『しあわせへのまわり道』パトリシア・クラークソン インタビュー

名女優が語る、インディペンデント系映画への熱い思いとは?

#パトリシア・クラークソン

この作品に何としても出演したかった

『死ぬまでにしたい10のこと』など女性の繊細な心理を見事に描く作風で、日本でも多くのファンを持つイザベル・コイシェ監督。その最新作が、ニューヨークを舞台に、ひとりの女性の人生の“再発進”をハートフルに綴った『しあわせへのまわり道』だ。

売れっ子書評家、ウェンディの順風満帆だった人生は、夫との別れを機にあっけなく崩壊してしまった。長年連れ添った夫が浮気相手のもとへと去ってしまってから、書物とパソコンにばかり向き合って結婚生活をおろそかにしてきた我が身を嘆くも、全ては後の祭り。そんななか、ひょんなことで知り合った親切なインド人のタクシー運転手ダルワーンに車の運転を習い始めたウェンディは、ダルワーンから人生を再出発させる勇気についても教えられるのだった……。

実話をもとに綴られたハートフルな珠玉作について、主演のパトリシア・クラークソンが語った。

──とても心温まる作品ですが、以前から出演を熱望されていたそうですね。

クラークソン:この作品が大好きなの。ウェンディとダルワーンの物語を以前から気に入ってたわ。すごく感動的な話で夢中になった。ずっと頭から離れなかったの。何としても出演したかったわ。

『しあわせへのまわり道』
(C) 2015,BPG Releasing,LLC.All Rights Reserved.

──ご自分の演じたウェンディの役柄について教えてください。。

クラークソン:私はニューヨーク育ちの中年女性の役よ。彼女はすごくタフで知性的でニューヨークで活躍してる書評家なの。結婚していて 一人娘もいるわ。高級な家で暮らしてるけど、ある日、人生が崩壊する。長年連れ添った夫に捨てられるの。そんな時、偶然にもある男性と運命的に出会う。その人は、ダルワーンという名前のすばらしい男性よ。彼女は車の運転をしないことが原因で娘とケンカしてしまう。手段も方法もそれから書類もあるんだけど、とにかく運転をしたがらない。でも、出会ったタクシー運転手に車の運転を教わり、友情を築くの。

──相手役となる親切なインド人のタクシー運転手ダルワーンを、名優ベン・キングズレーが演じていますね。イサベル・コイシェ監督の『エレジー』でも共演されていましたが、再共演の感想は?

クラークソン:とにかく彼が出演してくれたことに感謝ね。この作品に才能を注いでくれたわ。ダルワーンという人物を見事に表現してた。彼はまさにウェンディの救世主よ。偉大な心の持ち主である役柄を見事に演じきって見せたの。少しの苦労も感じさせずにね。そんな風に演じられる俳優は少ないけど、彼には才能があるの。

インディペンデント系の作品が大好き
『しあわせへのまわり道』
(C) 2015,BPG Releasing,LLC.All Rights Reserved.

──自動車運転のレッスンを通じて人生を再生させていく女性のお話ですが、ご自身は運転されますか?

クラークソン:今回は実際に運転しなきゃいけなかったから、感覚を取り戻す必要があった。でも姉妹や母は協力してくれなかった。クイーンズボロ橋を運転したときには、冗談でも何でもなく芸術と人生の融合を感じたわ。“さあ いくわよ”って何度も自分に言い聞かせた。怖かったけどやりきったわ。クイーンズボロ橋を完走したの。

──娘役のターシャを、メリル・ストリープの娘さんでもあるグレース・ガマーが演じていますね。

クラークソン:初めてグレースに会ったのはもう何年も前のことよ。彼女はいま29歳だけど、まだがかなり若かった頃にね。私はこう言ったの。「この映画を撮るなら、娘役はあなたがいい」ってね。

──『エレジー』でも組んだコイシェ監督に本作の企画をもちかけたのはあなただそうですね。
グレース・ガマー(左)とパトリシア・クラークソン(右)
『しあわせへのまわり道』
(C) 2015,BPG Releasing,LLC.All Rights Reserved.

クラークソン:イサベル(・コシェ)は並外れた才能を持つすばらしい女性よ。この作品の監督は彼女以外には考えられないわ。彼女と再び組めて心から感謝してるし、本当に幸運だと感じてるわ。彼女は大なるものと小なるもの、それに理性と感情を巧みに融合させることができる。彼女は美しい脚本を見事に映像化したわ。でも脚本というものは生きた形に変える作業が必要よ。単なる文字を生命力のある会話や歌にしたり、命を吹き込んで流動性を与えるのよ。彼女は毎日、情熱的にその作業と向き合ってる。それに彼女は、常にパワフルで影響力のある人物なの。この作品には欠かせない存在だわ。

──このような作品を映画化するためにはどのようなことが必要ですか?

クラークソン:インディペンデント系の作品が大好きなの。メジャー系も悪くないけど、独立系の作品には優秀な人材が多いわ。彼らは誠実で活気があり常に前向きなの。

パトリシア・クラークソン
パトリシア・クラークソン
Patricia Clarkson

1959年12月29日生まれ、ルイジアナ州ニューオーリンズ出身。イェール大学とフォーダム大学で演技を学んだのち、『アンタッチャブル』(87年)でケヴィン・コスナーが演じた主人公エリオット・ネスの妻キャサリン役で映画デビュー。以後、映画、テレビドラマ、舞台で活躍。『エデンより彼方に』(02年)では全米映画批評家協会賞とニューヨーク映画批評家協会賞の助演女優賞を受賞。『エイプリルの七面鳥』(03年)では全米映画批評家協会賞ほか数多くの助演女優賞を獲得し、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演女優賞にもノミネートされた。さらにテレビシリーズ『シックス・フィート・アンダー』(01年)では、2002年&2006年度にプライムタイム・エミー賞ゲスト女優賞(ドラマ・シリーズ部門)を受賞している。そのほかの主な出演作は『ダーティハリー5』(88年)、『ハイ・アート』(98年)、『グリーンマイル』(99年)、『グッドナイト&グッドラック』(05年)、『オール・ザ・キングスメン』(06年)、『ラースと、その彼女』(07年)、『それでも恋するバルセロナ』(08年)、『人生万歳!』(09年)、『シャッター アイランド』(09年)、『ザ・イースト』(13年)など。全米ヒット作『メイズ・ランナー』(14年)にも出演しており、今秋公開の続編『メイズ・ランナー/ザ・スコーチ・トライアルズ(原題)』(15年)にも出演。