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『あん』樹木希林インタビュー

河瀬監督と出会って、役者の原点に戻していただいた

『あん』樹木希林インタビュー
河瀬直美監督は、優しい顔でプレッシャーをかける
樹木希林
──今回は1年と長期間でもあるし、負担も大きいかと思いますが、それでもやろうと思われたのは?

樹木:いや、そんなに負担はないんです。今が一番忙しいんですけど、それは宣伝活動をしているから。いろんな人に会わなきゃならない今が一番忙しい(笑)。本来、私自身は作品の中での私でいたいわけです。「実はうちはね」なんて、そういう話は本当はしたくないんだけど、せざるを得ないことになっちゃう。だから、映画1本撮るだけならば、とても楽なスケジュールでいけるんです。

──とはいえ、間を置きながらの1年間の撮影だと、役で居続けるのも難しいですよね。

樹木:そりゃ忘れてますよ、撮影のない間は。だけど、河瀬さんという人が、忘れちゃいけないっていう圧力をかけるんです、優しい言葉で。優しい顔して、「そこに生きてたでしょう?」っていうような問いかけするからね。こっちもすっかり忘れてても、何か忘れてないような顔をして。

──河瀬さんとは、これが2度目にはなるんですよね。
『あん』
5月30日より全国公開

樹木:そうなんです。『朱花の月』で突然声かけていただいて、1日で済むということで、奈良に行きました。そのときに面白い人だな、と思いましたね。奈良という土地もあるんでしょうけど、ちょっと新鮮な感じがして。だから「今度、映画を撮りましょう」と話して、1年か2年くらい経ってから(本の)「あん」が送られてきて。「これは、あなたを想定しています」なんてドリアンさんが書いてきて、それで「へえ?」となって、河瀬さんも、「もうそろそろ入りますか?」と言ってきて。

──原作、脚本を読まれて、どう思われましたか?

樹木:徳江さんには、難病ものにありがちな必死な感じっていうのはなかったですね。とても普通の人。

──徳江さんという人が、許し難い状況に置かれ、深い絶望も味わってきたにも関わらず、全てに対して肯定的であるところに驚かされました。

樹木:実際にモデルになったような人たちに会うと、いろいろ過酷なはずなのに、むしろ向こうが元気良くて、「あんた、頑張んなよ」って励まされるの。それは、全て背負いながら日々生活してたら、苦しくて、とんでもなくなっちゃうから。それぞれ、自分なりの“抜け方”を手にして生活をしているんだと思います。実際に会うと、職員に文句言ったり、いい人じゃない部分を平気で出してるし、だから、(普通の人と)全く同じだなと思いました。。

──樹木さんご自身も、がんを患っていらっしゃいました。

樹木:治ってるかどうか、分からないの。全身がんっていう病名だから。でもね、それを追いかけていったら、くたびれちゃうから、追いかけない。そういう生活なのね。年中、病院行って血液検査して、腫瘍マーカーが出たとか何とか。そんなことはしてられないと私は思うからね。私の病気との対峙の仕方です(笑)。

──それは徳江さんたちとの生き方に通じていますね。

樹木:そう、そうしなきゃ生きられないのよ。

──悲劇のヒロインぶらない徳江さんは魅力的だし、樹木さんのお話を聞いても、それが大事なことだと思います。

樹木:私の場合、相談したら、された方が困るのが分かるから。別に言わなくてもいいか、っていう感覚です。それが徳江さんみたいなのかもしれない。すっと分かるんですよ。分かるというか、私なりの徳江さんのつかみ方。普通に皮肉も言うし、ちょっと意地悪をするような感覚(笑)。病気を持った人の人生を感じることはできないけども、ただ、寄り添うことくらいはできるかな、と思うの。過酷なものを背負ってる人の思いを私自身が引き受けてあげることはできない。絶対できない。でも、そばに寄り添うことはできる。そんなふうにして、演じてきましたね。

(2018/09/22)


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樹木希林
きき・きりん

1943年1月15日生まれ、東京都出身。1961年に文学座に入り、「悠木千帆」名義で女優活動を始める。1964年に森繁久彌主演のテレビドラマ『七人の孫』にレギュラー出演し、人気を博す。20代から老け役を演じ、テレビドラマ『寺内貫太郎一家』(74年)の貫太郎の母役は大反響を呼んだ。映画にも幅広いジャンルの作品に出演し、近年は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07年)、『わが母の記』(11年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、『悪人』(10年)で同最優秀助演女優賞を受賞。その他、『歩いても 歩いても』(08年)、『ツナグ』(12年)、『そして父になる』(13年)、『駆込み女と駆出し男』(15年)、『海街diary』(15年)などに出演

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