徳永えり

いぶし銀の名優たちと共演。見事な演技を披露した若手演技派!

 

『春との旅』徳永えりインタビュー

映画『春との旅』徳永えりインタビュー

 

仲代達矢さんがずっとそばで支えてくれた

  • 年老いた身を受け入れてくれる居場所を求め、親戚を訪ね歩く旅に出た74歳の老漁師・忠男と、祖父を見捨てることができず、共に旅して回ることになった19歳の孫娘・春。まだ春浅いなか、まるで祖父の人生を辿るかのような旅を続ける2人の姿を追った『春との旅』は、老いについて、家族の絆について、そして人生について、深く考えさせる作品だ。

    頑固な忠男を演じるのは仲代達矢。さらに、大滝秀治、淡島千景、柄本明といったいぶし銀の名優がズラリと顔をそろえ、奥深い味わいを醸し出す。

    このなかで、大先輩たちと互角に渡り合っているのが、春を演じた若手女優・徳永えり。家族の縁に恵まれず、祖父に育てられてきた芯の強い無口な少女を演じ、見事な存在感を発揮した彼女に、今までで一番辛かったという本作の撮影について、そして名優たちと共演した感想などについて語ってもらった。

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  • 『春との旅』舞台挨拶 動画

    『春との旅』完成報告会見 動画

  • ────劇中での、見事ながに股歩きが印象的でした。
  • 徳永:監督は、歩き方にその人の人格が見えるという考えをもっていて、歩き方には一番こだわりをもっていました。そして、春の特徴ある歩き方を実際に演じてみてくださったので、それを真似して自分のなかに取り入れ、ああいう歩き方になりました。
    でも、あの歩き方は脚や腰への負担が大きくて、大変でした(笑)。
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  • ──監督はどんな方ですか? 厳しい方のように見えますが、怒鳴ったりもされるのでしょうか?
  • 徳永:怒鳴ったりはしないのですが、厳しさのある方で、視線は痛いほど(笑)。あぁ、しっかりしなきゃと、気を引き締めながら撮影していました。
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  • ──撮影中はどのような感じだったのでしょうか?
  • 徳永:日々、常に監督から演出されているような感覚でした。役柄上、仲代さんとはあまり話したりコミュニケーションをとらないでくださいと言われましたし、スタッフにも、私に対してフレンドリーにしないように言われていたみたいです。
    なので、ロケ中、ずっと1人でこもっていて孤独でした。
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  • ──仲代さんと共演した感想を教えて下さい。
  • 徳永:仲代さんは黒澤明監督とお仕事されていたり、私からすると未知の世界で様々な経験をされてきた方。なので、厳しい方なのかと思っていたのですが、実際はすごく柔軟で優しくて。最初にお会いしたときに「なんて柔らかい方なんだろう!」と驚いたほどです。
    撮影中も、大きな心で待っていてくださるというか……。私がうまくできないと、「何回でもやろう、一緒についていてあげるから」と、ずっとそばで支えてくれたので、安心感がありました。なんて大きな方なんだろうと思いましたね。
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  • ──名優揃いの作品ですが、ビビったりはしませんでしたか? 共演した感想についても教えて下さい。
  • 徳永:もうビビるしかありませんでした(笑)。最初に台本をいただいたときには、この人たちとお芝居ができるんだという喜びと、自分で大丈夫だろうという不安が同時に湧いてきました。
    初日は、仲代さんと大滝さんとが対面するかなりの長回しシーンだったんですけど、みなさんの集中力を目の当たりにして、とにかくスゴイ!と……。みなぎるパワーというか、やっぱり、今の自分ではまだまだだなと思いました。
    みなさん、私がどんなに頑張っても太刀打ちできる相手ではないので、今回はみなさんの力を借りて、甘えて、自分だけを見て頑張ろうと思い、演じていました。
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  • ──名優の方々と共演したことで、成長したと思いますか? また、どんなことを学びましたか?
  • 徳永:今回の撮影は日程もハードで、精神的にも苦しかったので、成長を実感する余裕はなかったですね。現場で学んだことは、1つの役、人間を演じることの重みです。
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  • ──今回の役もそうですし、出世作『フラガール』でもそうでしたが、芯の強いキャラクターがとても合っていると感じました。
  • 徳永:『フラガール』の印象は強いようで、同じようなことをよく言われます。私が一番感じるのは、両方とも「幸薄い」ということ(笑)。苦労人で薄幸なんですよ。だから、私自身がそう思われてるのかな、と(笑)。
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  • ──実際の徳永さんはどんな人?
  • 徳永:大阪出身なのですが、結構、大阪のおばちゃん気質ですね(笑)。すごくお節介焼きで、自分のことより人のことが気になって、あれこれやっちゃうタイプ。同世代や年下の人と共演すると、「お母さん」というあだ名がつくくらいなんです(笑)。それに、よくしゃべります。
    自己分析すると、真面目だけれどとても不真面目。矛盾しているようですが、たとえば、すごくストイックなところがある反面、あきらめの早い部分もあったりします。
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  • ──完成作を見た感想を教えて下さい。
  • 徳永:肩の荷が下りました。見ていると、ついアラ探しをしちゃうのでまともには見れないんですけど(笑)、画面のなかに“春”が存在していてくれたことが嬉しくて。あれだけ悩んで、苦しんで演じたものが形になったと思うととても嬉しかったし、ホッとしましたね。

    ヘアメイク=NOBU(HAPP’S)/スタイリスト=瀬川結美子(NOMA Co..Ltd.)

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(10/05/21)

 

映画『春との旅』徳永えりインタビュー

とくなが・えり
1988年、大阪生まれ。雑誌「ピチレモン」専属モデルを経て、04年にテレビドラマ『ディヴィジョン1「放課後。」』で女優デビュー。『フラガール』(06)で注目を集める。その他の出演作は『アキレスと亀』『ホームレス中学生』(共に08)『ノーボーイズ、ノークライ』(09)など」。

 映画『春との旅』徳永えりインタビュー

 

映画『春との旅』徳永えりインタビュー

映画『春との旅』徳永えりインタビュー

撮影中の様子。上:仲代達矢と共に/下:仲代達矢、淡島千景と共に

 

映画『春との旅』徳永えりインタビュー

 『春との旅』

2010年5月22日より新宿バルト9ほかにて全国公開

(C) 2010『春との旅』フィルムパートナーズ/ラテルナ/モンキータウンプロダクション
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