谷村美月

髪を剃り女優魂を発揮、難病の少女を演じた若手演技派女優

 

『おにいちゃんのハナビ』谷村美月インタビュー

『おにいちゃんのハナビ』谷村美月インタビュー

 

難病ものと一括りにされてしまうのは
すごくもったいない作品だなって思っていて

  • 新潟県小千谷市片貝町で毎年9月9日と10日に開かれている「片貝まつり」。400年の歴史を有するこの祭りは、町民がスポンサーとなり、子どもの誕生や結婚、商売繁盛など、様々な願いごとを託した花火を打ち上げるというもの。

    本作は、この祭りをモチーフに、病魔に侵されながらも家族で一緒に見た花火への思いが忘れられない妹の華(はな)と、その妹から生きる勇気をもらい、引きこもりから脱却していく兄・太郎との実話をもとにした感動作だ。

    この映画で華を演じているのが谷村美月。映画デビュー作『カナリア』(05年)以来、常にその演技が高評価を受けてきた若手女優の1人でもある。そんな谷村に、本作で演じた華という役の印象から役作りまでを語ってもらった。

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  • ──とても感動的な映画でした。谷村さん自身、初めて完成作をご覧になったときは、どんな感想をお持ちになりましたか?
  • 谷村:すごく不思議な気持ちになりました。役柄である華ちゃんとして見てたのか、それとも私として見てたのかがよくわからなくて。すごく泣いてしまって、客観的に見なくちゃって思ってる自分もいれば、役として映画の世界に入り込んでいたり。そういう2つの感覚が約2時間の間に何度も繰り返されていたような気がします。
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  • ──今、仰っていたように、女優・谷村美月としてではなく、役柄として完成作を見ることってあるのでしょうか?
  • 谷村:今回が初めての経験ですね。映画は撮影から完成まで、結構、時間があいているので客観的な立場になりやすいのですが、今回に関しては「お兄ちゃん良かったね」って思う(役柄に近い)自分もいて、今までにない感覚になりました。
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  • ──華ちゃんは最後まで幸せだったのかなって思ったのですが、ご自身では、どんな風に演じようと?
  • 谷村:いわゆる難病ものと一括りにされてしまうのは、すごくもったいない作品だなって思っていて。華ちゃんがメインの話ではなく、お兄ちゃんが引きこもりから自立していく成長の物語が丁寧に描かれた作品だという思いはありました。
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  • ──病気の華ちゃんが1番辛いはずなのに、最後まで笑顔を絶やさず、謝ってばかりなのが印象的でした。
  • 谷村:人間って基本的に、自分の限られた時間を一生懸命生きている気がするんですね。時間がないことを知らされている人ほど、一生懸命楽しんでいると思うし、華ちゃんもそういう人なのかなって。いろんなことに一喜一憂する面はあるけれど、お兄ちゃんに対してはかなり愛があって、そして前向きな子なんだと思います。
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  • ──役作りに関しては、事前にキッチリ作り込んでいくタイプ? それとも、現場に入ってから作り込むタイプ?
  • 谷村:今まで割とクセのある役柄が多かったんです。そういう役って自分で決め込んでいっても影響が少ないので、作り込んでいくことも多くて。でも、この作品は雰囲気を大事にしているので、作り込んでしまうと良さが出にくい。なので今回は、まわりの状況とかに敏感に反応できる気持ちの余裕を持てるようにしようと考え、この作品に入りました。
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  • ──お兄ちゃん役を高良健吾さんが演じました。共演してみての印象は?
  • 谷村:以前に『蟹工船』でお会いしていて、空気感を大事にお芝居をされている方なのかなって感じましたね。今まで一緒になった役者さんとは、また違った雰囲気のある方です。
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  • ──この役を演じる上で1番苦労した点は?
  • 谷村:不良たちに絡まれてカツラを落とされるシーンです。病気ってことも特に意識せず、普通にお芝居をしてたんですけど、あそこで初めて自分の感情と役の感情がキレイに2つに分かれたんです。カツラを落とされて谷村美月としての感情がグッと来てしまったのですが、同時にこれは私の感情なんだってすごく感じてしまって。華ちゃんはそこで、ああいう風に立ち向かえるというか。現場で、自分と演じた役の気持ちが真っ二つに分かれるというのは今までにない経験で、とても印象的でした。
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  • ──病気で髪の毛が抜けてしまっている役でしたが、あの頭は特殊メイクですよね?
  • 谷村:いえ、剃りました。
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  • ──剃ったんですか? 特殊メイクかと思えるくらいきれいな頭なのでわかりませんでした。
  • 谷村:そうなんです。現場でも結構、そう言われることが多くて。共演者の方々からも「キレイにできてるね」って言われたり(笑)。いやいや、本当に剃ったからって言うと「えー!」って驚かれて、そこで気づくかと思って(笑)。
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  • ──女性にとって髪は大事だと思いますが、剃ったときはどんな心境だったのでしょう?
  • 谷村:実感が沸かないんですよね、最初は。剃って家に帰ってきても、あ、剃ったんだくらい。ただ、次の朝起きたときは結構ダイレクトにきて。顔を洗うときにヘアバンドがいらないとか、洋服を着るときに引っかかるとか。ただ、剃らなければ良かったとは思わなかったですね。剃る、剃らないの判断は自分だったので、決めた以上はと思っていました。
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  • ──このシーンを見てもらいたいというポイントがあれば教えてください。
  • 谷村:全シーン、一生懸命頑張ったんですけど、パッと思い浮かんだのは、お兄ちゃんから携帯をもらうシーン。すごく好きですね。お兄ちゃんのことが今までずっと好きだったんですけど、携帯をもらってすごく恥ずかしそうにしている。華ちゃんの可愛さが出ているんじゃないかなって思います。
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  • ──谷村さんの気分転換方法は?
  • 谷村:友だちと会って遊んだりとか。地元の友だちが東京に上京して来ているので、仕事とは関係のない友だちとの付き合いが息抜きになっている気がします。
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  • ──ほかに、女優として日頃から気をつけていることはありますか?
  • 谷村:女優という意識ではないんですけど、1人の女性として料理などの家事は、ちゃんとできたらいいなと思っています。

    ヘアメイク:松嶋慶太(BEACH)/スタイリスト:松尾由美

(2010/9/28)

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谷村美月

たにむら・みつき
1990年、大阪府出身。2005年に『カナリア』で映画デビュー。今年は『ボックス!』『十三人の刺客』『海炭市叙景』が公開されるほか、夏にはNYLON100℃「2番目、或いは3番目」(ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出)に出演。これまでの映画作品に『リアル鬼ごっこ』(08)『おろち』(09)『コドモのコドモ』(08)などがある。

谷村美月

『おにいちゃんのハナビ』場面
『おにいちゃんのハナビ』場面
『おにいちゃんのハナビ』場面
『おにいちゃんのハナビ』場面
『おにいちゃんのハナビ』場面
 『おにいちゃんのハナビ』
2010年9月25日より有楽町スバル座ほかにて全国公開
(C) 2010「おにいちゃんのハナビ」製作委員会

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