『天国はまだ遠く』加藤ローサ インタビュー

見知らぬ土地で人生を再生させていくヒロインを演じた加藤ローサが語る“幸せ”の意味

『天国はまだ遠く』加藤ローサ インタビュー

生きているだけで幸せだな、って思っています

  • 都会の暮らしに疲れ、人里離れた場所へとやってきたヒロイン。知らない場所で死のうとした彼女が、人の温もりや自然の恵みに触れ、心癒されていく姿を綴った『天国はまだ遠く』。死を決意したくせに、妙に楽観的で天然ボケなヒロインをユーモラスに演じた加藤ローサに、映画について話を聞いた。
     
  • ──長澤雅彦監督とは『ピクニック』(06)でもご一緒されていますが、今回はどのような演技指導をされたのでしょうか。
  • 加藤ローサ(以下、K):監督と、(共演したチュートリアルの)徳井義実さんと一緒にリハーサルをしました。10日間ほどかけて台本1冊を全部やってみたのですが、監督の頭の中にはハッキリと千鶴や田村(徳井義実の役)が出来上がっていたので、監督の指導を受けるというような感じでしたね。

    ──役作りについて、監督からのアドバイスは?

  • K:自殺する女の子ということなので、最初は私とはすごくかけ離れたタイプの子だと思って暗く演じていたのですが、監督に「そうじゃない」と言われたんです。こんな子は自殺しないんじゃないかって思わせるくらい明るくやっていいということでした。監督が言うには、“死”は“生”から遠いものではなく、すぐ近くにあるものだということを伝えたいんだと……。だから、ガラッとイメージを変えて、それからはラクに演じることができました。
     
  • ──千鶴のどんな部分に共感しましたか?
  • K:力の抜け加減がすごく似ていると思いました。ピンポイントでは一生懸命だったりするんですけど、いい加減で、人を頼るところが似ているな、と(笑)。

    ──徳井義実さん演じる民宿の主人・田村は、自給自足に近い生活を送っていますが、ああいう暮らしはいかがですか?

  • K:興味はありますね。人間本来の生活なんだろうな、と。ああいう生活をすることで、普段は感じることのできない幸せも感じられるような気がします。老後とかに経験してみたいという気持ちがありますね(笑)。
     
  • ──自殺をしそこねた後で食べる朝食が、本当に美味しそうでしたね。
  • K:(ロケ地となった、京都府の)宮津マジックだと思うんですけど、何てことのないご飯とおみそ汁が、生きてて良かった!と思うくらい美味しくて。テストでは食べずに本番で初めて食べたのですが、演技をうち破るくらいの気持ちを覚えました。撮影が終わっても食べ続けてしまったくらい美味しかったです(笑)。
     
  • ──テレビドラマにも数多く出演されていますが、映画とテレビは違いますか?
  • K:演じる上では特に違いはないと思っています。この映画がクランクインした日のワンカット目を撮ったとき、空が入るシーンだったので、2、3時間くらい天気待ちをしていたんです。その時、“撮っていただける”幸せを感じました。たったワンカットのために、みんなが手を止めて数時間待つというのは、映画ならではのこと。ワンカットワンカットを、すごく大切に撮ってもらえているというのを実感しました。これに応えなきゃ、とも思いましたね。一方、ドラマの、みんなで追いつめられた状態で作り上げていく感じも大好きです。追いつめられた中で集中力を高めていくという撮影も好きなんです。両方をバランスよく演じていけるのが、一番幸せだと思っています。
     
  • ──この『天国はまだ遠く』は、死を通じて生きることの素晴らしさを描いた作品です。加藤さん自身は「生きる」ことをどうとらえていますか?
  • K:生きているだけで幸せだな、って思っています。より多くの幸せを感じるために生きているんじゃないかと……。この映画を見ていただけると、何てことのない、今まで幸せに感じなかったようなことを幸せに感じられるようになると思っています。
     
  • (08/11/06)

『天国はまだ遠く』 

『天国はまだ遠く』

『天国はまだ遠く』
(C) Kenichi Katsukawa
 

 

『天国はまだ遠く』
2008年11月8日よりシネセゾン渋谷ほかにて全国順次公開
『天国はまだ遠く』