて。ラッキーなんです、ここに関しては。  それに東出さん自体が実はすごく男っぽい人なんです。そういう気質が中濱と合っていたと思います。あとカリスマ的なところもありますもんね。

──ただその中濱も含めて、この映画に出てくる男たちは、渋川清彦さん演じる女相撲の親方を除くと……

監督:だらしなくて駄目な人たちですね。

──アナキストたちも、ちょっとナイーブ過ぎるくらいで。

監督:だまされやすいっていうか、人が良いっていうか。

──その辺りにシンパシーを感じられたりもする?

監督:しますね、それは。やっぱ最終的に人が良いわけじゃないですか。人が良い分、すぐ他者に共感できる。女相撲の人たちにもすぐ共感するわけでしょ。それは今、大切なことだと思うんですよね。人に共感すること。それができない世の中になってきてるじゃないですか。いい加減だけど、人に共感して一緒に戦おうと思う。それが彼らなんです。それはすごく大切なことだと思います。

(2018/07/06)


【関連記事】



瀬々敬久
ぜぜ・たかひさ

1960年生まれ、大分県出身。京都大学哲学科在籍中より、8ミリ、16ミリなどで自主映画を製作。卒業後、獅子プロダクションに所属し、助監督に携わった後、1989年にピンク映画『課外授業 暴行』で監督デビュー。1997年『KOKKURI こっくりさん』で一般映画デビューし、以後はテレビドキュメンタリーなどにも活躍の場を広げる。 Gackt主演、HYDE出演の『MOON CHILD』(02年)、妻夫木聡主演の『感染列島』(09年)などを手がけ、4時間38分の長編『ヘヴンズ ストーリー』(10年)をインディーズ体勢で制作し、第61回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞とNETPAC(最優秀アジア映画)賞を受賞。日本国内でも芸術選奨文部科学大臣賞映画部門を受賞。『64 –ロクヨン− 前編』(16年)では第40回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。今年は生田斗真、瑛太主演の『友罪』(18年)も公開された。

MOVIE Collection