『アントマン』ポール・ラッド インタビュー

人生をやりなおすために「アリ」に変身!? ユニークな崖っぷちヒーローを直撃!

#ポール・ラッド

脚本も手がけたことで、キャラクターに対する洞察がずっと深くなった

ドア下の隙間から脱出し、羽蟻に乗って空中移動する体長1.5センチのアントマン。自分の体重の25倍もの重さを運べるアリをモチーフにした超小型ヒーローが活躍する『アントマン』は、ユニークでコミカルで楽しいアクション・エンターテインメントだ。

仕事を失い、別れた妻と暮らす最愛の娘の養育費も払えない崖っぷち男が、最愛の娘のヒーローになるために奮闘する姿が共感を誘う本作の主演をつとめたのは、『ナイト ミュージアム』『40歳の童貞男』などで知られるコメディ俳優ポール・ラッド。クールな“アイアンマン”とは対極にあるヒーローを演じたラッドに、本作について語ってもらった。

──とてもユニークなストーリーですね。

ラッド:元天才科学者ピムは、40年前、身体を縮小させ、超人的なパワーを得ることができるピム粒子を発見したんだけど、元助手のダレンは、この研究を継続し、その裏切りと野望が世界を危機に陥れようとする。でもピムは、ピム粒子は世の中にあるべきではないと考えている。だからこのテクノロジーを自分で守り、誰の目にも触れないよう隠していたんだ。これが別の人間の手にわたれば、大変なことになると知っていたからさ。
僕が演じるスコットは、そんなことは何も知らないし、ピムとも無関係だった。実はスコットは刑務所から出てきたばかりなんだ。大企業を相手に自分の持つ腕前を使ったせいでね。しかしピムはそんな彼に目を付ける。ピムはスコットがどういう人間なのかを見出し、観察し、スコットが自分の悪癖を使わざるを得ないような状況になるようなシナリオを作って彼を“はめる”んだ。スコットは、彼が唯一心から気にかけている娘の養育費のための資金を盗もうと、ピムの家に侵入する。実は、ピムはそのすべてをアレンジして影から糸を引いていて、スコットに(アントマンに変身できる)あのスーツを盗ませ、それについて少し知らせるようにする。その上でピムはスコットを自分の世界に導き入れ、このスーツの正しい使い方を教えるんだ。

『アントマン』 (C)Marvel 2015

──本作の共同脚本も担当していますね。

ラッド:脚本も手がけたお陰で得られたことの1つは、すべてのキャラクターに対する洞察がずっと深くなったことだね。キャラクターたちのモチベーション、ストーリーライン、そして、それぞれのキャラクターが下す決断が彼らにどのような影響をもたらせるのかを、僕はずっと考え続けていたからね。そのお陰で、この脚本にたずさわることになっていなかった以前よりも、ストーリーについて、ずっと包括的な知識を得られたんだ。

──脚本を書くことがこのキャラクターのリサーチにもつながったということですか?

ラッド:うん、このストーリーをもっと知ることができた気がしたよ。どのシーンを撮るにも、すぐに、かなり深く理解して飛び込むことができたね。それだけでなく、マーベルのやり方には「色々と違うことも全て試してみようじゃないか」という傾向があるから、ああいうタイプの基礎があるのは良いことだった。そのシーンの最初の見方を提示してくれるものとしてね。これと決まっているものは何一つない。あの脚本は僕ら全員が使う設計図になっていたけど、それは結局のところ、単なるスタートラインとして扱われることになるんだ。

マーベルの人間たちは皆、マッド・サイエンティストのような存在!
『アントマン』 (C)Marvel 2015

──本作はヒット連発のマーベル作品です。このことはプレッシャーでしたか?

ラッド:これまでの記録がすごいことは間違いないね。僕が今回分かったことの1つは、(プロデューサーの)ケヴィン・ファイギという人物は、マッド・サイエンティストのような存在だということ。それは僕が出会ったすべてのマーベルの人間に言えることだよ。しかも、とても楽しいんだ。彼ら自身がコミックブック・ファンで、自分たちがコミックブックのどういうところを好きなのか分かっているし、他のコミックブック・ファンたちがコミックブックのどういうところを好きなのかも心得ている。アクションや視覚効果というものを別にして、彼らは何よりもキャラクターやストーリーのことを心から大切にしているんだ。だからこそ、すべてが機能しているのではないかな。

──ピム役をマイケル・ダグラスが演じていますね。

ラッド:共演は興奮したよ。彼がこの映画に出たがっていると聞いてテンションが上がったよ。僕はこれまでのキャリアの中で、何人かの伝説的俳優たちと仕事をする機会に恵まれてきたけど、マイケル・ダグラスもそのカテゴリーに入る人物なんだ。彼のファンだから、彼に会えるというだけで興奮したね。実に多くの素晴らしい映画で、実に素晴らしい役を演じているからね。あの役柄に彼がつくと想像しただけで本当にエキサイティングだったんだ。

──“アントマン”になるための特訓をほどこすのは、ピムの娘でもあるホープです。ピムとの間に確執をいだきながらも父親に協力する設定です。

ラッド:演じているのはエヴァンジェリン・リリー。彼女は父親との間に難しい問題を抱えているんだ。彼女は、これまでの人生の中で、多くの怒りと落胆を味わっている。彼女はまた、驚くべき技能の持ち主なんだ。

『アントマン』 (C)Marvel 2015

──あなたの演じるスコット・ラングにホープがトレーニングをする場面がありますが、どうやら彼女は彼をぶちのめしているようですね。

ラッド:この映画には、スコット・ラングがアントマンになるために必要なことを学ぶトレーニングの場面があるんだ。彼がしなければならないことの1つは、格闘を学ぶこと。というわけで彼はとにかくホープに何度も繰り返しやられまくっているね。彼女はこの映画の登場人物の中で一番タフな人間だよ。スコットは彼女から戦うことを本当に学びとっているんだ。

──エヴァンジェリン・リリーと一緒に戦闘シーンを演じたのは楽しかったですか?

ラッド:エヴァンジェリンは、とにかく生まれながらの運動選手さ。多分、エヴァンジェリン自身も、あの映画で描かれているのと、さほど変わらないんじゃないかな。だけど、あれらのシーンを心から楽しめたのは、戦うのが楽しかったからなんだ。映画でそういうシーンを演じる機会は、僕にはほとんどなかったから、色々なトレーニングをやったことも、戦いの振付を覚えたことも、この手の仕事をしたことも最高だったね。

ポール・ラッド
ポール・ラッド
Paul Rudd

1969年4月6日、ニュージャージー州生まれ。カンザス大学で演劇を専攻、アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ卒業。コメディからシリアスな映画、舞台まで幅広く演じる。『クルーレス』(95年)、テレビシリーズ『フレンズ』(02年-04年)などに出演後、『40歳の童貞男』(05年)、『ナイト ミュージアム』(06年)、などコメディ作品で人気を博す。ほかに『幸せの始まりは』(10年)、『ウォールフラワー』(12年)などに出演。