『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ティム・バートン監督インタビュー

こんな映画、見たことない! 摩訶不思議な世界観で人々を魅了

#ティム・バートン

古い写真を基にして物語を作っていくという点に最も惹かれた

オリジナリティあふれる世界観で人々を魅了する映画監督、ティム・バートン。その最新作『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』が、2月3日より公開される。

舞台となるのは、美しく厳格な女性ミス・ペレグリンと子どもたちが暮らす謎めいた屋敷。その子どもたちは、空中浮遊能力を持った少女や透明人間の男の子、後頭部に鋭い歯を持つ女の子など、誰もがこの上なく奇妙だった。そんな彼らのもとに新たに加わったのが、孤独な少年ジェイク。彼は自らのある“力”に気づき、屋敷に迫る恐るべき脅威に立ち向かっていく……。

バートン史上、最も奇妙な本作について、監督自身に語ってもらった。

──大ベストセラーであるランサム・リッグスの小説を映画化した作品ですが、原作を初めてお読みになった時、写真についてはどのように理解されましたか?

ティム・バートン監督

監督:そこに魅かれたんだ。古い写真を基にして物語を作っていくというのが、最も気に入った点だったね。彼のコレクションほど大きくはないが、僕も写真を集めているんだ。写真にまつわるミステリー、詩的なところ、そして奇妙さといったもの、そこには物語があるけれどそれが何であるかはわからないというところが好きなんだ。それによって想像が膨らんでいき、それらについての自分なりの物語を作ることができる。それは本書の興味深いアプローチだと思ったね。

──原作はいつ頃読まれたのですか?

監督:2年ほど前のことだった。出版になった当時、誰かにこの本を送ってもらったんだ。この本についてはあまり知らなかったが、先入観がまったくなく、新鮮な目で見ることができたので、それは良かったと思っている。だから、出版後少し経ってはいたけれど、本が僕を発見してくれたのだと感じるね。ニューヨークタイムズの評に反応したからというわけではなく、原作に反応しただけだった。とてもポジティブな何かを感じた。外的影響がまったくないと、純粋に反応することができるものだ。

──映画化した経緯を教えて下さい。

監督:原作を基に(『キック・アス』『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』などの脚本家)ジェーン・ゴールドマンが脚本を書いたんだが、僕はこの素材がとても気に入ったので、手がけることにしたんだ。

──原作を知らないでこの素材を見た時、『X-MEN』を思い起こしましたが、似ているとは思いませんか?

監督:もちろんスーパーヒーローのジャンルはとても流行っているが、そういう風に始めたわけではない。本作は超能力についてというよりは、心の痛みについてであり、より人間版であると感じる。それぞれの子どもが独自の奇妙さを持っており、そこに僕は関心を持ったんだ。「僕たちは世界を救うぞ」というのではなく、「僕たちはこういう人間で、これが僕たちのやり方だ。何かの役に立てれば、もしくは何か問題を解決し、対処することができたら」というものだ。より地に足がついた人間レベルの話で、だからこそ僕は魅かれたんだよ。

自分の作品をダークだと思ったことはない
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
(C)2016 Twentieth Century Fox

──とてもダークな作品ですが、面白くもあります。

監督:僕はキャリアを始めてからこれまでずっと「ダーク過ぎる」と言われてきた。『バットマン』もダーク過ぎということで、今ではアイススケートのショーかなにかのように見えるね。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』もダーク過ぎると言われたが、今では3歳児がその歌を歌って、その子の犬もこの作品が好きなんだ。僕の手がけてきたものすべてがそうだったよ。自分では自分の作品の中でダークだと思っているものはないんだ。だから僕からすると、ある種の気味悪さはあるけどね……。僕としては、キャリアを始めて以来、自分の作品をダークだと思ったことはない。

──物語のなかで、時間がループしているというのが面白いと思いました。

監督:毎日が映画の中のループであるかの様に感じるよ。いや、それはともかく、それは不思議なコンセプトだね。これがこぢんまりとした僕たちの領域だという意識が強かったので、あまりテクニカルな側面にとらわれたくはなかったんだ。保護するという目的である1日を繰り返すというコンセプトは奇想天外だ。バーバンクのようなところで育つとよくそういう気持ちになるもので、まるで奇妙なバブルの中にいてタイムワープしているように思えるんだ。だから僕にとってはそれほど奇妙なことではなかった。

『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』
(C)2016 Twentieth Century Fox

──ミス・ペレグリンをエヴァ・グリーンが演じた理由は?

監督:彼女にはどこか不思議なところがあって、だからこの役にぴったりだと思ったんだ。昔の奇妙な映画に出てくるスターのようなミステリーが彼女にはある。彼女のことを知っているつもりでも、そうではないと思えるというのが気に入っているんだ。誰もがお互いのことを知っている現代の世界で、親しみがあると感じつつも実はその人のすべてを知っているわけではないというのは良いものだよ。彼女のそういうところがすばらしいと思うんだ。彼女自身も良いアイデアを持っているし、いかにも鳥になりそうに見えるということもあり、これは利点だったね。そういうところが彼女にはあるんだ。彼女とはそんな絆があり、この役にはぴったりだった。

──悪役にサミュエル・L・ジャクソンをキャスティングした理由を教えてください。

監督:サムは僕がずっと仕事をしたいと思い続けてきた人だったんだ。そういう俳優の1人だったんだよ。彼は様々な作品に出演してきた。僕は様々な役者が好きだが、彼は見飽きることが決してない俳優の一人だ。彼が出ている映画なら見たいと思うよ。本作に更なる要素をもたらしてくれ、見事に演じてくれた。彼がこれまでにやったことのないルックス、雰囲気を与えたんだ。「ずっと仕事をしたいと思い続けてきた役者」で彼に(達成済みの)チェックマークをつけることができる。可哀想なことに、彼は「また十字架にワイヤーで縛りつけても良いかな?」とか「今日は君を火あぶりにするけれど、そうやっている最中ずっと演技をしてもらうよ」などと言われてばかりだった。彼とはいつでも仕事をしたいよ。

ティム・バートン
ティム・バートン
Tim Burton

1958年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。ディズニーの特別奨学金でカリフォルニア芸術大学に入学、1979年にアニメーターとしてディズニーに入社する。短編アニメ『ヴィンセント』(82年)で監督デビューを果たした後に退社し、『ピーウィーの大冒険』(85年)で初めて長編映画の監督をつとめる。1989年、『バットマン』が世界的大ヒットを記録。続く『シザーハンズ』(90年)では広く女性ファンも獲得。その後も、『ビッグ・フィッシュ』(03年)、『チャーリーとチョコレート工場』(05年)、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(07)、『アリス・イン・ワンダーランド』(10年)などを監督。