『トレヴィの泉で二度目の恋を』マイケル・ラドフォード監督インタビュー

シニア向けのラブストーリーを! 村上春樹とも親交のある英国人名匠の主張とは?

#Michael Radford

シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマーは真逆のタイプ

英国アカデミー賞外国語映画賞を受賞するなど、高い評価を得た感動作『イル・ポスティーノ』(94年)や『ヴェニスの商人』(04年)など、安定感のある仕事ぶりで知られるイギリスの名匠マイケル・ラドフォード監督。

最新作『トレヴィの泉で二度目の恋を』では、名女優シャーリー・マクレーンと名優クリストファー・プラマーをキャストに迎え、いくつになっても人生を輝かせていくことの素晴らしさを描き出す。

珠玉のハートフルムービーを紡ぎ出したラドフォード監督に、名優たちとの仕事や作品に込めた思い、村上春樹との親交について語ってもらった。

──シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマーという名優たちとお仕事した感想をお聞かせください。

監督:2人のカリスマ性はすごかったよ! でも、俳優としては真逆のタイプだね。シャーリーはとてもタフな女性だよ。映画では、柔らかさのようなものを醸し出して欲しいと伝えた。彼女とはケンカや口論もしたけれど、真剣に役に向き合ってくれた。シャーリーは映画スターならではのカリスマ性やスター性があって、直観的、本能的に演じてくれた。クリストファーは、とても才能ある俳優だ。それにとても若いし、若い女性にモテるんだ! 撮影中、2人の間にはケミストリーがあった。とても運が良かったよ。

──本作はスペイン・アルゼンチン映画の『Elsa y Fred(原題)』(05年)のリメイクですね。

監督:オリジナル作品はとても人間的でユーモアがあり感動的だった。センチメンタルなとこも良かったね。ユーモア、ロマンス、感動を伝えられると思ったからリメイクに取り組んだんだけど、リメイクはとても難しかったよ。正直、もうリメイクはしたくないな。でも、自分の気に入っている部分はキープした。原作は南米ではヒットしたのに世界的にはダメだった、その理由について考え、オリジナルに比べフレッド(クリストファー・プラマー)のキャラクターを掘り下げた。それから、自分なりにユーモアを付け加えたんだ。

『トレヴィの泉で二度目の恋を』でのシャーリー・マクレーン(右) (C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC

──フェリーニ監督の『甘い生活』が物語のモチーフになっていますが、その主演だったアニタ・エクバーグが1月11日に亡くなりましたね。

監督:彼女の死はロンドンのテレビで知ったよ。ローマのホスピスで亡くなったと聞いた。会ったことはなかったけれど、とても悲しい。撮影中も、ホスピスにいると知っていて悲しかった。シャーリー・マクレーンが(『甘い生活』にも出てくる)トレヴィの泉でコスプレするシーンは、シャーリー自身の提案だったんだ。

英米ではシニアの恋を描いた映画が増えている
『トレヴィの泉で二度目の恋を』でのクリストファー・プラマー (C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC

──本作は、シニアに向けて作った映画なのですか?

監督:時間もお金もあるから、今は世界的にシニア向けの作品が増えている。彼ら向きな作品があってもいいんじゃないかと思ってね!

──でも、日本にはシニア向けの恋愛映画はほとんどありません。

監督:それはものすごく残念だな。アメリカ、イギリスではシニアの恋を描いた映画が増えているんだよ。

──では、若い人はこの映画を見てなんと言いますか?

監督:若い人のリアクションも良いんだよ。映画を見てくれた若いカップルが、実際にトレヴィの泉に行ったと教えてくれたしね。恋する気持ちはいくつになっても変わらない。人生は常にサプライズなんだ。この作品は、リアルなラブストーリーなんだ。年を重ねたら人生楽しくないというのは違う。それを伝えたい。年齢を重ねても恋をするってことを見てもらえたらいいよね。

──日本人作家の村上春樹さんと交流があるそうですね。

監督:彼とは(以前から)親交があり、「国境の南、太陽の西」の映画化の話もあったんだ。彼は「アメリカで撮ってくれ」と言ったが、僕は日本的な映画で日本的なフィーリングがあると思ったんだ。でも、この映画化はいろいろあって実現はしなかったんだ。
僕は日本の小説も文化も好きだよ。吉本バナナも好きだし、いい本があれば映画化したいと思っている。それから、黒澤明、溝口健二、小津安二郎、大島渚などの監督作も好きだ。それに、宮崎駿監督の作品も好きなんだ。ただ、最近のものよりは昔の作品が好きなんだ。でも残念なことに、欧米では日本映画の公開本数は減っているんだ。

Michael Radford
Michael Radford
マイケル・ラドフォード

1946年2月24日生まれ、インド・ニューデリー出身。オックスフォード大学で学び、数年間教師をした後ナショナル・フィルム・スクールに入学。1976年から1982年までBBCの多数のドキュメンタリー・フィルムを制作。83年『Another Time, Another Place』で長編映画デビュー。94年に『イル・ポスティーノ』でアカデミー賞作品賞、監督賞を含む5部門にノミネートされた他、世界各国の映画賞を受賞。その他、アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズら豪華キャストでシェイクスピアの戯曲を映画化した『ヴェニスの商人』(04年)、デミ・ムーア、マイケル・ケイン共演のサスペンス『ダイヤモンド・ラッシュ』(07年/未)、フランスの天才ジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニの数奇な人生とその功績を描いた音楽ドキュメンタリー『情熱のピアニズム』(11年)などを監督。00年には舞台「7年目の浮気」の演出も手がけた。現在、パキスタンを舞台にした新作『Shadow of the Crescent Moon』が予定されている。

Michael Radford
トレヴィの泉で二度目の恋を
2015年1月31日より公開
[監督・脚本]マイケル・ラドフォード
[脚本]アンナ・パビニャーノ
[出演]シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジャレッド・ギルマン、クリス・ノース
[DATA]2014年/アメリカ/97分/アルバトロス・フィルム

(C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC