シャーリー・マクレーン『トレヴィの泉で二度目の恋を』インタビュー

女優デビューから60周年を迎えた名女優が、黄昏時の恋について吐露

#Shirley MacLaine

女優をやればやるほど外見を気にしなくなったわ。もう鏡なんか全然見ないし

シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマー、2大アカデミー賞俳優が共演した『トレヴィの泉で二度目の恋を』は、人生の黄昏時にさしかかった男女が出会い、恋に落ちる素晴らしい瞬間を描き出した大人のためのラブストーリーだ。

長年連れ添った妻を亡くし生きる気力を失ったフレッド(クリストファー・プラマー)と、そのお隣さんとなったちょっと風変わりなエルサ(シャーリー・マクレーン)。2人のチャーミングな恋模様、やがて訪れる切ない展開……。フェリーニ監督の名画『甘い生活』にオマージュを捧げた本作について、名女優マクレーンに話を聞いた。

──今年はあなたにとって、女優になって60周年という節目の年に当たります。このことについて、どう感じていらっしゃいますか?

シャーリー・マクレーン(以下、マクレーン):私にとっては、別に意味はないわね(笑)。振り返って、ああ私はなんてワンダフルでエキサイティングな60年を生きたんでしょう!なんて思ったりはしないわよ。だって、私は、いつも、今の瞬間を生きているから。私は、1日1日を生きていくだけ。過去や未来に心をとらわれることなくね。ただ、今を生きるの。

──80歳の今も現役で活躍されていますが、今も仕事への情熱を持ち続けていますか?

マクレーン:私は撮影現場が好き。撮影現場独特の、親密な雰囲気が好きなの。現場でいろいろ工夫を凝らすのも、ほかの俳優たちとコラボレーションするのも。早起きは嫌いだけどね(笑)。ほかに、やることを思いつかないの……と言うか、ほかに、ここまでの興味をもてることがないのよ。旅は好きだけど、今の世の中は、テロリズムやセキュリティのせいで、旅するのが楽ではなくなっちゃったし。人間の本性を探索することほど、楽しいことはないのよ。演技を通して、私はそれをやるの。

『トレヴィの泉で二度目の恋を』 (C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC

──長年、女優を続けてきて変化したことは?

マクレーン:やればやるほど、外見を気にしなくなったわね。もう鏡なんか全然見ないし、自分がスクリーンでどう見えるかなんて、気にしない。今の私は、自分の人生に、もっと心地良さを感じているの。それは、ものすごくハッピーだというわけじゃない。でも、決して落ち込むことはない。いつも、心地良いところにいるの。

──日本に住んだことがあるんですよね?

マクレーン:そうよ。いつだったかよく覚えていないんだけど、17年くらい行き来したかしら。夫が仕事で日本に行っていたの。日本人は面子を保つことをすごく重視するわね。あと、みんなすごく親切だった。それに、日本人は食べ物に舌が肥えているわね。スピリチュアリティに関して心がオープンだとも思ったわ。仏教に限らず、あらゆるフィロソフィーに関心を持っている。

──あなたは仏教徒だとお聞きしましたが、何がきっかけで仏教に関心を持ったのですか?

マクレーン:11歳くらいの頃からかしら。私たちはなぜ生きるのか。神とはどんな存在なのか。死後の人生はあるのか。この前の人生はあったのか。輪廻転生はあるのか。宇宙には我々以外の命も存在するのか。そういったことに興味を持って、私は、一生かけてそれらを探索してきたの。

もう一度、ものすごくドラマチックな役をやりたいわ
──そういった探求は、ハリウッドで生き抜く上で手助けになりましたか?

マクレーン:もちろんよ。キャリアだけじゃなくて人生すべてにおいて手助けになった。カルマを軽く考えてはいけないのよ。原因があるからこそ、結果がある。だから正直に、率直に生きなければいけないの。ありのままの自分にウソをつかないことが大切。

『トレヴィの泉で二度目の恋を』 (C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC

──長年セレブリティであり続けましたが、そのことで自分の人格に影響があるのではと不安を感じたことはありますか?

マクレーン:それはないわ。私はすぐ外に逃げるから。飛行機に乗って、すぐどこかに行くの。いつもそうしてきた。ひとりでどこかに行って、危険でもなんでも、自分で体験して学ぶの。私は、自分自身の人格を守り続けることにおいてはエキスパートよ。

──本作であなたが演じたエルサという女性はとても変わったキャラクターです。特に映画の前半ではとらえどころのない印象がありますね。

マクレーン:そう、彼女が死を目の前にしているとわかるまではね。そこでようやく観客は、彼女を理解できる。彼女はウソをつくことで、楽しんでいるの。彼女は、人生を娯楽と考えている。だからああいうさまざまなことをやるのよ。そういう女性を演じるのは、難しかったわ。彼女が病気であるという事実を、映画のどの段階で監督が出してくるのか、わからなかったから。

───年をとってから再び恋をするというコンセプトをどう思いますか?

マクレーン:すごく素敵なことだと思うわ。私自身はロマンチックなタイプではないけれど、このふたりは、ロマンチックな意味でお互いと結びつく方法を見つけたのよ。彼女は、彼の固い殻を割ってみせる。彼は彼女のことを信頼していないのに、それでも自分が彼女に惹かれていくことを許すの。彼女のそばにいるのは楽しいから。

──相手役のクリストファー・プラマーについて教えてください。
『トレヴィの泉で二度目の恋を』 (C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC

マクレーン:私たちの関係は最高よ。撮影が終わった後、毎晩私たちは一緒にディナーを楽しんだわ。ニューオーリンズの美味しいお料理を楽しみながら、ペットのこととか、いろいろなことについておしゃべりをしたの。彼の妻が来たときは、3人で食事をしたわ。前に、私たちはアッテンボローが監督した映画をロンドンで撮影しているので、お互いのことはよく知っていた。それに、彼の一人芝居も見た。あなたは見た? あんなにすごいものはほかにないわよ。

──出演作をどうやって選んでいるのですか?

マクレーン:リアリティ番組のような空っぽのものをやることに興味はないわ。何かを感じさせるものをやりたい。必ずしも完全に現実に根付いている必要はないけれども、どこかにリアリティのあるもの。脚本が良く書けていることは大前提よ。そこに書かれていないものを表現することはできないわ。

──これからやってみたいことはありますか?

マクレーン:もう一度、ものすごくドラマチックな役をやりたいわ。それに、年寄りについての映画を作り続ける年寄り女優であり続けたい。私は計画を立てない人だけど、もしひとつ計画があるとしたら、それね。

Shirley MacLaine
Shirley MacLaine
シャーリー・マクレーン

1934年4月24日生まれ、アメリカのバージニア州出身。俳優のウォーレン・ベイティは弟、サチ・パーカーは娘。映画デビューはアルフレッド・ヒッチコック監督『ハリーの災難』(55年)。その後、『アパートの鍵貸します』(60年)、『あなただけ今晩は』(63年)、『愛と喝采の日々』(77年)など作品に出演し、『愛と追憶の日々』(83年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞。近年の出演作に、キャメロン・ディアスと共演した『イン・ハー・シューズ』(05年)、ココ・シャネルの後半生を演じた『ココ・シャネル』(08年)、『バレンタインデー』(10年)、『バーニー/みんなが愛した殺人者』(11年)、『LIFE!』(13年)などがある。女優業の他に監督や作家としての顔も持ち、1983年に自身の神秘体験を基に出版した「アウト・オン・ア・リム」は世界的なベストセラーとなった。

Shirley MacLaine
トレヴィの泉で二度目の恋を
2015年1月31日より公開
[監督・脚本]マイケル・ラドフォード
[脚本]アンナ・パビニャーノ
[出演]シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジャレッド・ギルマン、クリス・ノース
[DATA]2014年/アメリカ/97分/アルバトロス・フィルム

(C) 2014 CUATRO PLUS FILMS, LLC