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『燕 Yan』水間ロン インタビュー

2つのルーツもつ気鋭俳優が、『新聞記者』カメラマンの初監督作に主演

『燕 Yan』水間ロン インタビュー
子どものころには、日本人なのか中国人なのかというジレンマがあった

『燕 Yan』
2020年6月5日より全国順次公開
(C)2019「燕 Yan」製作委員会
俳優としてテレビドラマや映画で精力的に活動している水間ロン。そんな彼が、企画・脚本から作品に携わり主演を務める映画『燕 Yan』が公開を迎える。

水間が演じるのは、日本人の父と台湾人の母の間に生まれた早川燕。母は燕が5歳のとき、兄・龍心だけを連れていなくなってしまい、複雑な感情を持っていたが、あるとき父から台湾・高雄で暮らす兄を訪ねるように言い渡されてしまう。台湾で兄と再会したことによって湧き出る感情、そして家族への想い。水間はどんな思いで作品に参加したのだろうか。撮影エピソードと共に、中国でも俳優として活動している水間に話を聞いた。


──本作では、企画や脚本にも関わったとお聞きしましたが、作品に惹かれた理由を教えてください。

水間:プロデューサーの松野恵美子さんと話をしていて出来上がった企画なのですが、作品のテーマと僕が子どものころから感じていたことへの共通点が多かったので、映画にしていきたいと強く思いました。

──子どものころから感じていたこととは?

水間:僕は母親が中国の人で、いわゆる中国と日本のミックスだったんです。中国で生まれ日本で育ちました。小さいころは、この作品の主人公である燕のように、自分が日本人なのか中国人なのかどちらか分からないというジレンマがありました。

──現在水間さんは30歳ですが、子どものころに感じた思いは、ずっと持ち続けていたのですか?

水間:大人になったいまでは、どうでもいい悩みだったのかなと思います。僕は19歳ぐらいのときに、父親が倒れて自分のルーツや親のことに向き合う時間があったので、自分のなかで気持ちの整理ができました。本作の燕も、父親から言われて台湾に行くことで、向き合えた。その意味では、とても自身の経験が反映されている役柄だなと思いました。

──燕には感情移入がしやすかったですか?

水間:すごく重なる部分が多かったので、しやすかったですね。

──メガホンをとった今村圭佑監督は、これまで『新聞記者』や『デイアンドナイト』など、数々の作品で撮影を担当されてきましたが、本作が長編映画監督デビューとなりました。

水間:演出をしながらご自分でカメラを回されているのが、僕にはとても新鮮でした。

──演出方法で印象に残っていることはありましたか?

水間:今村監督だからということではないのですが、本作はかなり準備期間を長くもらえたので、クランクイン前から何回も話し合うことができました。役へのアプローチ方法を共有できたことは大きかったです。

──主演として作品に参加することはどんな経験でしたか?

水間:主演だからといってなにか特別な準備をしたことはありませんでした。ただ先ほども話しましたが、作品に向き合える時間が長かったので、より深く作品のことを考えられたと思います。

──日本と台湾で撮影が行われましたが、違いは感じましたか?

水間:日本での撮影はスタッフも日本人でしたが、台湾では監督ほか日本人も数人いましたがほとんどが台湾人だったので、そこは大きく違いました。気候も食べ物も違いましたしね。

──お兄さん役の山中崇さんとは、対峙するシーンも多かったですが、いかがでしたか?

水間:崇さんは事務所の先輩であり、プライベートでも良くしてもらっている方ですが、いろいろと含んだ感情を持っている兄弟だったので、現場では必要以上のおしゃべりは自然としませんでした。今村監督との話し合いに崇さんも参加されていたので、会話をしなくても成立できたんだと思います。

水間ロン
──いろいろなテーマが内在する作品ですが、水間さんにとって出来上がった映画を見てもっとも強く胸に去来したことは?

水間:劇中の最後、燕が龍心の息子に対して「僕は日本人なのか、台湾人なのか」と問いかけたとき「どっちでもいい」というシーンがありますが、あの場面にこの作品のすべてが集約されていると感じました。日常にある人間関係や悩み事ってとかく線引きして考えてしまいがちですが、実はどっちでもいいことって多いと思うんです。映画を見てくださった方が、そういう感覚を持っていただけたら嬉しいです。

──“線引き”をなくすというのは?

水間:大きいところで言えば、国や肌の色、民族、文化など関係なく、簡単な言葉になってしまいますが、みんなが仲良くできたらいいなとは思っています。映画で描かれているのは日本と台湾という二つの地域の話でしたが、もっと身近な悩みでも共有することができると思います。

──“線引き”という意味では、水間さんも日本だけではなく、中国でも芸能活動をされているとお聞きしました。やり方の違いなどは感じていますか?

水間:中国の現場にまだちゃんと出ているわけではないので、システム的な違いまでは明確に分かっていないのですが、日本には日本のやり方、中国には中国のやり方があるなとは感じていて、そこは壁になっています。仕組みというよりは、文化の違いというか……。

──具体的には?

水間:はっきりと「ここ」というのはニュアンスとして伝えづらいですね。性格的な部分というか、なにを当たり前と思っているか……みたいな。概念の違いというのかな。人間関係の在り方みたいなところだと思います。

──本作は6月5日に公開されることが決まっていますが、いま世界中が大混乱に陥っています。映画業界も大変な時期だと思いますが。

水間:いま俳優として成長につながることはなにかということを考えて、いろいろやっています。不安がまったくないわけではありませんが、今後変わりゆく形に、どう対応していけばいいかということを考えながら生活しています。

──俳優としての今後の目標は?

水間:将来的には日本と中国のどちらでも出演できる俳優になりたいですね。具体的にどんな俳優というのはあまりないのですが、大まかに言えば、視聴者にも製作サイドの人にも求められる俳優になりたいです。

──本作を経験して俳優として得たことは?

水間:企画から参加させていただいたので、映画作りの準備期間を裏側からみることができました。スタッフさんがどういう動きをしているのかを理解できたのは、俳優としてとても大きな経験でした。自分次第になりますが、この作品で経験したことは、きっと俳優としての強みになると思っています。

──いよいよ映画が公開ですね。

水間:こんな大変な時期に映画館で作品を観ていただける方には感謝です。この映画を観て、自身の周りに引いてしまっている線を飛び越える勇気を持っていただければ嬉しいです。


(text:磯部正和)

(2020/06/04)


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水間ロン
みずま・ろん

1989年10月28日生まれ、中国・大連出身、大阪育ち。大学を卒業後、上京し俳優の道に。『美しい星』(『生きてるだけで、愛。』(18年)、『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』(19年)らの映画や、テレビドラマなどに出演しキャリアを重ねる。本作『燕 Yan』で映画初主演を務める。

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