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『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラ監督インタビュー

ガーリー映画の旗手が男と女のパワーバランス描く

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラ監督インタビュー
男女のパワーバランスは普遍的なテーマで、男女の間には永遠に解けないナゾがある

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
2018年2月23日より全国公開
(C)2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
ソフィア・コッポラ監督の最新作『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』は、19世紀、南北戦争さなかのアメリカを舞台にしたスリラーだ。

アメリカ南部にある世間から隔絶された女子寄宿学園に、ある日、負傷した兵士が運び込まれたことから展開。ハンサムで紳士的な敵兵をめぐり、女性たちの欲情と嫉妬がうずまくドラマが描かれていく。

1971年にドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演で『白い肌の異常な夜』として映画化された作品を、ソフィアが女性的な視点からとらえた作品だ。そんな本作に込めた思いを、ソフィア自身に語ってもらった。


──監督はこれまで、“女性の共同体”というテーマを多く描いてきましたね。例えば、『ヴァージン・スーサイズ』では姉妹という共同体、『マリー・アントワネット」』では宮廷という閉ざされた世界、そして『ブリングリング』では法を犯してしまう窃盗団などです。『ビガイルド』でも同じテーマを扱っています。

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
(C)2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
監督:そうね。私は集団内での人間関係というものにずっと興味があるの、特に女性同士のね。女性同士が接する時の機微ってすごく微妙じゃない? 男性はもっとはっきりしてるけど。
 このストーリーに惹かれたのは、女性のグループを扱っていて、さらに世間から切り離された女の子たちという意味で『ヴァージン・スーサイズ』を彷彿とさせるものがあったから。今まで幅広い年齢層の女性を扱ったことがなかったから、人生のステージが異なる女性同士の関わり合い方を描いてみたかった。実際この話の中でも、それぞれの女性の男との関わり方は千差万別よ。

──原作であるトーマス・カリナンの小説「The Beguiled」のことは、いつ知りましたか?

監督:友人でプロダクション・デザイナーのアン・ロスが映画版の『白い肌の異常な夜』のことを教えてくれたの。私は見たことはなかったけれど、評価の高い作品であることは知っていた。見終わった後、ストーリーがずっと心に残っていたわ。その異様さと予期せぬ展開がね。リメイク作品を作ろうとは思わなかったけど、興味が湧いたので原作小説を読んでみたの。
 それで、女性の視点からこのストーリーを伝え直してみたらどうかしらって思った。だからこの『ビガイルド』は再解釈と言えるわね。テーマ自体が奥深いでしょ。
 男女のパワーバランスは普遍的なテーマで、男女の間には永遠に解けないナゾがある。「彼、なんであんなこと言ったの?」って(笑)。

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』撮影中の様子
──原作の設定を変えることは考えましたか?

監督:「設定を変えてみたらどう?」って言われることもあったわ。でも私は南北戦争時代の南部の女性が、男性への接し方をどのように教え込まれたか興味があったの。優美で魅力的で、もてなし上手であることが重要視され、彼女たちの世界は男性中心に回っていた。そういう時代に男性たちが戦争に行き、自分たちだけで取り残された女性たちは、どのように生活し生き抜いたのかしら?って。

──では、本作はリメイクではなく、どちらかというと脚色と言えますね。以前にも脚色は経験済みだと思いますが。小説は男性の目線から語られているのですか?

監督:いいえ。著者は男性だけど、女性の視点から語られている。各章でそれぞれの女性が自分の話を語るスタイルで。

──小説を映画化するにあたり、変えた部分はどういったところですか?

監督:小説の中に大げさだと思う部分があったわ。この話自体かなり強烈だけど、それでもなるべく現実的で共感できるものにしたかったの。
 本の中では兵士はアイルランド人なの。コリン・ファレルに会って彼の自然なアイリッシュアクセントを聞いた時、マクバニーを女性たちにとってよりエキゾチックな存在にするために、これは使えるって思ったの。それから、本には、彼がお金をもらって別の男の代わりに従軍しているという言及があった。でも私は彼を魅力的な人物にしたかったの。明らかに悪い男じゃなくてね。女性たちが「彼のことを信じたい」と思えるような。コリンと会ってそういう考えが浮かんだのよ。

──本作の中の彼女たちとマクバニーを見ていると、希望とは言わないまでも、もしかしたら最悪の事態は避けられるのではないか、という気がしてきます。

監督:女性たちは希望を禁じ得ないの。特にキルステン・ダンスト演じるエドウィーナはね。
 マクバニーにとっては天国にたどり着いようなもの。女性たちが彼にかかりっきりで洋服まで着せてくれるんだもの。
 魅力的で、でもおそらく信じてしまったら痛い目に遭いそうな男っているでしょ? そういうことってみんなが経験したことのある、共感できる話だと思うわ。

──1971年の映画版では、アフリカ系アメリカ人のハリーが登場します。彼女の視点も取り上げることは考えましたか?

監督:『ビガイルド』には奴隷の役は登場させたくなかった。なぜなら奴隷の問題はひとつの大きなテーマで、さらっと触れるようなことはできないわ。この映画は戦時中に取り残された女性たちの話なの。

──先ほど強烈なストーリーだと言っていましたが、スリラー的なプロットは楽しめましたか?

監督:男が「ゲスト」兼「囚われの身」という点で、映画の「ミザリー」を思い出したわ。
 1990年の公開時に見に行って記憶の奥に残っていたのね。それでもこういうタイプのストーリーは初めてだったから、大変だけどやりがいもあったわ。自分の得意分野から飛び出して、自分なりのやり方で取り組んだけど、私は普段はさりげないものを好むから、自分を追い込む必要があったわ。プロットと美しく詩的な設定の両方がある。こういう組み合わせは初めてだったから楽しめたわね(笑)。

──あらゆることが形式的で、例えばお互いの呼び方ひとつ取っても、ミスを付けてファーストネームを呼ぶ。これは台詞をより叙情的にしていますね。

監督:そうね。後半に差しかかってくると、みんな本当はそれどころじゃないのに(笑)、うわべだけの淑女らしい上品な態度と世間話はやめないの。当時のエチケットは今でも南部に残っているのよ。すごく仰々しい形でね。

(2018/02/23)


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ソフィア・コッポラ
Sofia Coppola

1971年5月14日生まれ、アメリカのニューヨーク州出身。父は映画監督のフランシス・F・コッポラ。父の監督作『ゴッドファーザーPART III』(90年)などに女優として出演した後、『ヴァージン・スーサイズ』(99年)で長編監督デビュー。『ロスト・イン・トランスレーション』(03年)、『マリー・アントワネット』(06年)を監督し高い評価を得ている。『SOMEWHERE』(10年)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞。

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