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『スリー・ビルボード』マーティン・マクドノー監督インタビュー

「アメリカの今」を描いたイギリス人監督

『スリー・ビルボード』マーティン・マクドノー監督インタビュー
今までで最も悲しい映画

『スリー・ビルボード』
2018年2月1日より全国公開
(C)2017 Twentieth Century Fox
最愛の娘を殺された母親が、無能な警察に事件の解決を迫るために設置した3枚の巨大広告板。それに反発する警察と母親との人間模様を描き出した『スリー・ビルボード』が、日本でも公開された。

来月発表されるアカデミー賞で、主演のフランシス・マクドーマンドが主演醤油賞の大本命となっているほか、作品賞、脚本賞など全6部門にノミネートされている注目作だ。アメリカの今を描いた本作を監督したのは、イギリス人のマーティン・マクドノー。彼に、映画の見どころなどを語ってもらった。


──マクドノー監督はダーク・コメディに定評がありますが、『スリー・ビルボード』は今までで最もダークな作品でしょうか。
『スリー・ビルボード』撮影中の様子

監督:最も悲しい映画です。戯曲では同じくらいに悲しい作品がありますがそれとは違いがあります。主人公は女性ですし、娘に起きた事件はあまりに過酷です。そんな悲劇として物語は始まり、見る人は、これは笑いごとではないなと察知します。一方で、ところどころにユーモアがある悲劇にいつもなってしまいます。私の好みなのです。
 撮影中は誰もが映画のテーマに忠実でなくてはなりませんでした。笑いを撮ることが目的ではありません。悲劇がテーマです。特にフランシスの役柄に関しては、彼女の戦いを讃えることがテーマです。撮影自体は殺伐としたものでも、気が滅入るようなものでもありませんでした。その正反対です。最高に楽しい撮影でした。しかし、能天気なお笑いだけにならないようにといつも心がけていました。

──あなたは、役者を道具のようには扱わない監督ですが、どのように撮影を進めているのですか?

監督:私はその役者が好きで起用していますので、次々に入れ替わる大道具のように役者を扱うことはありえません。最高の役者に出てもらっていますから、いつも意見を出し合います。自分の考えを、私の場合は主に脚本に込めて役者に知ってもらい、あとは彼らの考えにまかせます。良い役者の邪魔にならないようにする、良い脚本を書く。それが監督の仕事の要点だと思います。

『スリー・ビルボード』撮影中の様子
──元々は舞台の戯曲を書かれていましたね。映画監督としてのほうが、やりたいことがやれるのでしょうか?

監督:はい、今回は特にそうでした。過去3作で一番楽しい撮影でした。なんといっても出資者の方々が自由に撮らせてくれたからです。ひとことの注文もありませんでした。こんなことは今までに一度もありませんでした。ですから、映画の重いテーマに反し、本当に楽に仕事ができました。撮影監督も前作と同じでしたし、メインの助監督も同じでした。この駆け出し3人組もスムーズに行った理由です。役者の方も、8人は(過去の監督作)『ヒットマンズ・レクイエム』、『セブン・サイコパス』または私の舞台に出演した方々です。このささやかなマクドナー組を大事にしながら今後も映画を撮っていきたいと思います。

──映画のタイトルに使われているミズーリ州エビングは架空の町で、あなたの戯曲の多くはアイルランドの地名から名前をとっていますね。

監督:どの作品でも、舞台は絶対に特長のある町にしようとしています。『スリー・ビルボード』ではぴったりくる小さな町を何年も探しました。看板がかかっている道路もイメージに合うまで探し続けました。撮影の2年も前からニューメキシコやコロラドの道路地図に目を光らせていました。「税金で有利なところにしぼりましょう。」ということになり、その結果、ミシシッピ、オハイオ、ノースカロライナを探しました。
 ノースカロライナにすごく良い小さな町を見つけました。完璧でした。いくつかのポイントがありました。脚本には2分の長回しシーンが良く出てきますので、それがかなう点がその町に決めた大きな理由でした。端から端まで歩けるくらいのメインストリートがあり、町役場への階段があり、向いには警察がある、そんな場所が欲しかったのです。視覚的な特徴があり、美しくて、訪ねて行きたくなるような所です。

『スリー・ビルボード』撮影中の様子
──フランシスが演じる主人公、ミルドレッドの家も見つけたそうですね。しかも看板が立つ道が見える場所に。

監督:最初はグリーンバックで合成しなくてはいけないかもと心配していました。道路が見つかり、今度はその道路を見下ろせる家を一軒ずつ訪ねて回りました。そしてついに見つけました。低所得層の家で、同時に見晴らしの良い場所でなくてはなりませんでした。そんな町があったのがノースカロライナのブラックマウンテンです。道路の行き止まりには大きな石切場もありました。スタッフは、見栄えが悪い、気味が悪いといやがりましたが私はすばらしいと思いました。とても印象的で、他にはない雰囲気を放っていました。寂しい道のそばの丘というだけでは出ない雰囲気です。

(2018/02/02)


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マーティン・マクドナー
Martin McDonagh

1970年3月26日生まれ、イギリスのロンドン出身。脚本家兼映画製作者。舞台の戯曲からキャリアをスタートし、「ウィー・トーマス」でローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作コメディ賞、「ピローマン」と「ハングメン」でローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作戯曲賞を受賞。04年、短編映画『Six Shooter』で映画監督デビュー、アカデミー賞最優秀実写版短編映画賞に輝き、一躍注目される。その後、脚本も担当した初長編映画『ヒットマンズ・レクイエム』(08・未)でアカデミー賞脚本賞にノミネートされ、英国アカデミー賞脚本賞を受賞。12年には、コリン・ファレル、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン共演の『セブン・サイコパス』の製作、監督、脚本を務める。その他、『ザ・ガード 〜西部の相棒〜』(11年・未)の製作総指揮、『ナショナル・シアター・ライヴ2017/ハングメン』(16年)の脚本を手掛ける。

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