松たか子

どんな場所にいてもそこにきちんと存在している女優を目指す

 

『大鹿村騒動記』松たか子インタビュー

『大鹿村騒動記』松たか子インタビュー

 

メイキングを回しておけばよかったって思うくらい
私にとっては夢のような時間でした

  • 日本でもっとも美しいと言われる長野県大鹿村。この地で300年も受け継がれてきた村歌舞伎をモチーフに、年に1度の歌舞伎公演にすべてをかける村の人々と、彼らを取り巻く恋模様や人間関係をユーモラスに描いた喜劇映画『大鹿村騒動記』。

    出演しているのは、原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、石橋蓮司、三國連太郎とベテラン揃い。そうしたなか、村役場の総務課に勤める織井美江役を演じているのが松たか子だ。その松に、ベテラン俳優との共演から撮影時のエピソード、目指す女優像などについて語ってもらった。

    [動画]『大鹿村騒動記』予告編

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  • ──本作は村歌舞伎の話です。初めてこの映画の話を聞いたときにどんな感想を持たれましたか?
  • :すごく面白そうな話だなって思いました。内容はもちろんですけど、原田芳雄さん、大楠道代さん、岸部一徳さんといった先輩方とご一緒できる機会でもあるので、何でもいいから経験させてもらいたいなと。
    それに村歌舞伎は、(原田)芳雄さんがずっと「これをやりたい」という情熱を持ち続けている題材だったんです。そういう熱い思いがある作品なら、きっといい作品になると思ったし、阪本監督ともお仕事をしてみたいと思ったので出させていただきました。
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  • ──佐藤浩市さんが“若手”に見えるくらい、ベテラン揃いです。ベテラン俳優と共演した感想をお聞かせ下さい。
  • :メイキングを回しておけばよかったって思うくらい、私にとっては夢のような時間でした。村歌舞伎のシーンでは、時間をかけてじっくりと撮影するため、芳雄さんたちは扮装のまま長時間、待っていなければならなかったんです。そこで、(石橋)蓮司さん、でんでんさん、(岸部)一徳さんたちと一緒に出番を待っていると、蓮司さんが(役の衣装を着ている)私のことを地元の人という設定で、「東京に行きたいんだろ」「今回お世話になったね」と話しかけられたり(笑)。
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  • ──そのなかで、ムードメイカーはどなたでしょう?
  • :誰ですかね(笑)。常に和ませてくれたのはでんでんさん。みんなから突っ込まれていて……。主に、蓮司さんなんですけど(笑)。でも一徳さんも、ふと突っ込んだりするんです。トドメの一発くらいの感じで。それで芳雄さんが笑ったり。本当に映画の役のまんまのような感じでした。
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  • ──撮影現場も楽しそうですが、撮影以外で楽しかった思い出があれば教えてください。
  • :いっぱいあるんですけど、初日の撮影が終わって「お疲れ様でした」と言ってから、お弁当をもらって民宿に戻ったんです。そこでマネージャーと一緒に「やっとご飯だね」と言ってお弁当を開けたら、ご飯と焼きそばとミカンが入っていて(笑)。
    あの、全然苦情じゃないんですよ(笑)。きっと、こんなにも大勢の人が村にやって来ることはなかなかないでしょうし、お弁当屋さんも少ないだろうし。そうしたなか、みんなで手分けしてお弁当を作ってくれたみたいなんです。その日、お昼のお弁当がちょっと頑張った内容になっていて、たぶん、夜のことまで気が回らなくて。それでも村の人たちは一生懸命考えてくれて、お弁当にスペースが空いちゃったから、ここにミカンでも入れておこうと思ったのかな、と。その姿が頭に浮かんだら、とても微笑ましくて。
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  • ──本作では阪本監督が、ほとんどテストなしで、ワンテイクで撮るというスタイルを取っていたと伺いましたが、どんな現場でしたか?
  • :毎回のようにアドリブが入っていて、それだけに新鮮! そこにどれだけ対応できるかが面白かったです。完成した作品を見ても、どこからアドリブなのかわからない感じでした(笑)。
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  • ──松さんはテレビ、舞台、映画、音楽と、いろいろなジャンルに挑戦していますが、出演作を選ぶポイントはあるのでしょうか?
  • :直感的に「やりたい!」って思う作品に出演するようにしています。本当のことを言うと、どんな作品だろうと経験を積み重ねるためにも出たいと思うタイプなんですけど、体は1つなので、選ばなければならないことも多くて。そうなってくると、お話に興味を持てるとか、監督や出演者が決まっていれば、この人と仕事をするとどうなるんだろうって思えることが大切になってきます。
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  • ──この映画には、いい形で年輪を重ねてきた俳優が大勢出演しています。松さん自身は今後、どういう女優になっていきたいと思いますか?
  • :そうですねぇ、今までと変わらず、いろいろな役にめぐりあいたいということくらいしかないんです。ただ、カメラの前であろうと、舞台の上であろうと、普通に“そこにいられる”ような人になりたいとは思います。映画向きとか、舞台向きとか、そうした芝居をするのではなく、どんな場所にいてもそこにきちんと存在している──。そういう役者さんになりたいですね。

(2011/7/16)

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松たか子

まつ・たかこ
1977年、東京都出身。94年にNHK大河ドラマ『花の乱』でドラマデビュー。以降、映画、舞台、ドラマ、歌手として幅広いジャンルで活躍。2009年『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』では、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など多くの映画賞を受賞。主な映画出演作に98年『四月物語』、04年『隠し剣 鬼の爪』、10年『告白』などがある。舞台出演作も多く、高い評価を得ている。

 

『大鹿村騒動記』場面写真

『大鹿村騒動記』場面写真

『大鹿村騒動記』場面写真

『大鹿村騒動記』場面写真
 『大鹿村騒動記』
2011年7月16日より全国公開
(C) 2011『大鹿村騒動記』製作委員会

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