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『孤狼の血』役所広司インタビュー

癒着と紙一重、清濁併せのむギラギラ刑事役に圧倒される!

『孤狼の血』役所広司インタビュー
こういう映画は久しく見ていなかった

『孤狼の血』
2018年5月12日より全国公開
(C)2018「孤狼の血」製作委員会
暴力団対策法成立前の1988年の広島を舞台に、暴力団同士の激しい抗争と渦中で捜査に当たる刑事たちを描いた『孤狼の血』。『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督の下、役所広司が演じる主人公の刑事・大上章吾は組関係者との癒着を疑われるほど、深く内部に食い込んで捜査を続けている。劇中でははだけたシャツの胸にゴールドのネックレスが光るギラギラ感なのだが、取材陣の前に現れた役所は正統派のスーツ姿。物腰も口調も穏やかながら、語る言葉の端々からうかがえるのは、新しいものに挑み続ける情熱と日本映画界への思い。様々な角度から投げかけられる質問に一つひとつ答えてくれた。


──オファーが来た時の感想は? 柚月裕子さんの原作は読まれましたか?

役所:原作も読ませてもらいました。映画の脚本よりもっとハードボイルドで、かっこよかったですね。脚本の方はもうちょっと愛嬌があるキャラクターになってました。
「こういう映画、久しく見てないな。僕もこういう映画を随分やってなかったな」と思って、すごく興味がありました。白石監督の今までの作品を見ていましたが、非常に勢いのある監督です。初めてお会いした時も「元気のある日本映画を作りたいんです」とおっしゃって。ぜひ参加したいと思いました。

──大上は本当にかっこいいキャラクターです。
役所広司

役所:原作だと、かっこよすぎて、ちょっと照れるなって感じがあったんですけど。脚本は、監督の色を加えた大上だったので、非常に愛すべきというか、ちょっと身近な感じになった感じがしました。

──スクリーンに映る大上は、松坂桃李さん演じる新人刑事、日岡の目を通した、一面的とも言える姿ですが、それが次第に様々な面が見えてくるのが魅力です。大上を演じる上で、一番大事にされたことはどこになりますか。

役所:根っこは正義の味方だとは思うんですけれど(笑)、それは見せない。やっぱり悪いやつは悪い。やることは悪い、と曖昧にならないようにした方がいいかなと思ってやっていましたね。

──大上と日岡との関係が丁寧に描かれています。バディ感を出すために何か意識したことはありますか。

役所:いや、特には……。表現としては必要ないと思いましたけども、気持ちの上では「こいつが自分の後を引き継いでくれる男かもしれない」という。そういう気持ちは大切にしようと思って演じてましたね。
 日岡の正義感は青くはあるんですけども、彼の正義に対する思いは正しい。で、彼が自分を受け継いでくれる刑事かもしれないという思いはあったんじゃないでしょうか。

──そんな日岡を演じる……。

役所:松坂君。

──松坂さんはいかがでしたか?
役所広司

役所:松坂君とは前も仕事していました。今回は前半から後半にかけて、だんだん成長していく過程が非常に見事だと思いましたね。

──白石和彌監督と今回初めて仕事をしてみて、いかがでしたか。

役所:白石さんは「昭和の香りがする監督だと言われる」と自分で言っていましたけども。若松孝二監督の所で育ってるからでしょうか、確かに昭和の監督の雰囲気がありますよね。撮影現場に行って、芝居を見て、カットを割っていって。それで自分が「このカットが欲しい」「このカットが一番大切だ」というところに時間を掛けて粘って、テストを繰り返して、丁寧に撮る。
 撮影がデジタルになってから、たくさんの素材をいろんなアングルから撮るという監督が主流になってきていると思いますが、そういう意味では白石監督は必要なカットを、非常に丁寧に撮る監督だと思いましたね。

──無理に素材集めのように撮るというのではなく?

役所:そうですね。編集でどうこうしようではなくて、頭の中にしっかりとイメージがある監督だと思います。

──そういうスタイルの監督とのお仕事は久しぶりでしたか?
役所広司

役所:僕は意外とそういう監督多いんです。でも、どんどん少なくなってると思いますね。編集の段階でいかようにもできるようにするためには、素材がないと、という大人の事情はあるんでしょうけど。白石組のような現場は仕事が早いです。監督の決断と割り切りが早いと現場は平和で、皆が幸せです(笑)。

──白石監督は非常に差し込みの多い監督だと聞きますし、監督も自認されています。今回、印象的な指示や演出はありましたか?

役所:痰を吐くシーンですね。 シーンが3ヵ所ぐらいあったんですけど。「カァーッ!ってやってください」って(笑)。「ええ?!」って思いましたけど。監督の師匠である若松監督のイメージで、オマージュだったんじゃないでしょうか。僕はそれを後から聞きましたけど。映像の中で、痰を吐く(と音を再現して見せながら)っていうのは生まれて初めてでした。そういう人も少なくなりましたし、ある意味、昭和のアウトローを出すにはいいのかもしれないなって思いましたけど。

──非常に印象的なシーンは?

役所:ブタ小屋で撮ったシーンですね。竹野内(豊)君も、松坂君も、僕のシーンもそうですけど。ブタ小屋のシーンはせりふも意外と長いところもありましたし、結構、監督は粘ってました。それから、やっぱりラストに向けての展開ですね。勢いがあって。あとは台本読んだ時も爆笑しましたけど、石橋蓮司さんの最後のせりふですね。あれは楽しみにして見てください。

──クランクインの前に一番重点を置いたことは?

役所:方言ですね。呉弁です。クランクイン前から撮影中も、ずっとこれは練習してました。言葉から、何かそこの土地で育った人間が染みてくる感じがありましたし。今回は、(舞台となった呉原のモデルである)呉という町にスタッフもキャストも腰を据えてやりました。町から聞こえてくる言葉も呉弁ですし。そういうものを映画に生かせるように大切にしたいなって思いました。

──せりふがとても自然に聞こえましたが、体得の秘訣は?

役所:一言まちがっちゃうと、関西弁になっちゃいそうな不思議な言葉なんです。ですから、繰り返しですよね。それはもうできるだけ。台本にない言葉も、街中で聞いたり、呉弁の指導の方に「こういう時は何て言うんですか?」と聞いて。それをちょっとした、捨てぜりふじゃないですけど、使ってみる。それで何となく“呉”感が出るもので。本当に繰り返しやることでしょうね、言葉は。

(2018/05/10)


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役所広司
やくしょ・こうじ

1956年1月1日生まれ、長崎県出身。公務員を経て無名塾に入団。NHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』(55年)で出レビデビュー。『タンポポ』(85年)、『Shall we ダンス?』(96年)、『失楽園』(97年)、『THE 有頂天ホテル』(06年)、『バベル』(07年)、『渇き。』(14年)など多彩な映画に出演。『ガマの油』(09年)では監督にも挑戦。

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