『不屈の男 アンブロークン』ジャック・オコンネル インタビュー

日本兵にいじめ抜かれる男役でアンジー監督の問題作に主演!

#ジャック・オコンネル

アンジーは、世代による価値観の違いも描きたかったんだと思う

第二次世界大戦中に日本軍捕虜となり、東京の大森捕虜収容所で地獄のような日々を生き抜いた男の姿を描いた『不屈の男 アンブロークン』。ハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーの監督作として話題を集める一方、“反日映画”として批判され、一度は公開さえあやぶまれた本作が、2月6日より日本公開される。

精神のバランスを欠いた収容所署長から残虐な仕打ちを受ける元オリンピック選手の主人公を演じたジャック・オコンネルが、作品について、そして監督としてのアンジーについて語った。

──日本では何かと物議をかもした作品でもありますが、主演を演じた感想をお聞かせください。

撮影中のアンジェリーナ・ジョリー監督

オコンネル:言葉にするのは難しいけど、とにかく(主人公である)ルイの物語に感動したんだ。自分のことは顧みず、無私無欲の境地になるってどういうことか、僕には想像することしかできないけどね。僕とルイの世代の大きな違いだ。

──世代の違いとは?

オコンネル:僕らの世代は優先順位をつけて行動するよう教わってきた。ところが1940年代は、優先順位なんて何の意味も持たない。アンジーは、世代による価値観の違いも描きたかったんだと思う。

絶体絶命の窮地に追い込まれた時、どうやって生き延びるかを描いた作品
『不屈の男 アンブロークン』
(C)2014 UNIVERSAL STUDIOS

──ルイはどんな人物だと思いますか?

オコンネル:彼は超人だよ。欠点が1つもない完璧な人間ってことじゃない。そこにまた親近感が湧くんだ。ルイは無私無欲の境地にたどり着く。というか余儀なくされる。八方ふさがりの状況で想像を絶することだよ。そして彼は生き延びるために戦うんだ。
 この映画は、絶体絶命の窮地に追い込まれた時、どうやって生き延びるかを描いた作品だ。

──本作はアンジェリーナ・ジョリーの監督作ですが、監督としてのアンジーについて教えてください。

オコンネル:アンジーは僕らの良き理解者で、撮影当初から僕らを対等に扱ってくれた。自然と尊敬の心が芽生えたし、彼女のためなら、もうひと踏ん張りしよう ― そんな気持ちになるんだ。また一緒に仕事ができる機会があれば、迷わず飛びつくね。
 ルイから学んだと、彼女が教えてくれた言葉が忘れられない。「朝目覚めた時に、自分のことしか考えられないような毎日は送りたくない」そう話してくれたよ。

──ルイをいじめ抜く捕虜収容所の看守・渡辺伍長を日本人ミュージシャンのMIYAVIが演じました。映画の出演はこれが初めてだそうですね。

オコンネル:共演シーンの撮影が始まった頃、説得力のある映像にしたくて、彼とはなるべく距離を置いていた。だけど、ある時ふと気づいたんだ。彼はこれが初めての映画出演だと。彼をリスペクトする気持ちが一気に高まったよ。

撮影中のアンジェリーナ・ジョリー監督

 渡辺伍長の演出は、アンジェリーナの手腕のたまものだ。彼女は、主人公と敵対する人物を孤立させるより、置かれた立場を理解し、行動の意味を説明することに精力を注いだんだ。
 悪人として描くほうが簡単なのに、あえて渡辺の感情を揺り動かし、心の闇の源を突き止めようとした。「戦争中は、アメリカ人も日本人もお互い殺し合った」。アンジェリーナは映画のなかでこう伝えてる。ジャッジを下す前に、戦争という特殊な状況を考慮に入れるべきなんだよ。これは僕自身が学んだ教訓でもある。ルイの味方である観客は当然、渡辺を嫌うだろう。だからこそアンジーは、あえてカリスマ性のあるMIYAVIを起用したんだ。

──本作への出演で得たことは何ですか?

オコンネル:この作品のおかげで、人間としても役者としても大きく成長したよ。今の僕はまだ可能性を模索している最中だけど、撮影の間は自分のことは顧みず、全身全霊で役に挑めた。ルイに不屈の精神をもたらしたのも、彼が自分を顧みず無私無欲でいたからだ。

ジャック・オコンネル
ジャック・オコンネル
Jack O'Connell

1990年8月1日生まれ。イギリス出身。イギリスの有名な演劇ワークショップ、ザ・テレビジョン・ワークショップで演技を学んだ後、05年に俳優デビュー。翌年『THIS IS ENGLAND』で映画デビュー。ドラマ『Skins』の第2シーズンでジェイムズ・クック役を演じ人気を博す。『名もなき塀の中の王』(13年)ではルパート・フレンドと共演し、英国インディペンデント賞最優秀男優賞にノミネートされた。また、『ベルファスト 71』(14年)に主演するなど、これからの活躍が期待される若手英国俳優の1人。