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『家族を想うとき』ケン・ローチ監督インタビュー

仕事が家族を破壊する──日本でも起きている問題を英国巨匠が描く

『家族を想うとき』ケン・ローチ監督インタビュー
慎ましく暮らすために理不尽な仕事を長時間しなければならない現実に驚いた

『家族を想うとき』
2019年12月13日より全国公開
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016)が自身2度目のカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたイギリス映画界の巨匠ケン・ローチ監督。83歳になった彼が「どうしても撮らなければいけない」という使命感で撮影した新作が『家族を想うとき』だ。

マイホーム購入という夢のために、父はフランチャイズの宅配ドライバーとして独立し、母はパートタイムの介護福祉士として1日中働いている。そのため、高校生の息子と小学生の娘はさびしい想いをしている。そんな中、父がある事件に巻き込まれてしまう……。

家族を幸せにするための仕事が家族の時間を奪い、家族がバラバラになっていく現実。現代の社会問題と家族の絆を描いたケン・ローチ監督に話を聞いた。


──本作のアイディアはどこから得られたのですか?

監督:前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』のリサーチのために出かけたフードバンク(まだ食べられるにもかかわらず、さまざまな理由によって市場で流通できなくなった食品を、企業から寄附を受けて生活困窮者などに届ける活動、あるいはその活動を行う組織)のことが心に残っていました。フードバンクに来ていた多くの人々が、パートタイムやゼロ時間契約(雇用者の呼びかけに応じて従業員が勤務する労働契約)で働いていたのです。いわゆるギグエコノミー(インターネット経由で非正規雇用者が企業から単発または短期の仕事を請け負う労働環境)、自営業者あるいはエージェンシー・ワーカー(代理店に雇われている人)、パートタイムに雇用形態を切り替えられた労働者について、私と脚本家のポールはしばしば話していて、次第に“もう一つの映画にしよう”というアイディアが生まれました。個々の労働者に対する搾取のレベルだけでなく、彼らの家庭生活への影響と個人的な関係にどのように反映されるかということでした。

──本作のリサーチは、どのようにされたのですか?

映画撮影中のケン・ローチ監督
監督:リサーチのほとんどはポールがやってくれました。その後、私たちは一緒に何人かの人に会いました。口が重いドライバーたちも多かったのですが、彼らは自分たちの仕事にリスクを負わせたくなかったのです。また、撮影場所からあまり遠くないところにあった集配所の親切な男性マネージャーが集配所のセットを建てるのに的確なアドバイスをくれました。出演しているドライバーたちはほぼ全員、現役か元ドライバーです。彼らは仕事の段取りや仕事を素早く成し遂げることのプレッシャーを理解していました。

──リサーチで最も印象に残ったことは何ですか?

監督:驚いたのは、人々が慎ましい生活をするために働かなければならない時間の長さと仕事の不安定さです。彼らは自営業者なので、もし何か不具合が生じたら、すべてのリスクを背負わなければなりません。例えば、宅配用のバンには不具合が生じることもありますし、配送がうまくいかなければ制裁を受けて大金を失うことになります。介護福祉士は訪問介護をしても最低限の賃金しか受け取れません。

──本作の登場人物について。父親のリッキーはどのような人物ですか?

『家族を想うとき』
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
監督:リッキーは建設作業員として真面目に働き、マイホームを購入するために十分な貯蓄をしてきましたが、銀行と住宅金融組合の破綻が同時に起こり住宅ローンを組めなくなってしまいました。建設業が痛手を被ったために彼は職を失い、たくさん稼げそうな宅配ドライバーとして働く決意をします。一家は賃貸住宅に住んでいて、借金苦から抜け出すのに十分なほどは稼げていません。彼らのような状況にいる人々は、慎ましい収入を得るためにへとへとになるまで働かなければならないのが現状です。

──母親のアビーについては?

監督:アビーは幸せな結婚生活を送っている母親で、夫との間には愛情と友情があり、子どもたちにとって良い親になろうと努力しています。ただ、彼女の問題は、子どもたちの世話をどうするか、ということです。彼女は低賃金の介護の仕事で夜遅くまで家に戻れないので、子どもたちに電話で指示をしています。そんなやり方ではうまくいかないでしょう。

(2019/12/11)


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ケン・ローチ
Ken Loach

1936年6月17日、イングランド生まれ。オックスフォード大学にて法律を学んだ後、1967年、『夜空に星のあるように』で長編映画監督デビュー。『麦の穂をゆらす風』(06年)と『わたしは、ダイエル・ブレイク』(16年)にてカンヌ国際映画祭の最高賞、パルムドールを受賞。労働者階級や社会的弱者の日常に寄り添った社会派ドラマが多い。その他の作品に、『大地と自由』(95年)、『マイ・ネーム・イズ・ジョー』(98年)など。

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