『サウスポー』ジェイク・ギレンホール インタビュー

エミネム半生がモチーフのボクシング映画で圧巻演技!

#ジェイク・ジレンホール

負の感情と向き合って、父親になっていく

自ら招いたトラブルにより妻を亡くした元世界チャンピオンが、もがき苦しみながら、引き離された娘のために過去に決別し、再びリングに上がる姿を描いた感動のヒューマンドラマ『サウスポー』。ボクサーを主人公としながらも、栄光と挫折を行き来するラップ・スター、エミネムの半生をモチーフにした作品だ。

主演は演技派のジェイク・ギレンホール。6ヵ月に渡るトレーニングでボクサーの肉体になりきり圧巻のファイトシーンを見せてくれる。父と子の絆を描いた本作について、ギレンホールに語ってもらった。

──本作の見どころについて教えてください。

ギレンホール:『サウスポー』は、怒りを乗り越える男についての物語だ。そして父親になるということがどういうことなのかを描いている。僕が演じた主人公のビリーは、怒りによって日々を乗り越えていき、キャリアを築き、大成功して大金持ちになり、映画の冒頭では絶好調の人生を送っている。そんな男が、妻の死をきっかけに、責任を取ることを学んでいく話で、怒りが間接的に自分を破壊してしまうということに気がつく。その感情と向き合って、父親になっていくんだ。

『サウスポー』
Artwork (C)2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.

──出演を決めた理由はなんですか?

──ギレンホール:(『トレーニング デイ』の監督)アントワーン・フークアが監督をするということが、僕がこの作品に興味を持った理由だ。何年も前に彼に会ったとき、一番初めに言われたのは、「私にはあなたの中に、他の人が今まで見出したことないものが見える」ということだった。僕は社交辞令として受け流していた。でも、このプロジェクトで再会したとき、彼は本当にそう感じていたと僕に力説してくれたんだ。あんな才能を持った人が、他人に対してこんなに信じてくれると、自分自身では分からない、何かを見つけることができるんだ。
 彼の映画制作はとにかくものすごく力強くて、どこか暗い部分もあり、芯がある。だから皆好きなんだ。攻撃的で力がある一方で、彼はとてつもなく寛大な心を持っている。彼は僕にもそれを求めたし、僕の攻撃性を見たいと思って引き出した。自分に正直になれるのは、誰かを信頼しているときだけだ。僕に全てを差し出させたのは、監督の忍耐力、心、優しさだったんだ。彼の為だったら何でもするよ。

怒りの底には弱さがある。どこかに傷を負っているんだ
ジェイク・ギレンホール(左)と妻を演じたレイチェル・マクアダムス(右)

──役作りのためにハードなトレーニングをしたそうですね。

ギレンホール:6ヵ月間、監督と一緒に準備をした。プロのボクシング試合を何回も観戦して、1日2回トレーニングをした。 アントワーン監督はほとんど毎日、僕の1回目のトレーニングに来て、一緒にトレーニングをした。その後、僕は1日の終わりにまたジムに戻ってきて、自分だけでトレーニングをしたんだ。それは何かが作り出せるという希望、キャラクターが発展していくという確信だった。

──監督と一緒にトレーニングしたのですか?

ギレンホール:撮影を始めたころ、アントワーン監督とこの映画の主題は“犠牲になる”ということだと話し合った。ビリーがトレーニングをしている時もそうだし、最後に彼が成長する時もそうだ。だからアントワーンは僕の肉体的な訓練(ボクシングのトレーニング)にも一緒に参加すると決めたんだ。それは素晴らしいことだったよ。監督が自ら来て毎日僕を鼓舞してくれるんだ。

──あなたが演じたビリーに罵詈雑言を浴びせながら復活へと導くトレーナーのティックを、オスカー俳優のフォレスト・ウィテカーが演じていますね。

『サウスポー』
Artwork (C)2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.

ギレンホール:ビリーがティックに近づいていくという過程は、自分と向き合っていくという過程なんだ。 フォレスト・ウィテカーは物事を軽く考える役者ではないし、どんなことも恐れていないようにみえる。彼が参加してくれたのは最高だった。映画を見た人は全員、フォレストが画面に現れると“あること”が起こるんだ。予告編だけでも、みんなが振り向いて、「フォレスト・ウィテカーって最高だよね」って言うんだよ。「フォレスト・ウィテカーは素晴らしい!」って、分かるだろ? 彼のことは大好きだ。

──最後に、観客へのメッセージをお願いします。

ギレンホール:怒りの底には弱さがある。どこかにある種の傷を負っているんだ。ビリーはあるところでそれを見せる。彼は妻を亡くし、娘とも離れるという決して幸せとは言えない出来事に向き合い、そこから学ぶことができたんだ。それを経て本当の男となり、その結果、真の父親となることができたんだ。そして、僕はその考え方が好きだ。分かるだろ? 父親だろうが母親だろうが、自分の根底には何があるのか、何が自分を弱くさせているのか、何が自分を人間たらしめているのかと言うこと。一方で、全ての人は怪物を内に秘めている。内面にファイターがいるんだ。全ての人は“その為ならば戦う”という何かを持っている。何かを信じている時には全てのことが戦う理由になるんだ。自分の人生を信じて戦い続けるんだよ。

ジェイク・ジレンホール
ジェイク・ジレンホール
Jake Gyllenhaal

1980年12月19日生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州出身。父親は映画監督のスティーヴン・ギレンホール、母親はプロデューサー兼脚本家のナオミ・フォナー、姉は女優のマギー・ギレンホールという芸能一家に生まれる。11歳のときに『シティ・スリッカーズ』(92年)で俳優デビュー。カルト的なヒットを生んだリチャード・ケリー監督の青春映画『ドニー・ダーコ』(02年)で主人公を演じ注目を集める。名門コロンビア大学に進学したが、俳優業に専念するため2年で中退。主な出演作は『デイ・アフター・トゥモロー』(04年)、『ブロークバック・マウンテン』(05年)、『マイ・ブラザー』(09年)、『ラブ&ドラッグ』(11年)、『ナイトクローラー』(15年)など。