ムビコレFacebookムビコレtwitterムビコレYoutubeムビコレニコニコ動画

映画・DVDの最新ニュース・予告編・動画は[ムビコレ]

『血筋』角田龍一監督インタビュー

父を探して大陸へ。完成まで6年を費やしたデビュー作を語る。

『血筋』角田龍一監督インタビュー
物語を撮ろうとしたとき思いついたのが18年間会っていなかった父親の存在でした

『血筋』』
2020年3月28日より全国順次公開
日本に住む青年ソンウは、中国・延辺朝鮮族自治州・延吉市で生まれ、10歳のとき日本へ移住した。20歳になったのを機に、画家だった父を探す旅に出るが、中国の親戚は誰も父の消息を知らなかった。叔父の助けにより、韓国で18年ぶりに父と再会したものの、父は不法滞在者として日雇い労働をしながら借金取りに追われている身だった……。

『血筋』は、父と息子の物語を通して、世界で初めて「中国朝鮮族」についても取り上げたドキュメンタリー作品だ。監督は、現在26歳の角田龍一。完成まで6年の歳月を費やした渾身の作品について、監督に話を聞いた。


──本作を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

角田:最初のきっかけは、祖父母の遺影を撮ろうと思ったことです。僕は10歳のとき日本へ移住しましたが、その後も祖父母に会いに中国に帰っていました。会う度に、祖父母が老いていくのが目に見えて分かりました。死へ向かってゆっくりと老いゆく2人を見る度に、悲しみやあきらめに近い気持ちから、中国へ帰るのが億劫になりました。そこでせめて2人を映像に残しておこうと思ったのです。そして、どうせ撮るならわかりやすい物語を用意しようと。そこで思いついたのが18年間会っていなかった父親の存在でした。祖父母や親戚に父の事を尋ねたことがあるのですが、誰も語りたがらないうえに、いい顔をしなかったのが印象的でした。そしてみんな「お前は父に似ている」と吐き捨てるように言うのです。父をよく知らないからこそ、僕はより父の存在に興味を持つようになりました。この好奇心がもうひとつの原動力と言えます。

──セルフドキュメンタリーといえますが、角田監督はそれを最初は明かさず、他人事のように紹介しています。その意図は?

『血筋』』
2020年3月28日より全国順次公開
角田:人が一番興味を持っているのは自分自身です。では何故物語を欲するのかというと、他人事を通して自分の姿を見たいからだと思うんです。失恋や人の死に共感できるのは、その悲しみを一度は経験しているからです。経験したことのないことへの共感はとても難しいものになります。つまり「鏡」として物語の役割を考えると、僕という個人的な要素は鏡を曇らせるような気がするんです。だから他人事として突き放した方が観客も物語へ入りやすいのではないかと思いました。話は変わりますが、中国で自主上映したとき、観客の一人に「こんな映画見たことがない。Instagramのストーリーズ(SNS上で個人的な出来事を共有する機能)と、この映画は何が違うんだ」と聞かれたことがあります。中国でこの類の映画が公開されることはまずありえませんから、かなり衝撃を受けていた様子でした。この質問は作品への本質的な問いだと思います。Instagramのストーリーズのような身近な視点から出発し、そこから私情をなるべく排除して観客の視点へ徹したのが『血筋』であると言えます。

──映画の作り方として私情を明かした方が生々しさ増すように思いますが、いかがでしょうか?

角田:僕という個人にそれほどの商品価値があるとは思えないんです。有名人でも何でもない見ず知らずの僕の「私情」に他人が興味を持つ理由がわかりません。それに僕はそういうタイプの作品があまり好きではないというのもあります。カメラを介しての感情表現は、どうしてもわざとらしく見えて胡散臭く感じます。映画として被写体と向き合っている時点で、観客的目線で撮っています。僕の撮影基準は「面白いのか、面白くないのか」ということだけです。劇中で撮影者である「僕」は終始クールで、被写体と一定の距離を保ち続けようとします。でも、やはり人間なので目の前の出来事に対して、ふとした瞬間にほころびが出てしまう。クールではいられなくなり、感情的になる瞬間があるわけですが、観客はそこに共感するんだと思います。

(2020/03/19)


【関連記事】



角田龍一
つのだ・りゅういち

1993年、中国朝鮮民族自治州・吉林省延吉市生まれ。新潟県立大学卒業。ベルリン国際映画祭正式招待作品『Blue Wind Blows』で助監督を務める。在学中から、新潟市民映画館シネ・ウインドが刊行する映画雑誌で映画紹介文を書く傍ら、本作品の撮影・制作を行った。2018年3月から京都・大徳寺で書生として半年間居候しながら本作を編集し完成させた。現在は、京都の山の方で一人暮らし。カナザワ映画祭2019「期待の新人監督」にて本作品がグランプリ受賞。

MOVIE Collection