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『デッド・ドント・ダイ』ジム・ジャームッシュ監督インタビュー

インディペンデント巨匠の最新作は、まさかのゾンビ映画!

『デッド・ドント・ダイ』ジム・ジャームッシュ監督インタビュー
いまの人々は、まるでゾンビのようだと感じる

『デッド・ドント・ダイ』
2020年6月5日より全国公開
(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved. 
世界中の映画ファンから愛され続ける鬼才ジム・ジャームッシュ。3年振りとなる待望の新作『デッド・ドント・ダイ』では、ゾンビ・コメディに挑んでいる。第72回カンヌ国際映画祭のオープニング作品として初披露された際には、多くの観客を熱狂させ、大きな話題を呼んだ。

今回、ジム・ジャームッシュの元に集結したのは、名優ビル・マーレイをはじめ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニーなど、いずれも主役級の豪華俳優陣。そんな彼らが繰り広げる予想を超えた熱演も、本作では見逃せない。そこで、ジム・ジャームッシュ監督に作品への想い、そしていまの心境を聞いた。


──以前、通りを行き交う人々が携帯を見入っている様子を見て、「まるでゾンビが歩いているようだ」と感じたことがあるそうですが、この映画は、監督が日頃から目にしている光景から思いついたのでしょうか?

監督:そうとも言えるけど、付け加えるなら、僕にはいまの人々の振る舞いというものが、よりゾンビ化しているという印象があるんだ。みんなが自分のことしか考えられなくなっているような生き方をしていて、結果的にそれが世界を破滅に追いやっているのに、多くの人が無関心。つまり、僕らの周りにはそういうゾンビみたいな人間が増えているということなんだよ。スマホやコンピューターの中毒も同じことだよね。

──本作はコメディでありながら、とてもメランコリックです。特に結末は悲観的と言えなくもないですが、これはいまの監督自身の心境の表れなのでしょうか?

監督:確かにダークな内容だけど、僕としてはコメディだと思っているし、希望がないわけではない。なかには前向きなキャラクターもいて、町の人々がみんな悪人というわけではないからね。ゾンビというのは、お互いへの思いやりや意識が欠落していることのメタファーでもあるんだ。でも、観客にこの映画を諦観的には受けとって欲しくはないと思っているよ。実際、僕自身もそうは捉えていないから。

──ゾンビ映画といえば、数々の傑作を生みだしたジョージ・A・ロメロの名前が挙げられますが、どのような印象を持っていますか? 

監督:ロメロのことはもちろん、ポストモダンなゾンビ映画を作った神さまとして、とても尊敬しているよ。だから、この映画のなかにもたくさんの引用を入れたんだ。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を観て以来、どんなゾンビ映画もその影響を彷彿とさせるよね。彼の偉大な点は、ゾンビすなわちモンスターのアイディアを変えたこと。たとえば、ゴジラやフランケンシュタインのような映画では、モンスターは人間社会の外側から来た脅威だった。でも、ロメロのゾンビは、僕らの腐敗した社会から生まれ、彼ら自身も犠牲者である。そこがとても興味深いんだ。さらにゾンビ特有の“無様さ”も効果的に用いられていて、それは多いに参考になったよ。

──そういう意味では、大きな影響を受けているんですね。

『デッド・ドント・ダイ』撮影中の様子
監督:ただ、個人的な好みで言うと、僕自身はゾンビよりもヴァンパイアの方が好きなんだ。なぜなら、子供の頃にユニヴァーサルのモンスター映画やドラキュラ映画をたくさん観て育ち、影響を受けているから。だから、ジョン・カーペンターやサム・ライミといったコンテンポラリーな監督からマリオ・バーヴァやダリオ・アルジェントのようなヨーロッパの監督まで、ホラーには好きな監督はたくさんいるよ。とはいえ、ホラーが僕のもっとも好きな領域というわけじゃなくて、僕はいろいろなタイプの作品から多くの影響を受けているんだけどね。

──確かに、前作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』も、ヴァンパイア映画というジャンルに収まることのない、さまざまな要素を持った作品でしたね。

監督:僕にとってジャンル映画への興味というのは、ピクチャー・フレームとしてのもの。フレームはいわばガイドであり、そのフレームのなかで自分なりのペインティングができると考えているんだ。『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』は、フレームはヴァンパイア映画だけど、実はラブストーリー。1995年の『デッドマン』の場合もウエスタンという枠組みを持ちながら、中身は伝統的な西部劇とは異なっているからね。ただ、こういうことを分析的に考えているわけではなく、僕自身はただ自分の好みや直感に従っているだけなんだ。

──キャスティングについても伺いますが、ティルダ・スウィントン、アダム・ドライバー、ビル・マーレイ、イギー・ポップ、トム・ウェイツなど、監督の作品では常連の俳優たちがたくさん登場します。脚本は当て書きですか?

『デッド・ドント・ダイ』撮影中の様子
監督:そうだよ。でも、最終的には出来上がった脚本を送ってから、みんなの返事をもらっているけどね。たとえば、ティルダに「これまで演じたことがないような役柄で、アメリカの小さな町にやってきた外国人という設定なら、どんな職業がいい?」と聞いたら、彼女が即希望したのが葬儀屋。それで葬儀屋という設定のキャラクターになったんだ。

──また、イギー・ポップは史上もっともクールなゾンビだと思いますが、ゾンビ役と聞いたときの彼の反応を教えてください。

監督:まずは僕の頭の中に、彼のゾンビ姿が浮かんだんだ(笑)。それで電話をして、「実はいま、ゾンビ映画の脚本を書いているんだけど、あなたにも演じて欲しい」と言ったら、(イギー・ポップの声音を真似て)「俺がゾンビか?」「そう」「そいつはクールだ!」となって(笑)。それから脚本を送って、正式に返事をもらったんだけど、彼とサラ・ドライバー(ジャームッシュの長年のパートナー)が演じるコーヒー・ゾンビ・カップルは、映画に登場する最初のゾンビで、僕のヒーロー・ゾンビでもあるんだ(笑)!

(2020/06/05)


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ジム・ジャームッシュ
Jim Jarmusch

1953年1月22日生まれ、アメリカ、オハイオ州出身。1984年に長編2作目の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で、カンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞し、一躍脚光を浴びる。その後も『ミステリー・トレイン』(89年)や『コーヒー&シガレッツ』(03年)など話題作を次々と発表。2005年には『ブロークン・フラワーズ』でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞する。近年の代表作は、『パターソン』(16年)、『ギミー・デンジャー』(16年)など。インディペンデント映画界において、唯一無二の存在として世界中の映画ファンを魅了し続けている。

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