『わたしに会うまでの1600キロ』ローラ・ダーン インタビュー

俳優一家に生まれた名女優が、苦境に負けない母の愛を熱演!

#ローラ・ダーン

彼女の力強さに心を動かされた

最愛の母の死に耐えられず、人生を破滅させていた女性。離婚を機に一から出直すことを誓った彼女は、アメリカ西海岸にある自然歩道パシフィック・クレスト・トレイルという過酷な1600キロを踏破するという旅に出かけるが……。

ニューヨーク・タイムズNo.1ベストセラーを映画化した『わたしに会うまでの1600キロ』は、『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレが監督し、オスカー女優リース・ウィザースプーンが製作・主演した感動作だ。本作でローラ・ダーンは、夫からの虐待や貧困といった過酷さのなかでも前向きさを失わないシングルマザーを演じている。主人公の心の支えとなる母を演じたダーンに、映画の見どころなどを語ってもらった。

『わたしに会うまでの1600キロ』
(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

──あなたの演じた役、ボビーについて教えてください。

ダーン:ボビーは原作者シェリルの母親で、彼女が一番愛していた人よ。電話でシェリルと初めて話した時、彼女は言ったわ。「監督はジャン=マルクで正解よ。母と子のラブストーリーを撮ると言ってくれたから」。それは彼女にとって物語の核なの。彼女がトレイルでの旅の中で乗り越えたことの1つに母親の死があったからよ。

──ボビーの人生についてどう思いますか?

ダーン:ボビーは人生を愛して、自分と子どもたちのために人生を見直し、生活を変えた。自分だけの魔法の世界を作って、そこに喜びを見出したのよ。彼女の力強さには心を動かされたわ。シェリルの思い出を通じて彼女を知り、演じることができて光栄だったわ。

リース・ウィザースプーンほど情熱的で失敗を恐れない人は珍しい
撮影中の様子

──そんなボビーの役を、どう演じましたか?

ダーン:まずは(主人公の)子ども時代、夫と共に暮らしていた頃の様子。彼と別れて、母親が子ども3人を育てた頃の様子。子どもが大学生になり、やがて大人になっていく様子。そして母親が病気になった時の様子。それらを追っていくことで、観客はシェリルの心に入っていけるはずよ。彼女の人生における様々な経験を、共に経験する感じね。現場での演技はやりがいがあったわ。

──主人公シェリルを演じたリース・ウィザースプーンについての感想を教えてください。

ダーン:彼女との共演はワクワクしたわ。リースはこの作品を製作して主役も演じたわけだけど、出版される前に、彼女はすでに原作を知って読んでいたの。リースは原作に出会って一晩で読み終え、映画化を決めたそうよ。それほどまでに情熱的で失敗を恐れない人は珍しいわ。普通、役者は仕事選びに慎重だからよ。製作も兼ねるとなればなおさら大変だわ。製作を進め、最適な監督を探さなきゃならない。でもリースはパートナーのブルーナとやり遂げた。原作はリースの情熱に訴えかけたのね。そして彼女も気づいた「今の私なら、この話を映画にして世に出せる」とね。

ジャン=マルク・ヴァレ監督(左)とローラ・ダーン(右)。撮影中の様子

──ブルース・ダーンが父、ダイアン・ラッドが母という演技派の両親のもとに生まれたわけですが、女優の仕事をどうとらえていますか?

ダーン:私はとても恵まれてたわ。私が役者になると決めたのは1970年代で、両親の撮影現場でなの。あの現場はジャン=マルクの撮影現場ととても似てたわ。ハル・アシュビーや(マーティン・)スコセッシの撮影現場はものすごく慌ただしくて、カメラが動き回ってたわ。監督自らカメラを回すこともあって、即興的な現場だったの。

ローラ・ダーン
ローラ・ダーン
Laura Dern

1967年2月10日生まれ、アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身。父親がブルース・ダーン、母親がダイアン・ラッドという俳優一家に生まれ、ハリウッドを代表する演技派女優の一人として高く評価されている。10年には、父母と共に、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムで史上初のファミリー・スター・セレモニーと、ハリウッド・レガシー・アワードを受賞する。最初に注目されたのは、デヴィッド・リンチ監督の『ブルーベルベット』(86年)。同監督の『ワイルド・アット・ハート』(90年)でも話題を集める。さらに『ランブリング・ローズ』(91年)で、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞にノミネートされる。続くスティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット作『ジュラシック・パーク』(93年)で全世界にその名を知られる。その他の出演作は、『パーフェクトワールド』(93年)、『Dr.Tと女たち』(00年)、『I am Sam アイ・アム・サム』(01年)、『インランド・エンパイア』(06)、『ザ・マスター』(12年)、『きっと、星のせいじゃない。』(14年)など。