でんでん

初の悪役で圧倒的な存在感を放つ名バイプレイヤー

 

『冷たい熱帯魚』でんでんインタビュー

『冷たい熱帯魚』でんでんインタビュー

 

園監督は発想が違う。天才なんだと思いました

  • 1993年に起きた愛犬家殺人事件をはじめとしたいくつかの猟奇殺人事件に着想を得た『冷たい熱帯魚』は、鬼才・園子温監督の最高傑作とも称される作品。狂気へと突き進んでいく小市民の姿を圧倒的な迫力で描き、見る者を興奮の渦へと引きずり込む。

    この作品で、初の悪人役に挑んだのがでんでん。名脇役として人情味あふれる善人を数多く演じてきた彼だが、本作では一転、強引な話術で相手を自らのペースに巻き込み、悪事を重ねていく抜け目のない詐欺師的なキャラクターをパワフルに演じている。そんな新境地を開拓した彼に話を聞いた。

    ・[動画]でんでんインタビュー

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  • ──本作は第67回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に出品され、惜しくも受賞は叶わなかったものの、大絶賛の拍手に包まれたそうですね。でんでんさんも参加されたそうですが、残念ながら上映終了時にトイレに行ってしまい、スタンディングオベーションに遅れてしまったとか。
  • でんでん:(笑)。この映画は尺が長いので事前に何度もトイレに行って「よし万全だ」と思っていたら、あと1時間くらいのところでトイレを我慢できなくなり、脂汗がダラダラ出てきてしまって。エンドロールが流れ始めたときに「よし!」と思ってトイレに駆け込んだんだけど、だんだん向こうの方が騒がしくなったので、「ヤバいぞ!」って、完全に振り切るのもやめて慌てて戻ったんです。まだスタンディングオベーションの拍手がまだまだ続いていて、なんとか間に合いました(笑)。
    ヴェネチアに行ったのは初めてだったんですけど、食事もワインも美味しくて。ワインの飲み過ぎかな。
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  • ──そのスタンディングオベーションの風景を見て、どんな気持ちになりました?
  • でんでん:ずっとピンと来ないんです。こうして自分自身がインタビューを受けたりしているのも、大げさに言うと夢のよう。レッドカーペットを歩いたり拍手をもらったりしたことへの実感が、いまだに全然沸かないんです。
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  • ──映画のでんでんさんは、鬼気迫る演技で怖かったです(笑)。
  • でんでん:こういう悪人を演じたのは初めてなんです。ただ、役作りにはそれほど悩みませんでした。本番に入る前に1人で稽古していたときは不安とヤル気が交互に出てきたけど、始まってからは突っ走るだけ。ハイテンションで発散する役なので、肉体的な疲れはあるけれど心地よい疲れでした。
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  • ──妻役の黒沢あすかさんの匂い立つような色っぽさが印象的でしたが、夫婦役を演じた感想は?
  • でんでん:でも、僕との絡みはないんですよね(笑)。ただ、独特な空気感のある方で、妖艶ですよね。
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  • ──一方、他人の奥さん役である神楽坂恵さんとの絡みはありましたね。
  • でんでん:かわいい方ですよね。絡むシーンは役得かな、と(笑)。
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  • ──撮影中、園監督の鬼才・天才ぶりを実感したことはありますか?
  • でんでん:現場で次から次にアイデアが出てきて、すぐにそれを取り入れるというあたりが天才なんだと思いました。
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  • ──台本とはかなり違うシーンになったということですか?
  • でんでん:いえ、変わっちゃいないんですけど、そこに何かを足していくんです。そういうことにすごく柔軟なんです。他の“良い監督”と言われている監督も、現場でどんどんカット割りが変わったりしていくんですよね。それだけでなく、人物のとらえ方とか、発想が僕らとはちょっと違う。台本も、読むだけでそれぞれのキャラクターが浮き立ってくる、そういうところも本当にすごいですよね。

(2011/1/28)

 

『冷たい熱帯魚』でんでんインタビュー

でんでん
1950年生まれ、福岡県出身。81年、森田芳光監督作『の・ようなもの』で映画デビューし、名脇役として映画、ドラマなどで味わい深い演技を見せる。主な出演作は『クライマーズ・ハイ』(08)、『母べえ』(08)『悪人』(10)など。本作で初の本格的な悪役に挑戦した。

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『冷たい熱帯魚』でんでんインタビュー
 『冷たい熱帯魚』
2011年1月29日よりテアトル新宿ほかにて全国順次公開
(C) NIKKATSU

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