『ベルファスト 71』ジャック・オコンネル インタビュー

プラダのモデルもつとめ女性に人気! 注目の英国人スター

#ジャック・オコンネル

プレッシャーがあったほうが頑張れる

1971年、北アイルランド問題に揺れるベルファスト。プロテスタント系住民とカトリック系住民との激しい衝突が続く危険な街に取り残されてしまった若き英国軍兵士の脱出劇を描いたサバイバル・スリラーが『ベルファスト 71』だ。

架空の物語ながらもリアリティ溢れる映像が緊張感を倍増させる本作で、主人公の新兵ゲイリーを演じたのはジャック・オコンネル。アンジェリーナ・ジョリーが監督した『Unbroken』(未公開)で主演に抜擢されたほか、『名もなき塀の王』(10月公開)にも主演し、BIFA(英国インディペンデント映画賞)主演男優賞にノミネートされるなど、映画界の注目を集めている。

プラダの2015年春夏コレクションの広告モデルにも選出され、女性からの人気も高いオコンネルに、『ベルファスト 71』について語ってもらった。

──ほとんど出ずっぱりの役ですが、出演に際してプレッシャーはありましたか?

オコンネル:そうだね。この映画の以前も『Starred Up』という作品で主演を務めたことはあるんだけど、ここまでタフなのは初めてだった。それに、まだ『Unbroken』を撮影する前だったしね。でも僕はプレッシャーを感じるのはまんざら嫌でもないんだ。その方が頑張れる。

『ベルファスト71』

──出演の経緯を教えてください。

オコンネル:脚本を読んでから、ロンドンで監督に直接会ったんだ。驚いたことに彼がとても気に入ってくれてね(笑)。その後、出資者やプロデューサーたちを納得させるために、スクリーンテストを受けた。それで正式にやることになった。

──ゲイリー役を演じるうえで、難しかったことは何ですか?

オコンネル:肉体的にハードだったこと。撮影は春に北イングランドでおこなわれたんだけど、その年は誰も予想しなかったぐらい暑かったんだ。この役は逃げたり追いかけたりと、走っている場面が多かったし、リハーサルを何度もやったから大変だった。いかに自分のスタミナをキープするかに気を配ったよ。映画では荒々しく即興的に見えるシーンも、カメラワークの準備も含めて何度もリハーサルしている。でも演じる側にとってはその方が良かった。

ひとりの兵士の絶望的な状況を通して、紛争のリアルを描いている
『ベルファスト71』

──父方の家系はアイリッシュ系だそうですね。北アイルランド問題について、どう感じていますか?

オコンネル:僕には半分アイリッシュの血が流れているだけに、北アイルランド問題はアイルランド人にとってとても切実な現実的問題だったのがよくわかる。とても複雑で特異な政治的状況だった。とくにこの映画が描く時代は、まだアイルランドが完璧に分断される前の、カオスのようなとても危険な状況だった。だからゲイリーのような状況に追い込まれる兵士がいてもおかしくはない。僕はゲイリーをできる限り、どこにでも居そうなふつうの兵士として演じた。わけもわからずある状況に追い込まれて、とにかくサバイブするために必至で逃げるという、いわば誰にとっても感情移入しやすいキャラクターだと思う。この映画の好きなところは、答えがないところだ。どちらかを非難するわけでも、結論を出すわけでもない。ひとりの兵士の絶望的な状況を通して、あの時代の紛争をリアルに身近なものとして描いているところなんだ。

──本作はヨーロッパで大きな話題となりました。さらに、その後の主演作『Unbroken』も注目を集め、今やあなたは期待の若手スターです。でも、とても地に足が付いて見えますね。

オコンネル:それは僕のバックグラウンドや性格が影響していると思う。僕はとてもリアリスティックな質でね。それにこう見えて早くからいろいろな経験をしてきた。僕の父は労働者階級の出身だ。2009年に亡くなったんだけど、鉄道会社に勤めていた。母も飛行機会社のオフィスワークをしていて、ふたりとも社交的で、さまざまな社会活動をしていた。その影響で僕も小さい頃からいろいろな人々に接してきた。決して裕福ではなかったけれど、両親は勉学を援助してくれた。その点で僕はとてもラッキーだったと思っている。障害を乗り越えるために闘うのは厭わない。オーディションで役を得るのは簡単ではないし、若ければ若いほど、多くのことを学ばなければならないのは当然だ。そのためには努力を惜しまない。それから、アンジェリーナからも多くのことを学んだ。彼女には虚栄というものがない。彼女の現場では誰もが平等なんだ。

──早くから俳優業に興味を持っていたそうですね。ブレイクするまでのことを教えてください。また、子ども時代についても教えてください。?
『ベルファスト71』

オコンネル:僕が15歳のとき、シェーン・メドウズが『This is England』でパーキー役に選んでくれたことが大きかった。少なくとも英国レベルでは、あの映画に出たおかげで少し注目されたと言えるかな。子ども時代は、サッカーが大好きだった父の影響で、僕もサッカーにはまっていた。肉体的にはその頃から鍛えられていたね(笑)。地元の学校ではなく、ちょっと離れたカトリック・スクールに通った。違う地域まで行けることは僕にとって特別なことで楽しかったよ。学校では、期間限定でプログラムを選ぶことができて、パフォーミング・アーツの科目があった。小さいときに演劇に目覚めていなかったら、問題児としてとっくに退学になっていたかもしれない(笑)。それから地元の劇団に参加して、みんなで他の都市にも巡業した。とても民主的でいろいろな人々が集まっていて、精神的に学ぶことが多かった。先輩には、サマンサ・モートンやヴィッキー・マクルーア(『This is England』)が居た。だから、彼女たちの世代の俳優からとても強い影響を受けている。キャリアのあり方や、役へのアプローチの仕方などに対してね。

──いま英国映画は才能のある若い監督を輩出していますね。シェーン・メドウズ(『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』)、スティーヴ・マックイーン(『それでも夜は明ける』)、そして本作のヤン・ドマンジュなど。今後どんな監督と仕事をしていきたいですか。

オコンネル:尊敬する監督はたくさんいるから、名前をあげるのが難しい(笑)。でもヤンやシェーンとは絶対にまた一緒に仕事をしたいと思うよ。

ジャック・オコンネル
ジャック・オコンネル
Jack O'Connell

1990年8月1日生まれ。イギリス出身。イギリスの有名な演劇ワークショップ、ザ・テレビジョン・ワークショップで演技を学んだ後、05年に俳優デビュー。翌年『THIS IS ENGLAND』で映画デビュー。ドラマ『Skins』の第2シーズンでジェイムズ・クック役を演じ人気を博す。『名もなき塀の中の王』(13年)ではルパート・フレンドと共演し、英国インディペンデント賞最優秀男優賞にノミネートされた。また、『ベルファスト 71』(14年)に主演するなど、これからの活躍が期待される若手英国俳優の1人。